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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
二人の強者
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04

「あと5分、お客さんの足なら10分位で元の場所につくからもう少し頑張りなァ。」

「はい。ありがとうございます。」

「いーえ。俺もお客さん所の会長さんに会って詫び入れねェといけねぇしなァ。その足で会長さんの所に行くよ。」

「それは難しいと思います。」

「ん?どうしてだい?」

「会長は食屍鬼の発生率が高い場所に行きました。そこに……キョウさんが向かうとなると……命の保証が出来ないかと…。」

「食屍鬼ィ?ああ、なんかそんな事言ってたような気がするなァ。」

「だから危険ですし、キョウさんも早めに避難した方が良いかと。」

「避難?ここから離れろって事かい?はっはっ、そりゃァいくらお客さんの頼みでも聞けねぇなァ。」

「でも危ないんですよ!本当に……奴らは危険です…。普通の人間じゃ勝てません。」

「ふゥん。で、お客さんはそいつらと会ったら倒せるのかい?その剣で戦えるのかい?」

輝血は龍から貰った剣を強く握った。

「俺は……戦えません。これも護身用というか……念の為に持たされているだけで……。」

輝血はその場で立ち止まる。

足音がやみキョウは振り返るとゆっくりと歩き輝血の隣に並ぶ。

「じゃあどうしてそんな化け物がいる場所にお客さんは来たんだい?何かワケありかい?」

キョウの声は今まで感じていた圧が無くなり優しかった。

輝血はキョウに支えられ近くにあったボロボロの椅子に腰をかける。

その隣に並ぶ椅子にキョウが座ると、輝血は龍に入る事になった経緯やその後の仲間の食屍鬼化、今の思いを話した。

輝血自身もどうして今日初めて会って数分しか経っていないキョウに打ち明けているのか分からなかった。

でも不思議な事に、キョウに話せば話すほど心が軽くなっていった。

キョウは最低限の相槌だけで輝血の話を聞いてくれた。それがなんだか心地よかった。

今自分はどうしたいのか。

会長に対する複雑な感情。

自分の今までの行い。

自分の今の気持ち。

誰にも言えずに抱え込んでいたものを全てキョウにぶつけた。

それをキョウはニコリと笑い受け止めた。

「そうかいそうかい。お客さんも色々あったんだねェ。……いるかい?」

キョウはポケットから煙草を取り出すと輝血に一本差し出した。

輝血はそれを受け取り咥えるとキョウが火を付けてくれた。

「うっ…」

「ははっ、ヤニクラかい?もしかして初めてだったか?」

「いえ、前は吸っていたんですけど龍に入ってからは全然吸っていなかったので。」

「なるほどねェ。」

キョウは煙草を咥え火をつけると煙を吐き出した。

「まァ俺はまだお客さんと会ってほんの少しの時間しか一緒にいないし、会長さんとか研究者とか親父さんとか諸々の心情なんか分かるわけも無いし、なんとも言えないけどなァ……俺ならしたいようにするかなァ。」

「したいように、ですか……。でも俺は今自分が何をしたいのかも分からないから……。」

「その答えが見つかるまではこのままでいるのかい?」

「そうするしか無いかなと思っています。」

「ふゥん。ま、お客さんがそれで良いならそうすりゃいいけどよォ。難しい話だわなァ。憎いけど恩人の会長さんってのが厄介だなァ。」

「厄介……はは……。」

「一回会長さんって存在を抜きにして考えてみりゃいいんじゃないかァ?」

「会長の存在を抜きにする……?」

「龍の一員として食屍鬼とやらを討伐する自分の姿とか、龍を抜けて自分探しをする姿とか、まァ色々考える幅が広がるんじゃないかい?」

「うーん。」

キョウは空に向かい煙を吐き出す。

「例えば、ここの住民になって生活する自分、とか。」

「ここにですか?」

「そうだよ、ここに住んで商売して金儲けして自由気ままに暮らす自分。まァカブト時代に近いかもしれねぇなァ。」

輝血は少し想像してみた。

荒んだこの街で暮らす自分。

自分の街を仕切るのは隣にいるこの人。

自分は金儲けをして、この街ならきっと喧嘩もよくおこるだろう。

「うーん。金儲けして喧嘩に明け暮れてる自分しか想像出来ないです。」

「はっはっ、まあそんなもんだろうなァ。そんなくだらねェ生活と今の龍の暮らしなら龍の方が心地よいかい?」

「心地良さは……ここで暮らす方ですかね。でも今は前より隊員達とも話せたり、前ほど苦しい生活では無いんですけど。」

「息苦しさを感じるのかい?」

「正直に言えばそうですね……でも俺は龍から抜ける事は許されないし、そもそもそんな考えにはならなかったです。」

「それは自分の罪の重さや会長さんへの恩義を感じて、ここに居なければいけない。と思い込んでるだけじゃないのかい?」

「そう……かもしれないですね。」

「でもそれは、食屍鬼とやらを倒し終わったらまた話は変わるんじゃないのかい?食屍鬼が居なくなってからはどうするつもりなんだい?」

「……考えたことがなかったです。」

「はっは、自分が死ぬまで食屍鬼を倒しきらないと思ってたのかい?」

「いや、そうじゃなくて……俺は食屍鬼とまともに戦えないからきっと殺されて終わるんだろうなって思ってて。」

「そんな奴らに殺されて終わる人生でいいのかい?」

「嫌ですけど……俺が復活させたようなもんですし。」

「いやいや、復活させたのはその研究者と、もしかしたら親父さんもって話だろう?復活させたじゃなくて復活させたかったのがお客さんとその仲間だろ?」

「そうですけど……復活させようと思ったこと自体が間違いだったというか……。」

「でも今のお客さんはその間違いに気付いて反省してるだろ。もう同じ過ちは犯さない、お客さんはちゃんと学んだはずだ。違うかい?」

「そうです。でも落とし前はつけないといけないし、俺は龍の一員として食屍鬼を討伐しなければいけない。」

「はっはっ、じゃあしておいで。それが終わった後またゆっくり話そうや。なァ?」

「そんな簡単に言いますけど、食屍鬼は恐ろしくて強いんですよ。」

「そうなんだろうなァ。俺はソイツらを見た事がないから分からないけど、龍の噂は聞いていたからなァ。」

「だから殺されるかもしれないし、終わってから話すなんて……。」

「んー?なんだいお客さん、そんな弱気なまま立ち向かおうとしてんのかい?食い殺す位の気持ちでいた方がいいんじゃないのかい?」

キョウは近くにあったバケツに煙草を投げ捨てると、ジュッと音を立てて火が消えた。

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