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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
二人の強者
66/123

02

「すごいな……。」

羽鳥は唾を飲んだ。

今にも崩れ落ちてきそうなビルが並んでいる。

いくつもの分かれ道がありその先はどれも暗い。

ビルの中や周りには瓦礫が山積みになっていたり、空き缶や割れた瓶にゴミが散乱し、所々に血液が付着している。

ビルにはペンキやスプレーで落書きがされていた。

「流石治安が悪いと有名な場所だこと……それにこれだけ入り組んでいたらどこから食屍鬼が出てくるかも分からないし数も分からないな。……ここが一番マシな場所って嘘だろ。」

「いや、嘘じゃないよ。会長達が進んだあの先が一番酷い。死体が何体も転がっていたらしいからな。だからあの場所が一番発生率が高いんだよ。」

羽鳥と幹部の会話を聞いた懍と仲間達は気を引き締め直す。

輝血は並ぶビルに書かれた落書きを眺めていた。

特に意味は無さそうな落書き。

チームのマークらしき落書き。

下品な言葉、下品な絵。

よく見かけるような落書きが殆どだったがその中に数箇所小さく赤い何かが書かれている。

小さすぎて見えなかった輝血は、どこから見て回るかと相談し合う羽鳥と幹部、緊張した面持ちに変わった懍達から少しだけ離れそれを見に行った。

羽鳥達の姿は見えるし声も聞こえる。

ほんの数メートルだけ離れた。

輝血は赤い何かが書かれた前にしゃがみ込んだ。

「たす…て。……コ…れる。 逃げ……」

輝血は途切れた文字を読み上げた。

「これは……血か?」

輝血はそこまで驚くことも無く懍達の元に戻ろうと立ち上がる。

壁に背を向け懍達の方へと一歩踏み出した時、目の前が真っ暗になり息苦しさを感じた。

そして、腹部に強烈な痛みが走ると同時に意識を手放した。

──────────────

生臭い。

鼻がおかしくなりそうだ。

少し前まではなんとも思わなかったのに。

気分が悪い。

口を開いて息を吸うと咳き込んだ。

目を少し開くと割れた電球がぶら下がっているのが視界に入る。

「お目覚めか?」

隣から聞こえる声の方へとゆっくり目を向けると、いかにも悪さをしていますよ。と言わんばかりの男が数人ニタニタと笑いながらこちらを見ていた。

「なん……だ?お前達。」

輝血はベッドの上に縛り付けられていた。

「お前達?偉そうな言い方するなぁ。」

一人の男は立ち上がるとナイフを取り出しそれを輝血の耳の真横に突き立てた。

「俺は気が短いんだ。あまり偉そうな話し方をするなよ兄ちゃん。」

輝血が黙って男を見ていると、男は輝血に向けて唾を吐きかけた。

「お前ムスカリだろ?」

輝血の眉がピクリと動く。

「1回見かけた事があるんだよなぁ。光の無い目でよぉ、男の事殴り殺してたなぁ?」

「……人違いじゃないのか?」

「いいや、お前だね。それにムスカリは女も売ってただろ?全員どこに売り飛ばしたぁ?」

「なんの事かさっぱりだな。人違いだから離せよ。今なら何もしないでやるから。」

輝血の足に鈍い痛みが走る。

「…っ」

「だからぁ、偉そうな話し方をするなって言ってるんだよ。」

男は先程とは別のナイフを輝血の足に突き刺し、グリグリと動かす。

「お前はさぁ、俺の質問に答えればいいんだよ。」

男はニタリと笑う。

歯は殆ど抜け落ち、涎がタラリと垂れる。

「で、殺した男はどうした?女はどこへやった?」

「どうしてそんなこと知りたいんだよ。」

「そりゃあお前、男も女も俺達の仲間だからだよ。」

「なるほどね……。」

輝血の脳内に 因果応報 の4文字が浮かぶ。

手足は縛られ足は怪我をした。

仮に拘束を解けたとしても走って逃げるのは不可能に近い。

それに相手は複数人でこの場所を知り尽くしているだろう。

足を怪我した上にここから懍達がいる場所の道は何一つ分からない。

捕まれば終わりだ。

それにこういう奴らはたまに現れていたし、いつ誰が報復で来てもおかしくない事は重々承知していた。

今までは周辺の道も把握した場所だったしこっちの数でどうにか出来たが今は不利な状況だ。

ここは素直に答えるのが正解か。

だが、どちらにせよ殺されるんだろうな。

「男はどの男の事を言っているのか分からないが、もう焼いたかどこかで骨だけになっているか……女は俺は関わっていないからどこに飛ばされたか分からない。」

男は輝血の言葉を聞くと足に突き刺したナイフを上から押し込んだ。

声にならない痛みに輝血の表情が歪む。

「どうだぁ?痛いかぁ?でもお前達も同じような事をしてきただろ?文句言えないよなぁ?」

男がニタニタ笑いながらそう言うと、他の男達も笑う。

「俺達はよぉ、お前達ムスカリが憎くて憎くて仕方なくてなぁ、いつか絶対皆殺しにしてやるって思ってたんだよぉ。なのにお前達は全員いつの間にか姿を消した。もぬけの殻になったお前達の住処を壊す事しか出来なかった俺達は収まらない怒りをぶつける場所もなく毎日苦しい日々を送ってたんだよ。」

「どうして……お前達は……っ……仲間を助けなかった?」

「は?」

「見てたんだろ?俺が殺す所を。」

「そりゃあお前が楽しそうなのは伝わったからなぁ。」

「楽しそう?じゃあ尚更腹立つだろうが。」

「いやあ、そんな姿みたら俺まで楽しくなっちまってよぉ、もっと殺れもっと殺れって静かに応援していたよぉ。」

「………は?え、でもお前はその男の仲間だろ?」

「そうだぁ。だからお前に復讐してやりたかったんだよぉ。」

「何……言ってるんだ?お前。」

「あー?だからぁ、お前がムカつくって話だろうが!」

輝血はこの男が理解出来なかった。

が、理解しようと思う事を放棄した。きっと無駄だ。

「で、俺を殺せばお前の気は済むのか?」

「そんなわけねぇだろ!お前と一緒に来てた奴ら全員殺す。この街に入り込んだ奴全員だ。」

「全員……ねぇ。」

「この街の入り組んだ道はよぉ、把握しきれねぇだろぉ?獲物が逃げねぇようによぉ、そういう風に作ったからなぁ!」

男は楽しそうに笑う。

「それでもお前には倒せない魔王がいるから俺だけにしておいた方がいいよ。」

「はぁ?魔王だぁ?なんだぁお前?ボスの知り合いかぁ?いやでもボスは俺達のボスでコイツは……んー?」

男は仲間達と首を傾げる。

そんな様子を見た輝血は男の仲間達の近くにあるテーブルの上にあるものを見つけた。

「お前ら(ヤク)やっているのか。」

男達は輝血の言葉にピクリと反応を示した。

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