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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
闇の世界
63/123

02

「かーくん、そろそろ着くって。」

懍の声にハッとし目を開けると見慣れない場所に辿り着いていた。

「かーくん眠ってたから話聞いてないでしょ?」

「……うん。何か言ってた?」

「この場所はアビス地区に似てるんだって。龍の監視下の地域から少し離れた場所らしいよ。」

「龍の監視下から離れた地域って……じゃあ俺達の家よりもっと先……?」

「そういう事だろうね。てっきり向こう側は食屍鬼なんて関係無い安全地域だと思ってたけど。」

「復活させなけりゃ安全地域だったろうよ。食屍鬼に関しては、だがな。」

話に割って入ってきた幹部の顔は少し引き攣っているようだった。

「どういう事?」

懍が尋ねると幹部は話し始める。

「食屍鬼っていうのはそもそも総龍、黒龍、白龍、青龍、赤龍の手が届く範囲内で繁殖していたんだ。

というか前会長がその範囲内まで繁殖範囲を狭めたらしいんだけど。だから食屍鬼討伐がスムーズ……ではなかったがまあ行えたんだよ。」

「でも今回はその範囲外に現れているって事だよね?」

「そう。大橋が範囲外に逃げたんだろう。ただなぁ……範囲内の地域は食屍鬼という化け物の存在があったから人間の悪さなんてまだ可愛いもんの方が多かったんだよ。龍の恐ろしさも知っている人間ばかりだからな。」

「俺達も……?」

「お前達がやった事は範囲内じゃ極悪非道、範囲外からすりゃ日常茶飯事。

今俺達が向かってる先は、お前達がしてきたことを平気な顔をして行うヤツや他の悪事を働いているヤツらがウジャウジャいる所なんだよ。」

「警察は?捕まえられないの?」

「詳しい事は俺達もよくは知らないが、警察が警察としての働きが出来ていないか、想像以上の数がいるって所だろう。」

「あっ!!」

黙って話を聞いていた輝血が突然大声を出した。

「っんだよ!ビックリさせるな。危ないだろ!」

幹部がそう言うと輝血は「すみません。」と謝る。

「で、どうしたんだよ。いきなり大きな声を出して。」

「いや……会長が俺達を連れてきた理由は食屍鬼と戦わす為じゃなくて、そいつらと出くわした時用……なのかな?って。」

「そいつらって……ああ、そうとも捉えられるな。仮に食屍鬼と対面した時にヤツらまで来られたら俺達も困るしな。なるほど、会長はそこまでお考えになられてたか。」

「人間相手なら俺達も勝てるかもしれないね、かーくん。」

「うん。」

懍や仲間達がやる気を見せ始めた。

「まあまあ落ち着けお前達。もし仮にだ、ヤツらと出会ったとしよう。でもその時に食屍鬼がいなけりゃ龍で相手をするから。お前達は大人しくしてなさい。」

「えー!じゃあ俺達来た意味ないじゃん!」

懍が頬を膨らませながらそう言うと、幹部は少し呆れた顔をした。

「正直俺達もこっち側の情報には詳しくは無い。が、ヤツらが普通じゃないという事だけは分かっている。下手に手を出したら遊ばれるぞ。それに、お前達に前みたいな事をしてほしくないんだよ。」

「大丈夫だよ幹部さん。俺達は邪魔するやつを黙らせるだけ。それ以上のことはしない。ね、かーくん!」

「うん。」

「そうか。ならいいけど。……無理はするな。」

この幹部は、輝血達が総龍屋敷に来た時から見守ってくれていた一人であり、輝血達が前とは違う表情に変わっていき心の中で喜んでいた一人である。

──────────────

それから数分後、数十台と並ぶ車の列に輝血達が乗った車は停車した。

「さて、会長が到着するまで俺達は見回りをするぞ。武器の配布をするがくれぐれも遊びに使わないように。」

「もー!幹部さん俺達の事なんだと思ってるの?!」

「クソガキだよ、クソガキ。」

幹部がはっはっと笑いながら武器を取り出している隣で懍が膨れている。

輝血は前のように騒ぐ懍を見て少し安心した。

だってあの日からの懍はずっと、周りを慰め明るく接していたけどそれは全て偽りの明るさだと輝血は気付いていたから。

「にしてもここは凄いな。」

幹部は武器を取り出すと街の方へと目をやる。

荒れ果てている。

ゴミが散乱している。

アビス地区によく似ている。

「俺から離れるなよ。あと幹部さんじゃなくて、羽鳥(はとり)でいいよ。他の幹部も反応しちゃうからな。」

「羽鳥!」

「せめて、さん を付けろ。」

「羽鳥さん!」

「そうだ、いい子だ。」

懍は羽鳥に懐いているようだった。

「さて、行くか。」

輝血達は武器を受け取り羽鳥の後ろに続いた。

「誰だ?」

「また部外者が入ってきやがった。」

「金置いていけよ。」

通りすがる人達はお世辞にも柄が良いとは言えない。

何も言わずすれ違う人も、目付きが普通では無いと直ぐに気付いた。

人を人として見ていない人間の目付きだ。

そんな目は今までいくつも見てきたし、前の自分達もきっと同じ目をしていたのだろう。

「おーい!輝血!懍!!」

前方から名前を呼ばれ声の主の方を見る。

「柏木!」

輝血と懍はニコリと笑い柏木の元へと駆け寄った。

「お前も来てたのか!」

「そりゃまあ一応元龍だからな。今は龍の犬だけど。」

柏木は少し照れくさそうに笑った。

「輝血達も特訓してたんだよな?武器も貰えてるみたいだし、何よりここに連れてこられたって事は俺達は食屍鬼討伐部隊の仲間って事だな!」

「んー、でも俺達は食屍鬼というより人間相手っぽい……かも?」

「人間相手?どういう事だ?懍。」

「ここにいる人間は相当ヤバいヤツらの集まりっぽくてさぁ。食屍鬼と羽鳥とか龍の人が戦ってる時に邪魔しに来たら俺達はその人間を相手にする……みたいな」

「なるほど。じゃあ食屍鬼とは戦わないのか?」


「戦うよ。」


聞こえた声は輝血でも、懍でも、仲間たちでも、羽鳥でも無かった。

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