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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
二人の過去
58/123

02

仲間達は全員寝息を立て眠っている。

輝血は中々寝付けずに何度か寝返りを打つ。

眠れなくどうしようかと思っていると、扉が開き月明かりが差し込んだ。

扉に背を向けていた輝血は壁に照らし出される影を見て飛び起き振り返った。

「お?!ビックリした。起きていたのか。」

体をピクリとさせる凱斗はそのまま輝血に近寄ると輝血の隣にしゃがみこむ。

「眠れないのか?」

「……うん。」

輝血は大きく波打つ心臓の音が漏れていないか心配そうに凱斗の顔を見ると、凱斗は優しく微笑みながら首を傾げた。

「ちょっと外に出るか。」

「え?」

「二人で話そうぜ。お前、俺に聞きたいこととかあんだろ?」

輝血が頷くと凱斗は立ち上がり手を差し出す。

輝血がその手を掴みゆっくりと立ち上がると、凱斗は輝血の手を離し気怠そうに歩き始める。

月明かりに照らされるその銀髪はキラキラと輝き、輝血の心臓はまたドクンと大きく跳ねた。

──────────────

輝血は凱斗に連れられ食堂へと向かったあと、屋敷庭園にある椅子へと腰をかけた。

椅子の隣にあるテーブルの上に凱斗は飲み物を置くと、椅子の上にあぐらをかいて空を眺めた。

「おー、今日は空が綺麗だな。

……星が輝いていますね、輝血くん。」

「えっ」

「何?」

「いや、くん付けされたから……。」

「ははっ、ふざけただけだから引かないで欲しいんだけど?」

凱斗は笑いながら飲み物を手に取り、輝血にも勧める。

輝血はぺこりと頭を下げ喉を潤わす。

「ごめんな、ゆっくり話す時間を作らなきゃなとは思ってたんだけど中々作れなくてよ。」

凱斗はテーブルの上にグラスを置くと空を見上げながら話し始めた。

「ほとんど屋敷にいないって聞いたから……忙しいんだろうなとは思ってた。」

「そっ!超忙しい!……けど、今日はこの後も時間があるし輝血が大丈夫そうなら話そうかなって部屋に行ったの。起きてるとは思わなかったけど。」

「寝てたらどうしてたの?」

「あ?あー、叩き起してたかな。」

凱斗はケラケラと笑う。

「自分勝手というか……。」

「それ桜庭によく言われるよ。」

輝血はケラケラと笑う凱斗を見て少しホッとした。

「何から話そうか?」

凱斗は伸びをした後輝血の方を向き頬杖を着く。

「いざ話すってなると何から話せばいいか……。」

輝血が困っていると凱斗は優しく微笑んだ。

「じゃあ俺が内容を決めよう。そうだな……。」

輝血はテーブルの上に置いたグラスを見つめる。

「あー、じゃあまずは治療の話にしよう。」

「治療……懍が言ってたやつ?」

「懍から聞いたか?」

「治療方法は知らないって。明日というかもう今日か……今日がその日だって。」

「うん、そう。勿論お前も治療しなきゃいけない……と思っていたがお前は食事をしなかったんだったか?」

「うん。食べたくなくて。」

「一口も?」

「あまり記憶には無いけれど、覚えている限りでは……。」

「うーん。懍や柏木、他のやつがお前に無理矢理食べさせるとも考えにくいが一口もとなると……どうだろうな。あの期間中一口もなんてのは無理がある話だし……念の為お前も検査しよう。治療にかかる期間はそんなに長くは無い。それに痛いこともしない。安心してくれ。」

輝血は頷く。

二人の間に沈黙の時間が流れる。

輝血は色々と聞きたいことがあったはずなのだが、いざ目の前にすると頭の中が真っ白になってしまったのだ。

そんな輝血を察してか先に口を開いたのは凱斗であった。

「……少し俺の過去の話をしてもいいか?」

輝血は凱斗の目を見て再び頷いた。

凱斗は空を見上げる。

「俺が黒龍隊長になって2年が経った時だから……今から4年前に一本の協力要請が来て俺たち黒龍はそこへと向かった。」

凱斗は空を眺めたまま続けた。

「児童養護施設が襲われたんだよ、食屍鬼に。」

輝血の心臓がドクンと跳ねる。

「施設内は血の海。その施設に居た者のほとんどが食屍鬼に殺られてしまった。」

輝血の呼吸が少し荒くなる。

「その施設内で一人の少女だけが生きているのを発見して保護をした。」

「え?!」

輝血はカッと目を見開く。

「……生きて……いた少女……?」

か細い声でそう聞く輝血をチラりと見て凱斗は微笑んだ。

「ああ、今彼女は青龍にいる。施設の人間は全滅していないよ。今もお前と同じように生きている人がいるんだよ、依睦。」

凱斗の言葉を聞き、輝血の脳内は依睦という文字で埋め尽くされる。

「どうして……その名前を……?」

「お前のお父さんは誰だ?」

「え……?」

凱斗は黙って輝血を優しく見つめる。

「おと……さん……は……俺の……お父さん……俺のお父さんは……お父さんは……。」

輝血は目に涙を浮かべ頭を抱え、お父さんは……と繰り返した。

「幸輝じゃないのか?」

輝血はその名を聞き涙を零した。

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