02
車に乗り込み、青龍屋敷を後にした輝血達は誰一人話そうとしなかった。
その理由は、会長である凱斗が外を眺めながら何かを考え込んでいたからである。
30分程経った頃、静かな車内に着信音が鳴り響いた。
外を眺めていた凱斗はそのまま手探りで携帯電話を取り出し、画面を触ると耳にあてた。
「お疲れ様。……うん。……どこで?……分かった。状態は?……そうか、ならそのまま黒部屋に入れておいて。俺が帰るまで何もしなくていい。何も、な。……はい、じゃあね。」
小さく溜息をつき耳から携帯電話を離すと画面を触り、ポケットにしまう。
総龍隊員達は少し気にしながらも口を開かず黙って前を見続けた。
「大橋が見つかったよ。」
電話を切って少し経ってから凱斗が放った言葉を聞いた隊員達は少し目を見開いた。
「アイツは森が好きだな。」
ふふ、と笑う凱斗の瞳は暗く冷たかった。
「赤龍屋敷に向かう前に俺は大橋と話をする。輝血は部屋に戻って休め。お前達も少し休んでおけ。」
「俺も……俺も大橋と話したい。」
下を向き震える手を握りしめた輝血が小さな声でそう言うと、凱斗は外から輝血へと視線を移し輝血の震える手を見つめた。
「……お前の気持ちも分かるがまずは俺が───」
「俺も話したい。」
凱斗の言葉を遮る輝血を隣に座る隊員が睨みつける。
「会長の言うことに従え。」
「でも俺は───」
「黙れ!そもそもお前は誰にそんな偉そうな口の利き方をしているんだ!立場を弁えろ!」
隊員が輝血の肩を掴み拳を振り上げた瞬間、振り向いた輝血と目が合った隊員はそのまま動けなくなってしまった。
「うるせぇなお前ら。お前はその腕を下ろせ。輝血はそうだな……まずは俺が大橋と二人で話す。これは変えられない。俺が一通り話終えてからなら話す時間を作ってやる。どうだ?」
隊員は輝血から手を離し凱斗へ頭を下げ、輝血は隊員から凱斗へ視線を戻すと口を開いた。
「その様子を見ていたい。」
「その様子……?俺と大橋が話している所を見たいって事か?」
輝血は頷く。
「うーん。そうだな……別室からなら許可してやってもいい。音は聞こえない。俺と大橋の姿を見ることしか出来ない。それでもいいなら。」
輝血は少し不満気な表情をしつつ、頷いた。
輝血達を乗せた車が総龍屋敷へ着くと、門前にはズラリと隊員達が整列していた。
凱斗が車を降りた後、輝血は隊員達と共に車を降り、輝血は凱斗に呼ばれ屋敷から少し外れた道を歩く。
その後ろを隊員達が付いて歩いた。
「さてさて、今回はどう命乞いをすることやら。」
凱斗はそう言うと地下へと続く階段の前で立ち止まる。
「輝血。気分が悪くなったらすぐに隊員に声を掛けて地上に出ろ。隊員もコイツを優先しろ。分かったな。」
隊員達は「はっ」と返事をし、輝血は首を傾げた。
今まで人に対して残酷な事をしてきた。
あれから日が経ちあの環境から離れていたとはいえ、ここで同じ位……いや、それ以上の気分の悪さを味わった。
今からこの人が大橋にナニをするのかは大体予想がついている。
だからといって、俺が気分を悪くするなんてことは無い。
だって俺は、今までソレを楽しんでいた側の人間なのだから。




