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食屍鬼 -蜘蛛糸-  作者: 藤岡
崩壊
40/123

08

「アビスでの暴動……前の俺たちみたいな奴らが集まる場所だから不思議では無いな。」

柏木がそう言うと周りの仲間達も頷く。

「総龍が駆り出されることも珍しい事じゃない。が、上級層が来た事は無かったはず。俺達が離れている間に人数が増えた……あるいは今までよりも度が過ぎた事をしているのか…?」

「総龍の上級層っていうのは強いの?」

うーんと考え込む柏木に懍が訊ねる。

「総龍に限らず他の龍もだが、会長、幹部、上級層、中級層、下級層に分かれる。他の龍は会長のポジションが隊長だな。会長や隊長が自ら出向くこともあるが基本的には下級層と中級層、中級層、中級層と上級層、上級層、または下級層から上級層で回す。上級層の強さはそうだな……食屍鬼がいた時代は討伐に駆り出される程の強さ、と言えばなんとなく察しがつくか?」

「食屍鬼……あれと戦うのは相当強くないと自殺しに行くようなものって聞いた事がある。」

「うーん、食屍鬼と言っても強さはそれぞれなんだよ。成功体と呼ばれる食屍鬼が頭一つ……いや、二つ三つ抜けて強いな。正直成功体に関しては隊長や幹部クラスでも苦戦する。上級層はよっぽどのセンスを持ち合わせていない限り相手なんて出来ないよ。」

「じゃあそこまで強くない……?」

「いや、成功体は特殊なだけで街に湧いた食屍鬼でも一般人は手出し出来ないだろうし、下級層も下手すれば死に至る。中級層でも苦戦する奴はいる。それを相手出来るのが上級層。ちなみに、各龍でも黒龍はずば抜けていたから黒龍の中級層も強い。」

「各龍を纏めている総龍の上級層は各龍の幹部位はあるの?」

「あるんじゃないか?会長を護衛するのが第一の使命だし、黒龍から会長を護る為に総龍に流れてきた人もいる。」

「その人達が駆り出された……つまり今アビスはお祭り騒ぎって事かな?」

懍は少しワクワクした様子で話す。

「そうかもしれないな。多数人と言っていたから人数が多すぎるのかもしれない。」

「もう遠く昔のことのようだね。懐かしいとすら思えるよ。ま、俺達は暴動騒ぎを起こしていた訳では無いけど。」

懍と柏木の会話を聞き仲間達も昔話をし始める。

輝血は黙り込み皆の話を聞いていた。

──────────────

数日後。

相変わらず食事のアナウンスだけが流れる。

が、大橋からのアナウンスも凱斗が顔を出す事も無かった。

騒ぐ元気を無くした者達は黙って寝転がる。

監視がある、そう思うと気軽に話しをすることも億劫になる。

輝血は泣く事はなくなったが、考え事をしているのか上の空状態になることが多かった。

この時白部屋にいた輝血達は、外の世界で何が行われているのか知る術も無く、ただただこの空間に対するストレスと戦うことしか出来なかった。

輝血は一人、大橋に言われた言葉を考え込む。

糸を張り巡らせた、とは何の事なのか。

自分がやるべき事は分かっている。

ただもうそんな気力は無い。

凱斗を目の前にすると縮こまってしまうのが分かっている。

それでも戦え、という事なのだろうか?

自分が立ち向かった所で勝てるのだろうか?

でも、お父さんと話したから……。

でも、もうそのお父さんは居ない。

それでも、自分は……?

輝血の頭の中はその事で埋め尽くされており、食欲も無く日に日に痩せていった。

どれだけ考えても纏まらない。

自分がどうすべきなのか、分からない。

先の見えない暗い道を一人で歩き続けている。

頭がおかしくなりそうだ。

懍と柏木が心配そうに声を掛けてくれるのだけが心の救いであり、苦しさでもあった。

シンとした薄暗い空間。

いつもと変わらない空間。

輝血はまた一人目を覚ます。

いつも目を覚ますと皆が幸せそうに眠っている。

ただ、今日は違った。

数人が座っている。

何も話さずに座っている。

少し荒い息遣いで座っている。

内側から開ける事が出来ない空間。

必要最低限の物しか無い真っ白な空間。

いつもと、変わらないはずだった。

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