表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食屍鬼 -蜘蛛糸-  作者: 藤岡
研究者
20/34

01

柏木がカブトの一員となり数ヶ月経ったある日の夜、輝血と懍の叫び声がカブトのアジトに響き渡る。

カブトメンバーは驚き慌てて二人の声がした方へと向かった。

「輝血さん!懍さん!大丈夫ですか?!」

メンバーの一人が叫びある一室を覗き込むとそこには懍の上に跨り全身を赤く染めた輝血が目に入る。

「りぃいいんんん!」

目をカッと見開き懍の腕を押える輝血は尖る歯を見せる。

「ごめんごめん!ごめんってかーくん!許して!ちょ、みんなも見てないでかーくん退けて!」

懍がドアの先から覗くメンバーにそう言うとメンバー達は慌てて輝血と懍を引き離す。

「あ?何してんだ離せ!」

輝血は自分を後ろから羽交い締めにする男に牙を向けた。

「何があったか知らないがこのままでは懍が死んでしまう。」

「うるせぇ、死なねぇ程度に可愛がってやんだよ。なぁ、懍?」

「やだ!かーくん怒ってるもん!絶対三日は目が覚めないような事される!」

輝血はクイッと口角を上げたまま懍を睨み付ける。

「元はと言えばお前が絵の具なんかを頭からかけてきたのが悪いんだろうが!」

「足が滑って転んだだけって言ったじゃん!謝ったじゃん!」

「ヘラヘラしながらの謝罪は謝罪のうちに入んねぇんだよバーカ!」

輝血と懍のやり取りを聞きメンバーは呆れて笑ってしまった。

「おい柏木、お前いつまで俺の事拘束するつもりだ?放せよ。」

柏木も呆れた顔をしたまま手を離すと、輝血は肩と首の骨を鳴らす。

「懍、お仕置の続きしよっか。」

「やだ!ごめんなさい!気を付けます!」

「俺の晩飯にまで絵の具が掛かってもう食えねぇ。なぁ?どうする?」

「うーーー、俺が新しく作ってくるよ。それで許して?」

輝血は懍の腕を引っ張り立ち上がらせると扉の方へと向かって懍の尻を蹴りあげる。

「早く作ってこい。」

「いっっった!ばかーくん!!」

「てめぇ。」

懍は輝血が一歩踏み出す前に全力で走っていき姿を消す。

「あの野郎……戻ってきたらやっぱりお仕置してやらねぇといけねぇ…!」

輝血は煙草を取り出し咥えるとソファーに腰をかけ火をつけ、貧乏揺すりをしながらフゥと煙を吐き出すと、メンバーの方へ視線を向ける。

「いつまでそこにいるの?戻っていいよ。」

輝血の言葉を聞いたメンバーは頭を下げそそくさとその場から離れたが、柏木だけは残る。

輝血は再び煙草を咥えそのまま柏木を見つめた。

「何?」

「いや……風呂に入るなら用意するが。」

「ああ、いいよ。この部屋シャワー付いてるし。それだけ?」

「えっと……いやその……。」

「なんだよ。」

「……研究者についての確かな情報が掴めた。」

柏木の言葉を聞いた輝血はニヤリと笑う。

「確かな情報、ね。それはどこからの情報?」

「アンフェイスフル。俺が前に仕切っていたチームからの情報だ。」

「あー、あの弱虫達の。アイツらがどうやって?」

「カブトのメンバーと龍に連れて行かれたやつが提供してくれた。」

輝血は眉をピクリと動かす。

「出てこれたのか?」

「ああ、昨日やっと。」

「うちのメンバーは一緒か?」

「いや、一人だ。総龍屋敷に入ったあとの事は詳しくはわからないそうだ。」

「そっか。で、そいつがどうして研究者の事を?」

柏木は輝血に少し待つように伝えると走って部屋を後にすると、輝血は柏木の後ろ姿を見ながら煙を吐き出した。

数秒経ち息を切らした柏木が輝血の前にあるテーブルの上へパソコンを置いた。

「ここに全て書いてある。俺が口頭で言うより見た方が早いだろう。」

輝血は灰皿に煙草を押し付けパソコンの画面を見る。


”俺が捕まっていた時に時間潰しの為に様々な人が俺の元へと訪れた。その中に白衣を着た薄汚い男がいた。そいつは自分の事を大橋だと名乗った。その男は俺に嬉しそうに話をしてくれた。総龍は素晴らしいという話、会長は素晴らしいという話、そして最後に食屍鬼の話を。ただ、食屍鬼の話の途中で総龍の隊員が来て大橋は問答無用で連れて行かれた。大橋は食屍鬼の話をしている時だけ目を輝かせていたが、隊員の姿を見た途端その光を失った。”


輝血は「大橋か……。」とポツリと呟き続きを読み始めた。


”大橋は今も食屍鬼を美しく思い尊く思っている。が、食屍鬼の話をしようものなら隊員から厳しく叱られる。大橋は総龍の指示に必ず従わなくてはならない。少しでも違う事をすればまた厳しく叱られる。生きた心地がしない。だが自分は生きて償わなければならない。と言っていた。”


「研究者大橋が総龍の屋敷にいるというのは確実。そして次の文を読んで欲しい。そこに大橋を此方に連れ出せるチャンスが書いてある。」

「チャンス?」

輝血は柏木に言われた通り続きを見る。


”大橋は毎週水曜日の午後二時から五時までの三時間だけ総龍隊員数名と共に街に出ることを許されている。その時に自分の欲しいものや食べたいものをまとめ買いしていると教えてくれた。ついでに何か買ってきてあげようか?と言われたがそれは断った。その街というのがどこの区域の事を指すのかまでは分からないが、恐らく屋敷近辺である総龍地区、または頻繁に顔を出す黒龍隊員達がいる黒龍地区のどちらかだと思われる。”


「どうだ輝血、水曜日と言えば明日だが。」

「……総龍地区と黒龍地区ね。懍に話してグループ分けさせておいて。俺はシャワー浴びるから。ついでに早く飯持ってくるように急かして来て。」

輝血は立ち上がると柏木を部屋から追い出し服を脱ぐ。

「さて、どうしようかな。」

勢いよくお湯を出し頭から浴びると、赤く染った水が排水溝へと流れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ