02
「柏木!!!」
柏木はハッとし前を見ると心配そうに見る懍と大きな欠伸をした輝血が映る。
「何回名前呼んでも反応しないから死んだのかと思ったよ。どうした?酔った?」
懍の問い掛けに柏木は「いや、大丈夫だ。」と返事をすると、懍は「よかった。」と笑顔を見せた。
「寝たら腹減っちゃった。」
目を擦りながらそう言う輝血はまるで小さな子供のようだった。
輝血が車から降り、それに続いて懍も降りる。
輝血は怠そうにボロボロの建物へと向かい歩く。
懍は後部座席のドアを開け車椅子を出すと柏木を担ぎ車椅子へと乗せると、車のドアを閉める車椅子を押し輝血に続いた。
ボロボロの建物の周りに居る人達は柏木を見てニタニタと笑う。
それに気付いた懍が「この人は玩具じゃないよ。ちゃんとしな。」と言うと、周りの人達は頭を下げた。
「ごめんね。」と言う懍に対して柏木は「大丈夫だ。」と返した。
ボロボロの建物の中に入ると中に居た男達は柏木に注目する。
「懍さんお疲れ様です。」
「おかえりなさい!」
懍に頭を下げ、男達が道を開けると奥の方で椅子に座りニタリと笑う輝血が視界に入る。
懍は男達の間を通り輝血の前で止まると車椅子から離れ輝血の隣の椅子に腰をかけた。
「我が家へようこそ。」
輝血は柏木にそう言うと、男達に楽にするよう声をかけた。
「今日からコイツもカブトのメンバーだから。ただ今は怪我をしている。怪我が治ったら面倒見てやってくれ。」
男達は輝血に頭を下げる。
「って事でいいよな?帰り道で色々考えたけどどう考えてもお前がカブトに入るって選択肢しか出てこねぇ。他に別の道があるか?って考えても俺の頭では何も思い浮かばないし考えてるうちに寝ちゃったわ。」
輝血はヘラヘラと笑い、懍もつられて笑った。
「俺は……役に立てるか分からな──」
「最初のうちは龍の情報をくれりゃそれでいい。どっちみち動けないだろうし。聞きたいこともまだ一つしか聞けてないからな。」
柏木の言葉を遮り話す輝血の姿を写す柏木の目には燈龍凱斗の姿がチラついた。
「とにかく今のお前は一人で何も出来ない赤ん坊と同じ。世話係がいるな。」
輝血は立ち上がり男達を見渡す。
「あー……アイツは?なんでいねぇの?」
輝血が一番近くにいた男に聞くと、男は背筋を伸ばした。
「輝血さんの部屋に入って行ったのをみたので多分掃除をしていると思います。」
男の言葉を聞いた輝血は少し目を大きくすると走って階段を駆け上がり姿を消した。
しーんとした空間に懍の笑い声が響く。
「シシッまーた勝手に掃除してるの?かーくんに何度も怒られているのに懲りないねぇ。」
男達もクスクスと笑う中、柏木は状況把握が出来ず困惑した。
暫くすると膨れっ面をした輝血が戻ってきて、その後ろから小柄で華奢な美しい人がついて歩く。
「輝血くん勝手に掃除した事は謝るけど、嫌ならもう少し綺麗にしておいてほしいんだよねぇ!」
輝血は立ち止まり後ろを振り返ると腕を伸ばし頬を抓る。
「せめて俺がいる時にしろ。いつもいつも俺がいない時に勝手に掃除しやがって。」
「いふぁいいふぁい!」
輝血はフンッと鼻を鳴らし懍の隣に座ると柏木をジッと見つめる。
「華純、こいつがさっき言ってた世話して欲しい男。名前は柏木だ。」
華純は頬を擦りながら輝血の隣に座り柏木を見て微笑む。
「うん、分かった!治るまでは責任もって世話をするよ。」
華純は「よろしくね。」と手を差し出し、柏木はその手を握った。
「さて、じゃあ僕達の部屋に行こうか?柏木くん。」
華純は車椅子の後ろに立つと輝血達に手を振り柏木と共に姿を消した。
「これで柏木の事は気にせずに済むな。」
「でもかーくん、かすみんに任せるのはいいけど部屋まで同じでいいの?」
「いいんじゃねぇの。華純が同室の方が何かと楽だからって言い出したわけだし。」
「でもさあ、かすみんと同室って……ほら、周りを見てよ。」
「ん?」
輝血が周りの男たちに目をやると、男達は唇を噛み締めながら華純と柏木が向かった方をジッと睨みつけていた。
「ははっ、何してんだよお前ら。嫉妬か?」
輝血がそう言うと男達は一斉に輝血を見る。
「だって輝血さん!華純さんは俺達のオアシスですよ?!」
「荒野に咲く一輪の花!!」
「俺達が頑張れるのも華純さんがいるから…!」
「なのにあんなポッと出の男の世話係……しかも同室だなんて……。」
輝血はポリポリと頭を搔く。
「あのなぁ、お前ら。華純は男だぞ?」
「分かってますよ!でもそこら辺の女より断然華純さんの方が可愛い!抱けます!」
「抱けるとかは知らねぇよ。でもまぁ世話係ってだけで別に何も無いしそもそも柏木は動けないし。」
「そういう問題じゃないんです!!同室って事が許せないんです!!」
膨れる男達を見て輝血は呆れた顔を見せる。
「同室ってのは華純が決めたんだ。文句なら華純に言えよ。」
呆れ顔をした輝血は立ち上がると手をヒラヒラとさせ姿を消した。
懍は輝血の後を追い、男達は拗ねた表情を浮かべたままその場に座り込んだ。




