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食屍鬼 -蜘蛛糸-  作者: 藤岡
新たな決意
17/44

01

輝血、懍、柏木は車に乗り込みカブトメンバーが待つ場所 ルスト地区へと向かっていた。

輝血は眠り、懍は運転をし、柏木は黙ったまま後部座席に座っていた。

ガタガタと揺れる道。

月明かりだけが照らす道。

懍は慣れた様子で運転をし、外から聞こえる烏の鳴き声が不気味さを引き立たせた。

そんな中で柏木は思い出す。

自分が総龍会白龍に属していた時の事を。

辛い事もあったが嬉しい事も沢山あった。

色々なことを学んだ。

自分の隊の隊長を一番に尊敬していたが、黒龍の隊長も同じ位に尊敬していた。

黒龍は龍の中で最も勢力がある。

黒龍隊長と出会う日までは、そんな事は無い白龍の方が!と思っていたが、そんな考えは一瞬にして失った。

噂に聞く黒龍隊長は残酷な魔王のような存在だと聞いていた。

初めて会った時はそんな風には見えず、少し子供っぽさがあり生意気な口を聞く人だ。その程度だった。

だが、食屍鬼を目の前にした時あの人の眼が変わった。

先程までとは違い、闇に覆われ光を無くした目は獲物を捉えると微かに光る。

あの人が地を蹴ると目では追えない速さで消え、一度瞬きをした自分の視界に移るのは赤い雨だった。

黒い大剣を片手に此方を見るあの人は何事も無かったかのようにニコリと笑っていた。

自分はこの人には敵わない、この人が率いる隊は確実に龍で最も勢力がある、そう納得させられた。

黒い隊服を見に纏った隊員達も白い隊服の自分達よりも威勢があり、黒い圧に勝てなかった。

白の隊長と黒の隊長は仲が良く、白の隊長は黒の隊長を心の底から信頼し尊敬している事が分かり、隊員達も黒の隊長に尊敬の念を抱いた。

あの日、あの時、あの人が居なくならなければ、俺達は今も黒の隊長を尊敬し続けていただろう。

黒の隊長が悪い訳では無い。そんな事は分かっている。

でも、誰かを恨み憎しまなければ自分の心を失いそうだった。

間違った保ち方だった、そんな事は分かっている。

だが俺達にとってあの白い光が消えた事は、生きる意味を無くしたのと等しいのだ。

自分達の浅はかな考え全てを黒の隊長は理解していたのだろう。

「俺を恨みたければ恨めばいい。それでお前達に力が付くならそれでいい。だが、その力の矛先を間違えた者は俺が制す。」

白龍隊員が現総龍会長から告げられた言葉。

黒龍隊長が総龍会長になった時、俺の仲間達は関係の無い者を犠牲にした。

会長はそれを許さんとし、自らの手で白龍隊員の首を刎ねた。

あの日見た時と同じ眼をした会長。

泣き叫び謝る隊員を見て微かに光るあの眼に俺達は震えた。

自分への恨みを他者に向けた者に対して慈悲など無い。

その時思い出した。あの時自分が思った事を。

こ の 人 に は 敵 わ な い 。

その日、弱くズルい隊員達は龍から逃げ出した。

自分は仲間達となら会長を殺れる。

そう思っていた。

今思えば、全員返り討ちにあって終わっていただろう。

会長を殺った所で自分の心が晴れる訳でも無い。

それに、そんな事隊長は望んでいない。

他の隊員達みたいに自分達も会長の生還を喜べる側の人間だったら良かったのに。

自分達は醜い人間だ。

会長直々とは言えなくとも、龍に食われて終わる人生にした方が良い。

龍へ反感した償いをするには、龍に食われるしかない。そう思っている。

だが、龍に食われるにはそれ相応の事をしなければならない。

何者にも手を出さず食われるなんてことはまず無い。

だが自分には誰かを殺めるなんて事も出来ない。

どうしたらいいのか。

そう考えている時に出会った、この二人。

懍という男は少し隊長に似ている部分があり、懐かしさを感じた。

だが、その隣に立つ男 輝血。

この男は一目見た時体が強ばった。

会長と被って見えたからだ。

見た目が似ている訳では無い。

だが、少し気怠そうに歩く姿、生意気な口調、余裕そうな笑み、そして闇に覆われた目。

会長では無いと分かっていても心臓が潰れそうな程に跳ねていた。

それでも俺はアビスを渡すわけにはいかないので平然を装い話しかけた。

そして俺は輝血に…。

まるで小さい子が乱暴に玩具を扱うかの様な戦い方。

楽しそうでいて、壊れるのを喜ぶあの表情。

自分が元白龍隊員じゃ無ければ確実に壊されていただろう。

残虐性を持つこの男と会長が被って見えたのは、会長に対して失礼なのかもしれない。

だが、人の話を怠そうにしながらもしっかりと聞き、分からないことや知りたいことをハッキリと問いてくる輝血に少し好感を抱いた。

少し自分勝手な言動も見られるが、ここも会長に似た所だ。

そんな輝血に優しく寄り添う懍は益々隊長と被って見えた。

燈龍会長と志龍隊長を見ているような気持ちになった。

自分はこの二人についていき、そして龍に食われる時は真っ先に自分が食われよう。

もう自分より先に失うなんて事は無いように。

次こそ護ってみせよう。

この短時間でここまで思えたのはきっと、自分の心に出来た隙間をこの二人が瞬く間に埋めてくれたからだろう。

彼らが何かしてくれた訳では無い。

特に輝血は自分の両手足を容赦無く折った男。

だがその姿がまた燈龍会長に被って見えたのだ。

自分は自分が思っているよりも、燈龍会長と志龍隊長の事が好きだった。いや、好きなんだろう。

その代わりになりうる二人を失いたくない、そう思ってしまった自分はズルいですか?

志龍隊長、貴方はきっと困り顔に少し笑みを浮かべているでしょう。

でも自分はもう、こうすることでしか自我を保てないのです。

志龍隊長の所に行った時、叱られるのを覚悟して自分はこの二人と共に歩みます。

そして、きちんと罪を償います。

どうかこの無礼お許しください。

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