08
大きな門が開くと懍は車を進める。
中へ入ると門は閉まり、周りに人が集まる。
窓越しに集まってきた人を見た柏木は目を大きく見開いた。
懍は車を止めると笑顔で車から降り、眠た気な顔をした輝血もドアを開け車から降りると輝血の周りに人が集まった。
「輝血ぃ、おかえりぃ!」
「今日帰ってくるの知らなかったからびっくりしちゃったぁ。」
「かーくんおかえりなさぁい!」
輝血の周りに集まったのは幼稚園児ほどの年齢の子供達だった。
「ただいま。良い子にしてた?」
しゃがみこみ子供達に笑顔で答えるその姿は、人を痛めつけ命を奪っている人間には見えない程優しさに溢れていた。
輝血が子供達に中に入るように言うと、子供達は嬉しそうに走り城の中へと姿を消す。
子供達の姿が見えなくなった輝血から笑顔は消え、車内に取り残された柏木へと視線は移される。
「びっくりした?」
輝血は車の中へ入り込むと柏木を担ぐ体制を取る。
「あぁ……まさか子供がいるだなんて。」
「ははっ、アイツらは皆俺達の大事な家族だ。ガキもいるし、老人もいる。みんなこの城の中でお父さんに守られながら暮らしている。お前がもし城の中で少しでもおかしな行動をとってあいつらを危険な目に合わせようものならその時は容赦なく殺す。……って一人で動けねぇから心配いらねぇか。」
輝血は笑いながらそう言うと柏木を担ぎ車の外へと出た。
他の子供たちと話していた懍も子供達を城の中へと帰すと、車のドアを閉め輝血の隣を歩いた。
「医者の後はお父さんと会ってもらう。お父さんが知りたい事、それをお前が知っているなら包み隠さず話せよ。」
「ああ、分かったよ。出来る限り協力するつもりだ。」
柏木の返事を聞いた輝血と懍は小さく頷くとそのまま城の中へと入って行った。
柏木は一階奥にある部屋へと運ばれる。
酒を飲む白衣を着た長くボサボサの髪をした男が出迎えると、輝血はベッドの上に柏木を寝かしつけ話し出す。
「両腕両足診てくれ。治療が終わったらお父さんの部屋に送ってくれ。」
白衣を着た男が頷くと輝血と懍は柏木に手を振り部屋を出ていく。
白衣を着た男は扉が閉まるのを確認し、手に持つ酒が入った瓶を机の上に置くと柏木に不気味な笑みを見せた。
柏木が顔を引き攣らせながら「お願いします。」と言うと、白衣を着た男は更に不気味に笑う。
「ドクター、久しぶりの患者に喜んでたな。」
「うん。それに子供達も元気そうだし来てよかったね。」
輝血と懍はボロボロになった絨毯の上を歩く。
「柏木だっけ?あいつの話は俺が知らない世界の話を聞いている気分になった。」
「俺達みたいに弱き者から剥ぎ取るだけの人間を見たら食い殺しに来そうだよね。」
「ははっ、それでも俺は辞めないよ。金持ちアピールをする馬鹿とそれに群がる馬鹿な女。俺はこういう人間が同じ空気を吸っていると思うだけで吐き気がする。」
「それは俺達も同じだよかーくん。でもそれを龍は許さないだろうね。」
二人は階段を上り大きな扉を前に大きく息を吸って吐いた。
「まずはお父さんに柏木から聞いた話をしよう。」
懍は輝血を見て頷くと大きな扉を開くと、扉の先は綺麗な絨毯が敷かれており明るく温かい。
数人の子供達が玩具で遊び、その奥には大きな椅子に座る男が微笑む。
「よく来たね、輝血、懍。こっちにきて座りなさい。」
男が手招きをすると子供達が集まり輝血と懍の服を引っ張る。
輝血と懍は子供達に連れられ男の前に並ぶ椅子に座る。
「さあ、僕の可愛い子供達。もう眠る時間だ。部屋に行きなさい。」
男が子供達にそう言うと、子供達は膨れっ面をする。
「輝血と懍と遊びたいんだね。でも今日はお父さんと大事な話をするために来たんだ。今日は我慢しなさい。」
男がニコリと微笑むと子供達は渋々受け入れ輝血と懍におやすみのハグをして部屋を後にする。
輝血と懍は穏やかな笑みで子供達を見送り、扉が閉まると真剣な表情を見せた。
「お父さん、客も連れてきている。コイツは俺達が欲しい情報を色々知っている。」
輝血が妖しく笑いそう言うと、男は興味深そうに輝血の顔を覗き込んだ。
「で、その客人はどこにいるんだい?」
「下で治療してる。話を聞く前に突っかかってきたからお仕置した。」
輝血がそう言うと男は笑う。
「客人相手でも容赦ないなぁ全く。では、客人が来るまで今輝血と懍が知っている情報を教えてくれるかい?」
男が微笑みそう言うと輝血と懍はニタリと笑う。
仲間は総龍屋敷に居るであろう事。
総龍屋敷には迂闊には近付けない事。
会長が変わった事。
白龍隊員の中には現会長の燈龍凱斗を良く思っていない者がいる事。
柏木は元白龍隊員である事。
燈龍凱斗は第一被害者家族だという事。
柏木に聞いた話をする二人を優しく見守る男は手をかざし、二人は口を閉じた。
「大体の事は分かったよ。客人の柏木くんにはもっと深い所まで聞きたいものだね。」
男はニコリと笑った。
「知っている情報は全てムスカリに提供してもらう。その後柏木くんには……どうなってもらおう?輝血の玩具にしても構わないよ。」
男の言葉を聞いた輝血はうーんと考える。
「玩具って事は俺の好きにしてもいいってことだよね?」
「そうだね。好きにしていいよ。最近はよく稼いできてくれるからご褒美だよ。」
「じゃあ───」
輝血の言葉を遮るように扉が開き、三人は扉の方へと視線を移すと、扉の先には白衣を着た男が立っており隣には車椅子に乗せられた柏木がいた。
「失礼致します。客人の治療が完了致しました。」
白衣を着た男はそう言って頭を下げると車椅子に手をかけ三人の方へゆっくりと向かう。
柏木は両手足を伸ばしたまま固定されていた。
柏木を見て男はにこやかに歓迎する。
「ようこそ、ムスカリの本拠地へ。」
男の言葉を聞いた柏木はゴクリと喉を鳴らした。




