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食屍鬼 -蜘蛛糸-  作者: 藤岡
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13/65

07

「それで、食屍鬼になったお前の隊長と燈龍はどうしたんだ?」

「志龍隊長は最期まで白龍隊長として頑張っていたらしい。そして、燈龍会長に殺してくれ、と頼み燈龍会長はそれを受け入れ志龍隊長の首を刎ねた。志龍隊長はやっと、俺達の元に帰ってきたんだ。」

「うーん?」

輝血は唇を尖らせ首を傾げる。

「何処か分からないところがあった?かーくん。」

懍は輝血の顔を見てニコリと笑う。

「ここまで聞いて燈龍の何がいけないのか俺にはサッパリだ。」

「確かにね。自分達の隊長を楽にしてくれたのが燈龍。感謝するならまだ分かるけどね。」

輝血と懍は顔を合わせ「ねーっ」と声を合わせた。

そんな二人を見て柏木は再び口を開いた。

「この時も俺達は感謝したよ。流石燈龍会長だって。俺達なら首を斬る事を躊躇し喰われる道を選んでしまっていたと思うから。でも、あの日…食屍鬼討伐の終わりを迎えたあの日、俺達白龍隊員は燈龍会長を恨み始めた。」

柏木は窓へと目をやり外を眺める。

「でもその恨みは全く必要の無いもので、燈龍会長は悪くないんだ。」

輝血と懍は静かに柏木の言葉を聞く。

「燈龍会長が食屍鬼に感染した後薬で抑制し、後に手術を受けて人間へ戻った。って言っただろ?」

輝血と懍は頷く。

「ソレが白龍隊員の中にあった心の穴を広げた。」

「は?意味分かんねぇ。」

「はは、そうだよな。でも俺達はあの時燈龍会長が無事だった、手術で元に戻ったって聞いた時思ってしまったんだよ。志龍隊長も戻せたんじゃないのか?って。」

「でもその時に抑制剤という存在を知らなかったんでしょ?言いがかりにも程があるよ。龍は嫌いだけどちょっと燈龍を不憫に思うよ。」

懍は呆れた顔をし、輝血はジッと前を見つめていた。

「俺も今となっては馬鹿な考えを持った。そう思う。それに、志龍隊長を戻せるのなら誰よりも燈龍会長が率先して薬を投与しようとしたはずだ。でも、あの時の俺達はそこまで考えが至らなかった。そして未だにその考えに至らず燈龍会長を恨み続けている白龍隊員がいる。」

「なるほどね。自分の所の隊長は見殺しにされた感覚に陥った、って感じか?」

「うーん、まあそれに近い感じだね。どうしてうちの隊長は死んだんだ?って。とにかく馬鹿な俺達は志龍隊長の身近な存在だった燈龍会長に全ての責任を押し付けようとしたんだ。」

「で、お前はなんで白龍を辞めたの?自責の念ってやつか?」

「そう。燈龍会長に申し訳なくて。俺が辞めた所で燈龍会長の心の傷が癒えるわけでも何でもないけど、あの場に居ることが辛くなった。俺達には分からない隊長という責任。その責任を背負い共に戦ってきた二人。その一人を自分の手で殺らなくてはならない状況。それでなくとも燈龍会長は沢山失っているのに、俺達は愚かな事をした。きっと志龍隊長もご立腹だろう。」

「で、辞めて何故龍の敵に回った?それこそ燈龍は悲しみそうだけどな。」

「悪事を働く悪人を相手にする龍。俺は龍に処されなければならない、そう思った。」

「でもそれって自分勝手過ぎないか?お前の気持ちだけで一般市民を巻き込んでるんだろ?ま、俺達も人の事言えねぇけど。」

「実は俺はまだ誰にも手を出せてはいない。一般市民を目の前にするとどうしても志龍隊長や白龍隊員、元会長や燈龍会長達の顔が浮かぶんだ。」

輝血は煙草を取り出す。

「俺の他にも白龍隊員を辞めたやつが何人かいた。でもそいつらは全員殺られた。」

輝血は煙草を咥え火をつける。

「お前白龍隊員だろ?!って、悪人に殺されたんだ。そいつの仲間を捕らえたのが俺達白龍隊員だったらしい。龍は怨みや憎しみを買いやすい存在。」

輝血は煙を吐き出し柏木を見て口を開く。

「悪人と言えどそいつらにも事情があったり家族がいたりするからな。自分達は殺るけど自分の大事なモンに手を出されたら憎しみ怒る。人はそれを繰り返す愚かな存在だ。龍だけじゃなく俺達ムスカリも同じだし、一般市民でも同じだろう。…どう上手く立ち回るかが大事ってお父さんが言ってた。」

「上手く立ち回る?」

「俺達に報復しようとする奴らは全員とっ捕まえて玩具にする。そうするとまた報復しようとする奴らが現れる。そいつらも同じように玩具にする。これの繰り返し。」

「それは上手く立ち回っているのか?」

「そうだよ。失敗しなけりゃ永遠に遊べる。俺達は常に新しい玩具が欲しい。へへっ、だから俺達は報復しようと向かってくるやつがいると有難いんだ。こっちから向かう手間が省ける。それにそれなりの金にもなる。」

ヘラヘラと笑う輝血と懍を見て柏木は苦笑いをした。

「で、その恨みとやらで燈龍に刃向かった奴は燈龍の手によってこの世を去った。恨む事は間違いだと思ったあんたは龍を抜けてアビスの住人になった。しかもその狙いは龍から罰を受ける為。そういう事?」

「ああ、そうだ。」

「ふーん。なんかもっと他に方法はありそうだけど……まあいいや。燈龍の強さもなんとなく分かった。でも戦ってみない事には勝敗は分からない。」

輝血は懍に車を出すように言うと、懍は前を向きアクセルを踏む。

薄暗くガタガタとした道を進むと少しずつ車が照らされる。

「かーくん、すぐにつくから寝ないでね。」

「分かってるよ。寝ないよ。」

輝血は腕を上に伸ばして大きな欠伸をしながら答える。

「お父さんの家には医者もいる。って言っても表に出る事が出来ない医者だし治療も少し荒いけど腕は確かだから。えーっと、お前の名前なんだっけ。」

「柏木だ。」

「ああ、そうそう。柏木。柏木はとりあえず医者の所に行ってもらうから。」

輝血はそう言うとまた一つ大きな欠伸をする。

車は明かりに照らされながら道なりに進むと少しボロくなった城の前で止まった。

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