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食屍鬼 -蜘蛛糸-  作者: 藤岡
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12/52

06

「へぇ……昇格したって事か。」

輝血は灰皿に煙草を押し付けるとシートを倒し後ろへと移動した。

「今までお前の話を聞いていて知りたい事が幾つかある。今から1つずつ質問していくから全部答えろ。」

輝血は柏木の隣に座ると肩に手を回す。

「俺が分かる範囲でなら。」

輝血は「いい子だな。」と柏木の頭をポンポンと軽く叩く。

「1、その燈龍凱斗と俺達はどっちが強い?」

ニコリと笑いながら聞く輝血の顔を見て柏木は笑う。

「何笑ってんだよお前。」

「いや、すまない。燈龍会長と子猫ちゃん達……言うまでもなく燈龍会長だ。まさしく龍と猫の戦い。此方に勝ち目なんて無い。」

「は?なんだそれ。言っても相手一人なら──」

「無理だ。絶対に、無理だよ。」

輝血は柏木の肩から手を退かすと大きくため息をつく。

「どうして絶対、なんて言いきれんだよ。」

少し拗ねた顔をする輝血を横目に柏木は微笑んだ。

「燈龍会長はとても優しい。黒龍隊員達は全員燈龍会長の事をアニキと呼んで慕っていた。それは白龍や青龍、赤龍の隊員から見ても微笑ましい光景であり、羨ましくもあった。だが、燈龍会長は俺達が理解する事など出来ない程の悲しみや怒り、憎しみを背負って生きていた。その思いは強く、あの人を強くした。」

「気持ちで強くなった?笑わせんなよ。それなら誰にでも──」

「あの人が最初の被害者家族なんだよ。」

被害者家族、という言葉を耳にした輝血と懍の目付きが変わる。

そんな二人に気付かぬまま柏木は続けた。

「当時黒龍隊長だった父親、元総龍隊員の母親、そして幼い妹を一晩にして全員食屍鬼に喰われた。燈龍会長は当時8歳だったらしい。それから黒龍隊長に至るまで総龍会で鍛え上げられた。俺達みたいに居場所をなくして入隊した隊員や、食屍鬼を憎み入隊希望を出して入った隊員達とは志や格が違う。」

輝血と懍はじっと前を見つめ聞く。

「見た目は少しチャラチャラしていて細身。だが見た目からは想像出来ない力を持つ。並大抵の人間相手なら燈龍会長に一発食らわされただけでダウンするだろう。龍の隊員達ですら燈龍会長の遊びの一発を耐えるのにギリギリ、あの人は紛うことなき龍の筆頭。会長に相応しい人。皆がそう思っていた。」

「思っていた……どうして過去形なんだ?」

柏木はチラリと輝血に目線を移す。

「ある時、成功体という食屍鬼に出会したのが始まりだ。燈龍会長でも苦闘した相手。そこに俺達白龍の隊長もいたんだ。志龍 猫八(しりゅう ねこはち)、これが俺達が尊敬し命を懸けてお守りすると決めた隊長の名前だ。」

柏木は唇を震わせ、一筋の涙を流す。

「志龍隊長は凄く明るくて、いつも隊員達、俺たちの事を気にかけてくれていて。志龍隊長は燈龍会長の事も大好きでさ、燈龍会長のピンチだって知ってすぐに燈龍会長の元へと向かったんだ。志龍隊長、幹部、上級層の一部で。その中に俺もいた。そして黒龍隊員達が救われ、成功体の存在を知ることも出来た。」

輝血はジトリと前を見て懍に「車を止めろ」と命令すると、懍はブレーキをかけ後ろをむく。

「どうしたのかーくん?」

「そろそろお父さんの家に着く。この話だけはここで聞いてから行きたい。」

懍は頷くとそのまま柏木の目を見る。

「話の途中でごめんね、続けて。」

柏木は頷くと続きを話し始めた。

「引き戻し調査する、これをもっと大人数または俺達上級層を省いた幹部で固めていけばよかったんだ。そうすれば、志龍隊長は……。」

涙を零し声を漏らす柏木の頭を懍が優しく撫でる。

そんな二人を見た輝血は首を回し骨を鳴らす。

「成功体、ってやつに殺られたのか?」

「ああ、そうだ。俺達は隊長、それに燈龍会長がいれば安泰だ、なんて思っていた。実際それまでに出会した食屍鬼達を目の前に隊長レベルの人達が苦戦する姿は見た事がなかった。でも、成功体はそう甘くはなかった。一瞬だ。一瞬で志龍隊長の腹を貫いたんだ。燈龍会長ですら目で追えない、そんな奴らに俺達上級層なんかが勝てるわけない。……俺達はあの時ただ見ることしか出来なかったんだよ。」

「ふぅん。でもそれって別に燈龍が悪い訳じゃなくないか?どっちかって言うと隊長の前に行かなかったお前らだろ。」

輝血は胡座をかき柏木を見る。

「そうだ。俺達が不甲斐ないばかりに俺達の隊長を失った。この時は燈龍会長を責めよう、だなんて思う人は一人もいなくて、全員が自分を責めたよ。特に白龍隊員達はね。それに燈龍会長は自分が悪い、お前達は悪くないと頭を下げた。」

「この時は、ね。」

「ああ、それから暫くして志龍隊長と燈龍会長は会っているんだ。」

「は?幽霊も見えるのか燈龍。」

「いや、違う。志龍隊長は殺られたあの日近くの研究所、大橋の研究所で供養される事になった。俺達は確かに骨を受け取った。だがその骨は志龍隊長の物ではない他の誰かの骨だったんだ。志龍隊長は大橋の手によって食屍鬼ウイルスを投与され望まない姿で生き返る事になった。」

輝血は眉間に皺を寄せ頭を抱える。

そんな輝血を見た懍は輝血の頭を優しく撫でた。

「大橋、想像以上に屑だね?かーくん。」

「……屑だが研究者としての腕は認めざるを得ないのかもしれないな。」

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