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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
弱さが生むもの
113/123

01

車を走らせ数時間が経ち日が昇り始める。

輝血がキョウに色々質問をし興奮している隣で懍は眠りについていた。

キョウはヘラヘラと笑いながら輝血の質問に答え、赤城は口を開くこと無く運転に集中していた。

その後ろではレイを乗せた車内はカブトメンバーの寝言やイビキが飛び交い、助手席に乗るレイはその煩さで眠れずに少し苛ついていた。

そんなレイの機嫌を取りながら運転しているのは颯だった。

その後ろに続くレイが用意した車。

それ以降は誰もついてきてはいない。

──────────────

「それにしてもあの女達は大丈夫なんか?」

貧乏揺すりをしながら煙草を取り出すレイ。

「大丈夫なんじゃないですか?あのアザミって女がしっかりしてる感じでしたし。それに女がいる方が俺達もやりにくいでしょ。」

「ドアホ。女が一人おるおらんでその場の空気が全然ちゃうやろ。やりにくいとか関係無いねん、今は癒しが欲しい……なんでこんな男だらけやねん…。」

「はは……すみません……。」

不満気なレイに対して颯は気まずそうに苦笑いをした。

「まあ動かしやすいのは男やし、数が多けりゃ多いほどやれる事も増えるからええんやけど。……なあ、ちょっと調べてんけどカブトってやってきた事めちゃくちゃなんやな?」

レイは携帯画面を眩しそうに見つめている。

画面に映し出された文字を読み眉を顰めるレイを横目で見た颯は真っ直ぐ前を見ながら返事をした。

「あー、俺も水仙からちょっと聞いたってだけで詳しくは無いんですよね。そんなにめちゃくちゃでしたか?」

「なんや知らんのか?俺が言うのもなんやけどアイツら頭おかしいで。女もやけどわざわざ遺体に自分らの名前書いたカード置いたりして警察おちょくっとったみたいやし。」

「マジですか?はは、アイツら結構やりますね」

颯が笑うとレイがジトッとした目で颯を見る。

「な、なんですか?」

「後ろの奴らは言えば金魚のフンみたいなもんや。主にあの輝血と懍、特に輝血がヤバかったみたいや。そんな奴がここまで丸なるって……龍ってどんな奴らの集まりやねん?」

颯はレイからの質問を聞くと下唇を軽く噛み締め眉を顰めた。

「うーん、龍は……そうですね……俺らの光バージョンみたいな感じですね。」

「は?なんやねんそれ?」

颯から返ってきた言葉を聞いてレイはまた不満気な顔を向けた。

「やってる事は俺らと変わらないんですよ。人を痛め付けて吐かせる。主に被害者が負った痛みと同等の痛みを加害者に与える。それを淡々とこなすのが会長です。」

「殺しはせんのか?」

「いえ、命を落とした人数の方が多いですよ。そりゃ殺人を犯した奴が流れ込んできますからね、同じような罰を与えられて生き残る方が少ないです。」

「ふーん。……それに耐えたのがコイツらか?」

「そうです。」

「なるほどな。そりゃキョウも欲しがるわけや。くくっ、ほーんま恐ろしい男やで。」

颯にはその意味は理解ができなかったが、よからぬ事を考えているのだろうということだけは嫌でも分かってしまった。

──────────────

それから数時間経ち、だいぶ離れた場所へついた一行は一度休憩をとることにした。

キョウは車から降りると携帯電話を取り出しどこかへ電話を掛けていた。

目を覚ました懍と少し喋り疲れている輝血は車の中に残り、赤城は車から降りるとキョウの方へ全神経を集中させて立つ。

カブトメンバーは車から降りトイレ休憩へ。

颯は自動販売機で缶コーヒーを買い、レイは口を大きく開けて眠っていた。

キョウは携帯電話をポケットへと突っ込み車の方へと進むと、赤城が助手席のドアを開いた。

キョウが乗り込んだ事を確認した赤城は運転席へと戻る。

「お前らはトイレに行かなくて大丈夫かい?」

キョウは前を見たまま輝血達に声を掛ける。

「俺は大丈夫です。懍は大丈夫?」

「俺も大丈夫。」


「そうかい。じゃあそろそろ出発するかァ。雨が降る前に抜けないとなァ。」

「雨……?」

輝血は窓から外を見る。

ずっと曇り空が続いていたが今はどちらかと言えば晴れ始めている。

キョウは再び携帯電話を取り出し画面を触ると耳にあてた。

「なんだい?寝てたのかい?ははっ、まァいい。ちょっと急ぐぞ。」

電話の相手はレイだろう。

キョウが電話を切り終わると後ろに並ぶ車が隣へと並ぶ。

「もう全員集まってるみたいやで。」

窓を開けてレイが少し身を乗り出し話すと、赤城が窓を開けキョウはレイの方を見て「そうかい。」とだけ答え前を向き直す。

「はよ会いたいな。」

キョウは前を向いたまま頷き、レイはニコニコとしながら座り直し窓を閉める。

赤城が窓を閉めると輝血たちを乗せた車は動き始めた。

キョウはずっと携帯電話を触っていた。

輝血と懍は邪魔をしないよう静かに前を向く。

自分達の知らない場所を走る車。

いくつの街を通り抜けたのだろう。

警察を見掛ける度に輝血と懍は身構えていたが、赤城とキョウは表情一つ変えなかった。

そんな二人を見て、自分達もこれ位堂々としなきゃいけないんだ……と思う。

それと同時に輝血と懍は、龍に入る前の自分達ならもっと堂々としていたことを思い出す。

どうしてだろう?

そう考えて出た答えは、自分達が悪いことをしているという自覚の無さからくるものだと気付く。

今の自分達は、総龍会から逃亡し、今までしてきた自分達の罪を自覚している。

この先、キョウの元でやっていけるのか?そんな不安も過ぎるが、そんな考えを持っていてはすぐに用済みとし捨てられることも分かっている。

戻ると決めたのは自分だろう。

輝血は何度も何度も心の中で自分に言い聞かせた。

途中で再び休憩を取り、赤城はキョウと輝血と懍の飲食料をコンビニへ買いに出る。

車内に残った三人に会話は無かった。

懍がチラリと外を見ると、颯と隣でヘラヘラと笑うレイが映る。

「向こうに行きたくなったかい?」

懍は身体をビクリと跳ねさせた。

「え?」

「羨ましそうに見てるもんだから。」

「羨ましいとかじゃないです!なんかあんまり緊張感が無いというか……。」

「はっは、そうだなァ。レイはそういう奴なんだよ。」

オドオドとした態度をとる懍に対してキョウは気付いていないかのような顔をしながら返事をした。

「でも名前を知らない人はいない……位の力を持っている?」

懍が首を傾げるとキョウは静かに話し始めた。

懍と輝血からは今キョウがどんな表情をしているのかは分からない。

「そうだねェ。凱斗と同じで、見た目だけじゃソイツの本当の姿なんて分かりっこない。人間てのは無意識に嘘をついて生きているからねェ。」

「無意識に嘘……ですか?」

懍は更に首を傾げた。

「そう。本当の自分を常に他人に見せて生きている奴なんかいねェだろ。……いやァ、いるのかもしれないが少なくとも俺はそんな奴を見た事がない。」

「……キョウさんもですか?」

懍からの質問を聞いたキョウはくくくっと喉を鳴らして静かに笑う。

「くくっ、そりゃァそう。俺だってオンとオフが無けりゃァ疲れちまう。常にアンテナを張っているといざという時に動けなくなるからなァ。懍と輝血だってそうじゃないかい?」

懍と輝血は目を合わせた。

「ただし、どれが本当の自分なのかを見失わないようにしなきゃいけない。偽りの方を本当の自分だと思い込んだ時、人は簡単に崩れちまうからなァ。」

懍と輝血がうーん?と首を傾げていると、車のドアが開いた。

「ただいま戻りました。キョウさんが好きな物を買ってきたので今の気分の物を選んでください。」

大きな袋を抱え戻ってきた赤城はキョウに渡し、運転席へと座る。

「今これが食いたいと思ってたんだよ。……赤城のはどれだい?」

「自分のはこっちにあります。」

赤城が小さな袋を見せると、キョウは自分が持つ袋の中から一つのパンと飲み物を取り出し、輝血に袋を渡す。

「後は二人で分けなァ。」

キョウは袋を渡し終えると前を向いてパンを取り出す。

「赤城ィ。」

「はい。」

「向こうについたら全員で寿司でも食いに行くかい?」

「いいですね。」

「今回は人数が多いからなァ。貸し切らねェとなァ。」

懍は寿司に反応しながら、輝血と袋の中の食べ物を分け合った。

レイ達が車に戻るのを確認すると、キョウ達を乗せた車は再び走り出す。

懍と輝血が二人話していると、赤城の咳払いが聞こえ二人はビクリとする。

「キョウさんが眠っている。静かにしろ。」

赤城は小声でそう言うと、また黙り運転に集中した。

懍と輝血は口を閉じ窓から外を見る事しか出来なかった。

それからどれ程の時間が過ぎたのかは分からない。

ここがどこなのかも分からないが、完全に龍の区域外だと言う事だけは理解した。

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