09
暗く光の無い道を数台の車が走る。
「で、殆どがレイの所に行くって言うから落ち込んでるのかい?」
先頭を走る車の助手席から後部座席へと声が掛る。
「……はい。」
後部座席でどんよりとした顔をする輝血と、その隣に座り頭を撫でる懍。
「はっは、そんな事位で落ち込んでたらこの先やってけないぞ。なァ?赤城ィ。」
「はい。それにお前達の仲間はレイさんの元にいるならそれはそれでいいだろう。」
赤城は運転をしながら冷たい声で言い放った。
「そうなんですけど……一緒にいられると思っていたので……。」
子供のように拗ねた顔をする輝血。
「まァ一緒に仕事をする時もあるし、今は龍の目があるから暫くは一緒に行動する事になった。そんなに寂しがるんじゃねェよ。」
キョウは煙草を咥え火を付ける。
「それに、本格的にお前達に仕事をしてもらうってなったら寂しいだのなんだの言ってられねェぞ。分かっているとは思うが、お前達はもうこっちに帰ってきたんだ。……甘えは許さねェぞ。」
キョウが吐き出す煙は後部座席へと流れ込み輝血と懍は軽く噎せる。
そんな二人を見てキョウはニタリと笑った。
「あの……。」
まだ拗ねている輝血を撫でながら懍がキョウに声をかけた。
「なんだい?」
「かーくんはともかく俺はそんなにキョウさんと関わった事がないし……その……一緒についてきてよかったんですか?」
「覚悟があるから来たんだろォ?良いも悪いも無ェよ。ただ来たからにはそれなりに頑張ってもらわないと困るけどなァ。それともなんだァ?覚悟が無ェのに来たってのかい?」
「俺は……かーくんを守る覚悟があります。」
懍の返答を聞きキョウが煙を吹き出す。
「ゴホッゴホッ……はっはは、なんだい?そりゃ。」
「もちろんキョウさん達も守りたい……ですけど、多分……いや絶対キョウさんや赤城さんの方が俺達より強いので。」
「何を言っているんだ?」
懍がオドオドとしながら話すと返事をしたのは赤城だった。
「輝血を守る覚悟?そうじゃない。お前達は常にキョウさんを一番に考え害から守り抜け。この方が居るから今の自分がいると思え。強い弱いは関係無い。気持ちが大事だって話だ。」
赤城が話し終えると車内はシンと静まり返る。
「赤城は厳しいからなァ。まァ俺の事よく知りもしないでそんな覚悟ある方がおかしいって話だわなァ。ゆっくりでいいからいつか俺を守ってみせろよ。なァ?」
「はい!頑張ります!」
懍が大きな声で返事をすると、キョウは子供を乗せている気分だ。とまた笑った。
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「いやいや、いくらなんでも多すぎやろ。」
キョウ達が乗る車の後ろを走る車内でレイが颯に向けて言う。
「ですね。」
颯も少し困ったような顔をする。
「いや、別にええんやけど……一気に何人増えてん?しかも女は全員付いてこーへんって言うし。なんでこんなむさ苦しい集団にならなアカンねん。」
レイは助手席から後部座席を覗き、輝血達の仲間を見て大きくため息をつく。
「はぁ……お前らはちゃんと働けんのか?すぐ弱音吐くんちゃうやろな?」
「大丈夫です!俺ら元々カブトの一員なので!」
一人がそう言うと他の仲間達も声を上げ始める。
「わかったわかった!やかましい!」
レイは既に少し疲れているような表情をしながら座り直した。
裏世界で名の知れた二人を筆頭に数十人の男を乗せた数台の車は新たな拠点へと向かい走り続けた。
総龍地区から遠く遠く離れた土地を目指して。
輝血はついて行くと決めた以上、未練や過去は全て捨てる覚悟を持っていた。
懍は輝血と共にならば何処へでもついて行く覚悟を持ち、仲間達はいつか輝血と懍と共にカブトを復活させあの時の楽しかった日々を取り戻す為にレイの元で鍛え直す覚悟を。
レイは自分が面倒を見る人数が一気に増えた為、これからの仕事量を考え頭痛を訴えた。
キョウは自分達のすぐ後ろを追いかけてきているであろう龍との鬼ごっこをどう終わらせるか考え自然と笑みがこぼれる。
この先はどこへ向かおうと地獄への入口にしか繋がらない。
どの扉を開けようと誰かを犠牲にしなくてはならない。
だがその扉を開く前に彼等は、怒りを帯びた龍を鎮めなければならない。
でなければ、地獄へすら行けないのである。




