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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
外の世界
110/123

07

「おい?大丈夫か?」

キョウの呆れた声にハッとする。

「なんだい?覚悟ができていないってことかい?ならこの話は無か──」

「覚悟は出来ています。ついて行かせてください。」

キョウは目をぱちぱちとさせた。

「本気かい?」

「はい。俺は今会長じゃなくてキョウさんと居たいんです。」

「はっは、そりゃ嬉しいが俺は凱斗みたいに輝血に何もしていないぞ?」

「キョウさんがそばにいて話してくれるだけで俺は満足です。」

「はっはっは、なんだい?そりゃ。告白かい?」

キョウは声を大きくして笑う。

「はーあっ、まァ輝血がそう言うなら俺はなんも文句も無ェ。もうこのまま移動するからよォ、自分の仲間達にも伝えて来なァ。それなりの覚悟が無いやつは置いてこい。」

「置いて、ですか?」

戸惑いを隠せない輝血に対してキョウは冷静に話した。

「あァ。ウチはなんでも屋だからなァ。少しでも気の迷いがある奴は何も出来ねェってのは分かっているし、それにここに置いていきゃァレイが拾って帰るだろうよ。」

「レイさんがですか?」

「あァ。それにレイと居るなら俺がいつでも会わせてやるよ。どうせ俺が行く近場に拠点構えるのも分かっているしなァ。」

キョウは外を眺めながら笑った。

「とりあえず話してこい。」

輝血はキョウに頭を下げ車からおりると懍達の元へと走って向かった。

キョウが窓を開ける。

「赤城ィ、輝血の目が変わったなァ?」

「そうですね。それでもまだ全然ですけど。」

「はっは、厳しいねェ。」

「いくらキョウさんが可愛がろうともしアイツのせいでキョウさんに何かあれば俺は迷わずアイツを殺しますよ。」

「お前は俺の事が大好きだなァ。」

「はい。」

「……即答されると俺が少し恥ずかしいんだわ。」

「すみません。でも嘘はつけないので。」

キョウは少し照れくさそうに笑いながら、懍達と話す輝血を見つめた。

「凱斗はこの状況をどう乗り越えるのかねェ。」

──────────────

「どういう事なのかちゃんと説明しろ。」

総龍会屋敷広場に総龍隊員全員が集められ、一番前には幹部が並び、椅子に座る総龍会会長に頭を下げていた。

「聞こえなかったか?どういう事なのかちゃんと説明しろと言っているんだ。」

低く圧がかかった声は隊員全てを萎縮させた。

「はい。……上級層の者が見回りに出たと関門から聞きました。車は三台出ており、恐らく後部座席に輝血達を乗せて共に逃亡したと思われます。」

屋敷に残っていた隊員の一人が立ち上がり状況説明を始めるが、その者の足は震えており、今にも消えてなくなりそうな程に声はか細く振動を放っていた。

「どうしてお前達が揃っていたのにも関わらず誰一人として気付かなかったんだ?お前達は俺が不在の時に一体何をしていた?」

「それは……各々がやるべき事を……。」

隊員が言葉を詰まらせると同時に、残っていた他の隊員達の鼓動が加速した。

「部屋でぐーたらお喋りするのがお前達のやるべき事か?」

「……すみません。」

顔を見なくても、今どのような目で自分を見ているのかは容易く想像できた。

「ウチだけじゃなく各龍からも隊員が数名ほぼ同時刻に外に出たきりだ。それに輝血達の仲間の女達も全員が消えた。……ははは、俺達は一体いつから糸に引っかかってたんだろうな?はっはは。」

手で目を隠し笑う凱斗を見た隊員達の顔から血の気が引いた。

「入隊試験ももっと厳しいものにしないといけないなあ。それに俺は人に甘すぎるらしい。過去や関わりある人間、全て関係無く今のそいつ自身を見て判断しなければならないのにな。はっはは、前会長に叱られるなぁ。」

隊員達は黙ったまま凱斗の言葉を聞いている。

異様な空気が漂い、誰も何も言えないのである。

「さて、ネズミが忍び込んでいたのは各龍の屋敷だった。他にもまだ残ってねぇか調べる必要があるな。」

凱斗が目に当てていた手を外し隊員達を見ると、隊員達は震え上がった。

最も恐れられていた時代のあの時の目で自分達を見る凱斗からは、一切の甘さや優しさを感じ取れない。

「もしまだ残っているというのなら、今のうちに自首しておくんだな。」

凱斗はそう言うと立ち上がり、ゆっくりと隊員達に近付く。

「さて、お前達はどうやって俺を信じさせてくれる?」

凱斗の目が怪しく光り、その場にいる者全てを震えさせた。

各龍の屋敷では全て同じように裏切り者がいないか調べられる事となった。

逃亡せずに残るメリットは何一つとして見当たらないので、恐らくもう全ての裏切り者は外に出たというのは分かっていたが、念の為調べておかなければならなかった。

これは総龍会にとって前代未聞の失態なのである。

国や国民の為に命を懸けるのが総龍会の役目。

その中に、反社会勢力の人間が紛れ込み共に活動し情報共有までしていたと国に知られれば、凱斗の立場も危うくなる。

それに、食屍鬼事件で国民からバッシングを受けた直後でもある為、最悪の場合は総龍会自体が滅ぶのだ。

ただ、総龍会が無くなるとなれば一番困るのは警察だろう。

警察は総龍会に極悪人と呼ばれる人物を任せていた。

自分の命の危機を脅かす存在は全て総龍会が請け負ってくれていたのだ。

総龍会が無くなるとすれば、その者達もこれからは全て警察が相手をせざるを得ない。

近年では、命を失う確率がグッと下がった事により警察になる道を選んだ者は少なくなかった。

総龍会もそれは知っていたので、どのような手を使ってでもこの失態が外に漏れる事は防ぎたいのだ。

それは、総龍会から見た国民の一人である警察を守る為に。

睡眠時間を削り、隊員一人一人が各隊長と、そして総龍会では会長と話をした。

自分は裏切り者では無いと、自分は今裏切られて悲しいと気持ちを伝える者が多い中、怒りを隠しきれない隊員も少なくはなかった。

全員の経歴を見直し、逃亡した隊員達と同時期に入隊した者は特に徹底的に調べあげられた。

そして、全ての龍にこれ以上の裏切り者はいないとされ、隊員達は全員が休むように伝えられる。

会長と各隊長は緊急会議を行い、それぞれの逃亡犯の特徴や経歴、そして今までのその者の行動を話すことにより不審な点がなかったか全員で話し合った。

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