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食屍鬼 -蜘蛛糸-  作者: 藤岡
情報収集
11/34

05

「ガタガタ道だから落ちないようにね。」

車を運転する懍が後ろへ声をかける。

「シートベルトしてやったんだ。落ちねぇよ。」

助手席で煙を吐き出しながら輝血が言う。

後部座席に座らされた柏木は大人しく前を向いていた。

進むに連れて道は荒くなり、車体は大きく揺れる。

車が薄暗い森の中へと入ると柏木は窓から外を見て呟く。

「この森は……。」

柏木の顔から血の気が引いていく様を見て輝血が笑う。

「大丈夫。俺達相手に何もしない。お前達がアビスでやった事と同じで、部外者の侵入を許さないだけ。俺達は部外者じゃない。」

輝血はそう言うと窓を開け煙を外に流した。

「この森に足を踏み入れる物好きは沢山いた。ぜーんぶ俺達の玩具になって壊れて捨てられた。そんな場所に何故龍が近寄らないかお前は知っているか?」

柏木は首を横に振る。

「龍は各龍の地区、その周りのアビスやクレセントといった4つの地区で手一杯でザリチュの森にまで辿り着けない。お前らがアビスを守る行為は自然と俺達を守っている事になる。この森を抜けた先に俺達ムスカリ、カブト、雪のしずくの拠点がある。ただ、簡単に来れるような場所じゃない。この森は迷路だ。俺達じゃないと車では来る事が出来ない。ははっ、車を降りて歩いて俺たちの所に来た馬鹿共は全員帰ることができない。」

「拠点の手前には仲間達が住む小さな町があってね、森を抜けたところでまずそこで足止めを食らう。そもそもこの森で寝泊まりをして部外者を捕まえる仲間達もいる。」

輝血と懍の話を聞いた柏木は申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。

「でも龍は空からでもやってくる。専用ヘリがあるのを知らないのか?」

「ん?知ってるよ。たまにうるせぇ音立てて飛んでるの見かけるからな。それでも奴らはこの森の手前までしか来ない。空から龍が降ってきた所で俺達にもそれなりの考えはある。ま、爆弾なんか落とされれば何も出来ないけど。」

輝血は外を眺め続けた。

「なあ。奴らはこの森の事、何処まで知っている?」

柏木は俯き口を開く。

「分からない。」

「分からない?」

「ああ……龍は下級層、中級層、上級層、幹部、隊長で成り立つ。俺は白龍の上級層に属していた。機密情報等は会長と隊長の会議でしか話されない。たまに幹部も参加して共有をしているが上級層が呼ばれることはまずない。俺達は幹部又は隊長、会長から聞いた情報しか知らない。」

輝血は顎に手を当て考える。

「幹部か隊長をとっ捕まえて話を聞けば更に深い情報を得ることが出来る、ってことか。」

「それは無理だ!」

声を荒らげる柏木に輝血と懍は眉をピクリと動かせる。

「なんでだよ?強いからか?人数で抑えれば──」

「人数なんて関係ない。幹部や隊長は悪魔だ。悪人だと分かれば容赦はしない。自分たちの敵だとなれば尚更……。」

「声、震えてるよ?シシッ怯えてるの?」

「龍の隊員達の中で幹部や隊長に怯えていないやつなんかいない。青龍赤龍は女隊長が率いていて女隊員が多い。だから俺達男ばかりの隊とは違った恐ろしさがあると聞いたことがある。が、幹部や隊長に怯えているのは黒龍と白龍だ。特に黒龍、あそこだけは絶対に手を出してはいけない。」

「黒龍、ねぇ。龍の中で一番勢力がある隊ってのはお父さんから聞いたことがある。な、懍?」

「うん、隊長がずば抜けてるとかなんとか。」

「その情報は3年も前の情報だ。黒龍の隊長はもう隊長じゃない。」

輝血は後ろを向き、煙草を取りだし咥え火をつけ煙を吐き出す。

「隊長じゃない?どこ行ったんだよそいつ。ははっ、もしかして死んだか?」

輝血が笑いながらそう言うと柏木はそっと顔を上げ、柏木の顔を見た輝血から笑顔が消えた。

「そうだ、隊長は死んだんだ。」

柏木の目は一点を見つめる。

その目は恐怖に支配されている者の目だと輝血は気付く。

柏木は薄ら笑いを浮かべ続けた。

「隊長は死んで、生き返った。」

「生き返った?」

「ああ、黒龍元隊長、燈龍 凱斗(とうりゅう かいと)は一度人間として死んだんだ。」

「は?人間としてってなんだよ。」

「食屍鬼に噛まれ感染し、瞬間的ではあったが食屍鬼になった。」

「え?食屍鬼になったら誰であろうと龍が仕留める、そういう決まりだって聞いたけど違うの?」

「ああ、これは俺が直接見た訳でもなく聞いた話だから真実かは分からないが、自分を殺せという燈龍隊長の命令を、当時の黒龍幹部であり燈龍隊長の右腕として知られていた桜庭(さくらば)さんが従わなかった。」

輝血は前を向き灰皿にタバコの灰を落とす。

「で、その燈龍?ってやつは結局どうなったんだよ。」

柏木は輝血の前をジッと見つめたまま話す。

「食屍鬼が彷徨う事になったそもそもの原因は研究者の大橋(おおはし)という人が食屍鬼を増やした事でおこったんだ。その場に大橋もいて、食屍鬼のウイルスを抑制する薬を持っていてそれを燈龍隊長に投与した。後に手術を受け燈龍隊長は食屍鬼から人間へ戻ることが出来た。」

「本を出したアイツね。俺らそいつとも接触してぇんだよ。……にしても食屍鬼になったり人間に戻ったり散々だなその燈龍とかいう人。そりゃ龍を辞めるよな。」

「燈龍隊長は龍を辞めてはいない。」

「は?じゃあ何?降格したか?」

「いや違う。降格どころか燈龍隊長が今の総龍会会長だ。」

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