01
陽は沈み大人達は色とりどりのライトに照らされ浮かれている。
フラフラと覚束無い者や嘔吐し寝転がる者。
大きな声で話し笑う者に怒鳴り合う者。
その者達を暗闇から見定める者。
だが、浮かれる者は知りもしない。
自分が誰かに狙われているだなんて。
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「かーくん、アイツ良さそうじゃない?」
「ああ、三日分位は調達出来そうだな。
今日はあのおっさんにする。俺達は待機してようか。」
「イシシッ了解!」
男二人はニヤリと笑うと暗闇の中へと姿を消す。
彼らの視線の先に居たのは、誰が見ても高価だと分かる腕時計を見つめる男と、その男の腕に絡みついた全身ブランド物を身に纏った女。
男は時計から女へと視線を戻すとニコリと笑い会員制の店を指差す。
女は嬉しそうに笑顔で返し、二人はピタリとくっつき仲睦まじく店へと向かった。
そんな二人をジッと見つめる幾つもの光。
「行け。」
かーくんと呼ばれる男がそう言うとその光は暗闇から飛び出した。
「そこのおっさんとお姉さん。」
飛び出した光は男と女を囲いニヤニヤと笑う。
「なんだ君達!邪魔だ。退きなさい。」
男は女を自分の腕の中へ収めると囲む男達に声を荒らげた。
女は震え男の胸へと顔を埋める。
男達はそんな二人を見ても尚動くこと無くニヤニヤとしている。
囲まれる男女の隣を足早に過ぎ去る者、遠くから写真を撮る者、その場から離れる者はいたが、助けようとする者は誰一人としていなかった。
「何が目的だ?金か?!」
男は胸ポケットから財布を取り出し叫ぶ。
「何ぃ?お金くれるのおじさん?」
「そうやって女も買ったんだろうなぁ!」
「金がなきゃ何も出来ない哀れなおっさん。」
男達の笑い声は辺りに響いた。
男は眉間に皺を寄せ面倒臭そうに財布の中から札束を取り出すと、地面へと投げ付けた。
「これでいいだろう!早く退きなさい。」
男が投げ付けた札束を男達の一人が手に取り数え始める。
「財布の中にこんなに入れてるの?おっさん正気?」
数え終えた男はニヤニヤと笑いながらそれを他の男へと渡す。
受け取った男は黒いポーチへその金を入れ、胸ポケットへと直した。
「もういいだろう?通してくれ。」
男達は顔を合わせ「どうぞ。」と道をあける。
男は女の背を撫でると「行こう。」と声を掛け、二人は男達の間を通り過ぎて行く。
男達はそんな男女の後ろ姿を見送る。
「リーダーに報告だ。」
男達の一人がそう言うと次々と暗闇の中へと姿を消して行った。
金を拾い数えた男と、それを受け取った男が皆の後を追う時、男が振り返り大きな声で叫んだ。
「ゴミはゴミらしく端で固まって生きていればいい!もう二度と私達の前に姿を現すなよ!」
男は叫び終えると満足気に女と共に店の中へと姿を消した。
男の言葉を聞いた二人はニタリと笑う。
「あーあ、黙って大人しくしてりゃこれで終わってたのに。」
「自ら地獄への道を選びやがった。ご愁傷様。最後の晩餐楽しんでね、おっさん。」
男二人はクククッと笑うと暗闇の中へと姿を消した。
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「お疲れ様でーす!」
暗闇を抜けチカチカと灯る街灯の下にいる男集団に声を掛ける。
男達はヘラヘラと笑いながら二人を見る。
二人は男達の間を抜け先に居る二人の男の前で頭を下げた。
「輝血さん、懍さん、お疲れ様です。回収完了しました。」
一人の男は胸ポケットから黒いポーチを出し頭を下げ差し出す。
「サーンキュ!どれどれ、幾ら入っているのかなぁ?」
緩いパーマがかった白髪の男がポーチを受け取り中を確認する。
「うっわ、分厚いねぇ。」
ニコニコと笑いながら中身を取り出し後ろに座る黒髪の男に見せる。
黒髪の男は長い前髪の隙間からソレを見るとニヤリと笑った。
「150、位か?」
黒髪の男は立ち上がると白髪の男の肩に顔を置き舌舐りをした。
「はい。150万丁度です。」
頭を下げていた男二人は顔を上げ姿勢を正す。
「ふぅん。こんな大金、あっさり渡してきたんだ?」
黒髪の男は生気のない目で二人をジッと見た。
「は、はい。ですが……その……。」
二人は目を合わせる。
「なぁに?何かあったの?」
白髪の男はポーチの中へ金を終い黒髪の男に渡しながら尋ねる。
「実は帰り際に……。」
二人は帰り際に男に言われた言葉を伝えた。
話を聞いた黒髪と白髪の男は不敵な笑みを浮かべる。
「行くぞ。」
黒髪の男がボソリと呟くと周りにいた男達は歓喜し、再び暗闇の中へと姿を消した。




