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アリ先輩とキリギリス後輩

アリ先輩とキリギリス後輩(オフィス編)

作者: 柳屋

挿絵(By みてみん)


アリ「キリギリス君、またソファで寝ていたのか?まさか勤務中の椅子を“仮眠モード”に改造したのは君じゃないだろうな?」


キリギリス「おっと、バレた?いやいや、これは効率的なエネルギーチャージってやつでさ。ていうか、アリ先輩のデスク、いつもピッカピカで眩しいっすね!もしかして、業務時間中に雑巾がけとかしてんすか?」


アリ「違う、これは“静電気対策”だ。キーボードがパチパチ言い出したら、集中できないからな。で、君の“エネルギーチャージ”、何ワット分くらい成果に変換されてるんだ? 残業ゼロで成果ゼロって、ある意味エコだよな」


キリギリス「いやいや、そこですよ! エコは大事! 僕のエネルギーチャージは、未来への投資なんで。いつか来る大逆転ホームランのために、今はバットを温めてる状態っす。アリ先輩みたいにコツコツヒットを打つのもすごいけど、たまには満塁弾も見てみたいでしょ?」


アリ「バット温めて三年、試合出場ゼロの人に言われてもな……。せめて次のプレゼン資料くらいはスイングしてくれよ。こっちは三回表くらいから一人で投げて打って走ってる気分なんだが」


キリギリス「え、もう三年も経ちましたっけ!? 時が経つのは早いなぁ…。でも見ててくださいよ、次のプレゼン資料は僕が奇跡の逆転満塁ホームラン、じゃなくて、逆転一発OK資料にしちゃいますから! その代わり、もし通ったら僕の『残業ゼロ伝説』を社内報に載せてくださいね! 表紙は僕がソファで寝てる写真で!」


アリ「その写真、すでに『勤務態度に関する相談』の資料に使われてるけどな…。まあいい、そこまで言うなら君のホームラン、期待せずに見守らせてもらうよ。で、締切、今日の17時だけど——バット温めてる場合じゃないよな?」


キリギリス「え、マジっすか! それはまずい! 『残業ゼロ伝説』が一転、『社内報に載る前にクビ伝説』になっちまう! よし、分かりました! 今日はもうバットどころか、グローブもスパイクも全部投げ捨てて、キーボードかっ飛ばします! 集中力、MAX! 残業ゼロで、締切ダッシュ! アリ先輩、僕の華麗なスライディングを、見届けといてくださいね!」


アリ「そのスライディング、最終的に“保存せずに終了”だけはやめてくれよ? 君の“勢いだけのプレイ”、過去にも何度かエラーカウントされてるからな。……でもまあ、少しはやる気になったようで何よりだ。じゃあ、俺は先に資料の体裁整えとく。君の“全力疾走”、最後にページ番号ズレて台無しにならないことを祈ってるよ」


キリギリス「が、頑張ります! ページ番号がズレるなんて、そんなおっちょこちょいなミスはもうしません! 今回は完璧なスライディングをお見せしますから! …って、あれ? そういえば、この資料、ページ番号いるんでしたっけ…?」


アリ「いるに決まってるだろう。というか、今その確認してる時点でスライディングじゃなくて“コケ芸”に片足突っ込んでるぞ。……よし、もうこうなったら、資料の表紙に“全ページ番号付き”って誇らしげに書いておけ。今度こそ、“伝説”になれるかもしれないぞ、君の方向性次第で」


キリギリス「なるほど! 『全ページ番号付き』! それは良いですね! 僕の不屈の精神と、アリ先輩の鬼のようなツッコミの結晶じゃないっすか! よし、これで行きましょう! 今から猛烈な勢いでページ番号を振っていきます! アリ先輩、僕の伝説を、その目でしっかり見届けてくださいね! あ、でも、もし伝説になれなかったら、そっと忘れといてください!」


アリ「安心しろ、伝説になれなかったら、俺のToDoリストの“黒歴史フォルダ”にしれっと収納しておくよ。まあ、逆に言えば、成功したら“珍事”として永久保存だけどな。……さあ、そろそろ伝説の一ページ目、ちゃんと“1”って入れとけよ?」


キリギリス「えへへ、バレました? でも、寝落ちからの覚醒も、立派なパフォーマンスですよ! なんなら、寝てるときにアイデアが降ってくるタイプなんで! …って、冗談ですよ! もちろん、17時には完璧な資料とシャキッとした僕をお見せしますから! アリ先輩も、コーヒーで一息入れたら、もうひと踏ん張り頑張ってくださいね! 僕の“寝てない伝説”、しかと目に焼き付けておいてください!」


アリ「よし、その意気だ。“寝てない伝説”、しかと見届けよう。ただし、“締切に間に合った伝説”の方が、部長ウケは確実にいいからな。……さて、午後のオフィスに響くはずの奇跡のメロディ、ちゃんと流れてくることを期待してるよ。じゃあ、伝説職人、スタート地点は越えたな」


キリギリス「はい! もちろん、『締切に間に合った伝説』も同時に作ってみせます! なんなら『完璧すぎて部長も泣いた伝説』まで狙っていきますよ! アリ先輩、僕の集中力とスピードの限界突破、見といてください! コーヒーブレイクが終わる頃には、きっとオフィス中に僕の伝説が響き渡ってるはずです! …あ、でも、もし静かだったら、それは僕が光速で作業しすぎて音が聞こえないだけなんで、安心してくださいね!」


アリ「わかった。“光速すぎて無音”も承認しておこう。ただし、資料提出が“光速で吹っ飛んで未提出”にならないようにな。……じゃあ、俺はそろそろ作業に戻る。伝説ってのは、語られるより前に、まず記録されるもんだからな。君の名が、議事録に載る日を楽しみにしてるよ、キリギリス君」


キリギリス「はい! 『光速で吹っ飛んで未提出』だけは絶対に避けます! 僕の資料は、しっかりアリ先輩のデスクに着地させてみせますから! 議事録に僕の名前が載る日……想像するだけでワクワクしますね! アリ先輩、僕の集中力の臨界点突破、しかと見届けていてください! ……あ、そういえば、議事録って、誰が書くんでしたっけ?」


アリ「……お前だよ」


キリギリス「えっ! 僕ですか!? まさかのセルフ議事録! それも伝説の一つってやつですかね!? なんか、急に責任重大な気がしてきました……。でも、やります! 僕のタイピングスキル、議事録でも火を吹かせますから! アリ先輩、僕の多才な伝説、期待しててくださいね!」


アリ「よし、その意気だ。議事録で伝説を残すなんて、なかなか渋いじゃないか。タイトルは任せるけど、“奇跡の寝てない男”とかはやめとけよ? 社内報に載った瞬間、全社員が深読み始めるからな」


キリギリス「なるほど! 『奇跡の寝てない男』は確かに深読みされそうですね…。じゃあ、もっとこう、シンプルに、『業務効率化の権化、現る!』とかどうでしょう? これなら、アリ先輩の指導のおかげってこともアピールできますし! ……あ、でも、議事録って、そんなに大袈裟なタイトルつけるものでしたっけ?」


アリ「違う。議事録のタイトルは“○月×日 部内定例ミーティング議事録”だ。これ以上でも以下でもない。君のキャッチコピーはせめて、パワポの末尾スライドでやってくれ。“業務効率化の権化”は、フォントサイズ8ptでそっと添えとけ」


キリギリス「がーん! なんてシンプル! 議事録って、そんなにストイックなんですね…。僕のキャッチコピー魂が疼きます…! 了解しました! じゃあ、『業務効率化の権化』は、アリ先輩の仰る通り、パワポの最後に8ptでそっと添えておきます! でも、きっとそこから、伝説が始まるんすよ…フフフ。よし、じゃあ、僕は議事録のタイトルを『○月×日 部内定例ミーティング議事録』に設定して、いざ、キーボードを叩きまくります!」


アリ「完璧だ。伝説は、まず“テンプレ通りに始められる勇気”から生まれる。……よし、キリギリス君、そのまま突き進め。議事録も資料も、きっちり仕上げたら、次は“伝説の定時退社”に挑戦だ。夢は大きく、現実は締切通りにな」


キリギリス「おお! テンプレ通りに始める勇気! かっこいい響きっすね! アリ先輩、ありがとうございます! 僕、もう止まりませんよ! 議事録も資料も、光速で仕上げてみせます!


そして、『伝説の定時退社』! いいですねぇ! それこそ僕の目指す最終目標っす! 夢はでっかく、現実は…うん、締切通りに!


よし、アリ先輩のその言葉を胸に、僕、今から伝説クリエイターになります! キラキラの未来が、僕を待ってるぜー!」


アリ「いいぞ、そのテンションだ。未来がキラキラして見えるうちは、まだ燃え尽きてない証拠だ。じゃあ俺もそろそろ仕上げに取りかかるよ。午後のオフィスに、“静かなる集中”と“うるさい伝説”が同居する、今日もいい日だな」


──終──


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