67:妹に渡された暗号を解読しました
アルヴィド(ベルの侍従)
ラウラ(アスタの侍女)
目を覚ますと、まだ窓の外はうっすらと明るかった。ぼうっとしたまま身を起こすと、すっと水が差しだされる。
促されるままに水飲むと、逆側からは手が差しだされた。ぼんやりしたままの頭では、それがなにを意味するのかがわからなかった。なに気なく自分の手を乗せてみると、ぺしっと手ひどく振り払われた。
ぱちぱちっとベルトルドは瞬く。急に霧が晴れたような気がしたベルトルドの傍らには、目くじらを立てたラウラがいた。
「お嬢さまのウィッグをお返しください」
そう言われてようやく頭が覚醒する。ルードヴィクに貴族街の家へと送ってもらい、頭を整理するためにも一眠りすることにしたのだ。
「よしなさい。ベルトルドさまに失礼ですよ」
たしなめられて、ラウラは渋々手を引っ込める。そこで初めて水を差しだしたのがアルヴィドだと気づく。不思議に思って見あげると、侍従は思わしげに顔を曇らせた。
「ルードヴィクさまにご連絡いただいたのです。ご気分はいかがですか?」
大丈夫だよと答えて、紙袋がなかったかと訊ねる。ウィッグを預かってくれたアイナが、紙袋に入れておいてくれたのだ。アルヴィドが持ってきてくれた紙袋をラウラに渡す。黒髪をだして確認しているラウラを眺めていたベルトルドは、急に青褪めた。
慌てて腰に手をやる。腰回りに膨らんだ感触がなくて、自分がジャケットを着ていないことに気がついた。部屋の中を見回したベルトルドは、サイドテーブルに小さな包みを見つけてほっと息をつく。
「よかった、ほとんど壊れてない」
包みの中にはほとんど崩れた欠片がなくて、ベルトルドは胸をなで下ろす。
ルードヴィクに送ってもらって帰りついたとき、執事がかいがいしく世話をやいてくれたおかげだ。疲れていたせいでよく覚えてないが、上着を脱がせてくれた記憶はある。ジャケットのままベッドに潜り込んでいたら、確実に崩れ果てていたところだ。
テーブルへと移動して、準備してもらった皿へとアストリッドからもらったクッキーを広げた。
「3分の1以上欠けているのはダミーでしたよね?」
三人で皿の中の文字型のクッキーをのぞき込んだ。文字のクッキーを使った暗号は、昔アストリッドが保護者にバレずにやりとりをするために考えたものだ。とはいえ、子どものころのお遊びだ。大した情報量のやりとりができるわけでもない。
話しながらアルヴィドが、欠けたものを端へとよけていく。
「うん。小さい欠片は、壊れただけの可能性があるので、他のと組みあわせてみる」
「今回はどれもキレイなので大丈夫なようです」
一つずつ摘まんで確認しながら、ラウラは欠けたものを別の皿へと移す。
その作業をよけられたダミーを食べながら、ベルトルドは見守る。残ったのはたった数文字だけで、他に組み合わせようもなく、ベルトルドの口に消えかけたダミーへと視線が集中する。
残ったクッキーでつくられた単語があまりにも非常識だった。だからダミーとして処理したものの中に必要だったものが残っていたのではないかと、二人は疑っているのだ。
それくらい残された文字クッキーがつくり出した単語は予想外だった。
「ユスって……やっぱりユスティーナさまのこと――だよねぇ?」
ベルトルドは困惑して眉を垂らした。
今回短くてすみません。短すぎるのであとでもう一本あげようと思ってます。
次からはもう終わりの始まり(言ってみたかったw)です。まだ鋭意リテイク中で、投稿頻度や時間が乱れるかもしれません。なるべく毎日投稿できるように頑張ります。
誤字報告ありがとうございます。
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