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王子と聖女と悪役令嬢ときどき僕~王子には僕が溺愛している妹に見えるようです~  作者: 藤井めぐむ
3章

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43/80

43:王子は相変わらず忙しそうです2

ルードヴィク・クロンバリー(双子の従兄/司令官補)

デニス・アルデバリ(食堂前で騒いでた後輩)

アンドレ・バーリ(殴られたときに揉めてた先輩)


本日2本目です

 帳面を抱えて足早に近づいてきた警邏隊の主任は、ルードヴィクと並んでいるベルトルドの顔を見て驚いた。今日もう何度目かのやりとりを無難に答えて、ルードヴィクとともに帳面を覗き込む。

「多いな」

 それはここ最近の街中で起こった貴族との揉めごとの記録だった。ルードヴィクが顔をしかめてページを繰る。




「それに内容がセコいな。なんだこの、隣の平民よりジュースの量が少ないだの、欲しいと言ったのに平民が譲ってくれなかっただの、正気か?」

「最近はもう、理由はなんでもいい感じありますからねぇ」

「どういうことだ?」

「なんていうんですかねぇ、もう、ただ文句言いたいだけか騒ぎ起こしたいだけかというか」




 主任の言葉に、ベルトルはぽんと手を打った。

「なるほど。うん確かにそんな感じです。理由はなんでもいいんだ」

 今日の件にしても、今まで話したこともない貴族の先輩から声をかけられ、不思議に思ったのだ。

「この間言っていた。真面目そうなタイプが多いっていうのも相変わらずか?」

「真面目っていうか、正確にいうなら、きっちりした感じーーというか」

 ねぇ? と意見を求められて、そうですねとベルトルドは頷く。今日訓練場であった先輩も、きっちりした人に見えた。




「手間をとらせて悪かったな。この帳面は借りていっていいか?」

 快諾した主任と別れて、ルードヴィクは屋台で売ってるパンを買うと、一つをベルトルドに渡す。甘めのパンに、塩味の効いたハムとチーズ、それから野菜がバランスよく挟みこんだものだ。ベルトルドが口の中の傷に染みないかとそろそろと食べていた間に、すでに食べ終わったルードヴィクが口を開く。

「露払いの見学はなしになった」




「昨日のあれで?」

 あくびを噛み殺しながらルードヴィクは頷く。昨日の今日だ。対応に追われて、寝ていないのかもしれない。

「寮の中で告知を頼む。兵役前は自室待機。一年組は第三連隊駐屯地内にて命令があればすぐ動ける用意して待機、二年組は従来通りの行動になる。夕方には告知用の紙面を持たせるから、兵役担当者と手分けして、寮や基地の中に貼ってくれ」




「ようやく決まったんだね、担当さん」

「もめまくった末にな。あとで紹介する。貴族関係では助けてやってくれ」

「露払い……貴族くらい入れるかなと思ったよ」

「王都に帰ると、すぐにスタンピードを脅威を忘れるスポンジ頭に、恐怖を少しでも焼きつけとおかないという意見もあったがな。被害者が出ていちゃもんをつけられるのも、対応に時間を割かれるのも今の状態じゃ煩わしいからな」




 そっか……と頷いて、ベルトルドは聖木へと視線を流した。

「でも、少しわかる気はするよ」

「ん?」

「だって、領地にいれば年に何回か魔物が退治されたって話を聞くだけで、あんまり実感がないっていうか」




 どこにいても聖木の傘の下だなんて、童謡のフレーズがあったけど、でも目に見えなくなると人は忘れてしまう。ベルトルドなんて、祖父が軍のトップで、前回の狂い咲き攻防戦の立役者の一人とはいえ、領地にいて祖父と離れていた間はスタンピードのことなんて、ほとんど思い出しもしなかった。

「――……そうだな」

 ルードヴィクが遠い目をして黙り込む。ベルトルドも黙って残りのパンにかじりつきながら、見るでもなく馬車が行き交う通りを流れていく人々を目で追っていた。




 あ、と声をあげて、食べかけのパンをルードヴィクに押しつけて走り出す。

「デニスくん!」

 馬車の音にかき消されて声が届いてなかったのか、肩をつかまれたデニスはギョッとして振り返った。

「あのあとちゃんと、シェフさんは到着しましたか?」




「なにを……」

 目の前に立ったベルトルドを見下ろして、いぶかしげな顔で言いかけた彼はハッとしたように口を閉ざした。

「あ、ええ、まあ……」

「おい、行くぞ」

 目をそらして曖昧に答えたデニスの腕を、連れが引いた。目を向けると彼の隣にいるのは、朝訓練場で騒ぎになったきっかけのアンドレだった。知り合いだったのかと、きっちりした印象のある二人を観察する。




 デニスは今日もクラバットを巻き、着替えたアンドレもシャツのボタンをきっちり止めていた。

「先輩、こんにちは。先輩にお怪我はありませんでしたか」

「……殴られててなにヘラヘラしてんだよ」

「はあ、すみません」

「おまえの!」

 ぐいって胸ぐらを掴んまれて、ぐいと引き寄せられる。目の前の険しい顔を見つめて、ベルトルドはぱちくりと瞬く。




「そのヘラヘラしたとこがムカつくんだよ」

「はあ、そうは言われましても……」

 朝は心配してくれたと思ってたのに、むかつくと言われて困り果てる。ヘラヘラしてるつもりなどなかったがそう思われるような言動をとっていただろうか。

 ヘニョリとベルトルドは眉を垂らす。ますます顔を険しくしたアンドレが手を振り上げたとき、おまえ、と離れたところから低い声がかかった。




「手を出すんなら、さすがに俺も黙っててはやれんぞ。わかってるな?」

 第三者の声に振り向いたアンドレは、ルードヴィクを見つけて奥歯をかみしめる。先輩、とアンドレの袖を引いたデニスを見やり、もう一度ルードヴィクに目を戻した。舌打ちしてアンドレは突き飛ばすようにベルトルドから手を離した。

 後ろによろめいたベルトルドは、不意にかくんと膝が抜けて、ぐらりと後ろへと体が傾いだ。

「……ベル!」




「先輩!」

 後ろで馬車の音がしていた。切羽詰まったルードヴィクの声が聞こえる。目を瞠るアンドレの顔、そしてデニスの伸ばされた手を見つめ、少し前にも同じことがあったなと思い返した。

ようやく明日はシグが登場です

いちゃ甘――になってるはず(笑)


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