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王子と聖女と悪役令嬢ときどき僕~王子には僕が溺愛している妹に見えるようです~  作者: 藤井めぐむ
2章

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17/80

17:王子のお相手は聖女でした

本日2本目。

 本人は至って軽く話していたけれど、アストリッドが追い詰められていることに気づけなかった自分は不甲斐なかったし、話してくれたのがうれしかった。気持ちばかりで何をしてあげられるかもわからないが、彼女の重荷を分かちあいたい。一緒に背負いたい。

 願わくば彼女にもそういう相手がいることを願う。




 ぼろぼろっと大粒の涙がこぼれて、ベルトルドは少し安心する。きっと彼女にもそういう相手がいるのだろうと思えたから。

「ベル!」

 辺りはすっかり暗くなっていて、いつの間にかぼんやりと発光していた蓄光石の街灯の下でアストリッドが手を振っていた。手を上げて答えると、彼女は一緒にいた女の子たちに声をかけてベルトルドの元へ足早にやってきた。




「どうしたの? こんなとこで」

「えと……いや、うん」

 目を戻したときにはニーナはいなかった。手のひらに目を落とせば、ハンカチの上に若草色のリボンはのったままだった。周囲を見回しても彼女はいなくて、ハンカチは丁寧にたたんでポケットにしまった。

「アストリッドこそどうしたの? 寮にいるなんて珍しいね」

「最初に集めた人数じゃ足りないって言われてさ、追加で人を集めてるんだ。今からアロルドおじさまのとこ」

 自身の肩越しに背後を示したアストリッドに、そっか、とベルトルドは頷く。聖女さまの護衛だ。




「ごめん。巻き込んで」

 顔をのぞき込んできたアストリッドに、ベルトルドはぱちくりと瞬く。伸びてきた指に目の下を辿られて、ベルトルドは苦笑いする。

「くまができてる」

「なに言ってるの。今まで言ってくらなかった方がつらいよ――いつからなの?」

「子どもの時、熱出して寝込んだ――あの時から。聖木を見て思い出したんだ」

 そんなに前からだったのかと驚く。




「まあ、思い出したって言っても最初は実感がなかったんだ。記憶の中に知っている光景があったけど、まさかって思う気持ちが強くて……。王子を避けてたのだって最初は危ない物には近づかないくらいの気持ちだったけど」

 アストリッドはベルトルドの肩口に顔を埋めて溜息をついた。

「今でも気のせいだと思いたい気持ちはあるんだけど、この間から何度か聖女を見かけたから」




「聖女さま?」

 そりゃ聖女殿で聖女の護衛をしているわけだから、彼女を見かけるのは当然だろうとは思う。ただ急に、今まで話に出てこなかった人物が出てきて頭が混乱した。

「そう。王子の真実の愛の相手ね」

 シグヴァルドの運命の相手は、アストリッドの話の流れからてっきりニーナだと思い込んでいたのだが、違ったのだろうか。




 アストリッドの背中をポンポンと叩きながら、あの日聴かされた情報をベルトルドは頭から引っ張り出す。複数の運命の相手がいるという、王子の真実の愛の相手で、アストリッドがいじめて返り討ちに遭うという相手。

「君だって真実の愛のお相手候補なんだって言ったよね?」

 運命の相手ってそんなに複数いていいものだろうか。それで真実の愛とか言われても、ベルトルドにはどうもよくわからなかったのだが、ますますよくわからなくなってきた。




「それは聞いたけど……ちょっと歳が離れすぎてない?」

 むむとベルトルドの眉間に力がこもる。

 肖像画で見た姿を思いかえす。

 聖女アグネータといえば、前回の狂い咲きの時にはもう成人していたはずだ。まぁ年齢で恋するわけではないからそういうこともあるかもしれない。でも年上のお姉さまが、一五年下とはいえ成年(シグヴァルド)ならまだいいとしても、三〇近く離れている未成年と真実の愛とか言いだしたら、ベルトルドはまだしも、第二王子(イェルハルド)の方は相当の反発を食らうのではないだろうか。




「え? 歳? なんで? 同い年でしょ? んん、王子との差ってこと?」

「だって、聖女さまって御歳四〇は越えられてるはずでしょ?」

 伏せていた顔を上げたアストリッドが、鳩に豆鉄砲を食らった顔を晒し、それから長いため息をついた。

「ごめん、それじゃ話が変わっちゃうから。違う、新しい聖女」

「――……は?」




 てへっと茶目っ気たっぷりに笑って見せたアストリッドに、ベルトルドは愕然とした。絶句したまま妹を見つめていると、離れたところから声がかかる。

「アストリッド! 時間大丈夫なの?」

「ごめん! すぐ行く――あの子だよ、ほら、『世界に一番愛されてる子』。今度、運命の相手が一堂に会するイベントがあるはずなんだ。詳しいことはまた今度ね」

 嵐のように去って行ったアストリッドの背中が夜闇に消えていくのを見つめながら、ベルトルドはただただ呆然と立ち尽くした。

謝りながらも負担をかけていくスタイルなアスタ……


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