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ログアウト不能VRMMOデスゲームの運営さん ~デスゲームがバグとうっかりのせいで台無しなんだが?

ある日、仲の良い技術者達が集まって酒を飲みながらこんな会話をしていた。

「なあなあ、昔ネット小説でVRゲームでログアウト不能のデスゲームものって良くあったじゃん? あれって技術的に無理だよなー」

「あーSA◯とかな。ログアウト不能はともかく人間殺せるようなもん家庭用ゲーム機に組み込めねーよw」

「今のVR機ってあの作品群のせいでガチガチに安全装置で固めてあるらしいぜww 外部から強制ログアウト機能はそれで出来たって開発者が言ってたw」

そんな会話でひとしきりゲラゲラ笑ったところでVR関係の技術者がふと語り始める。

「そういえばVRものでお約束の思考加速機能、あれ最近開発出来たぞ。理論上は無限に加速出来るけど実際はハードの演算速度の関係で10万倍が限度のようだな」

「十分過ぎるわw てかそこまで加速させると脳の負荷がヤバくないか?」

「装置に繋げたマウス1時間で死んだwww」

「ちょw、おwまw、やっぱりじゃねぇかw」

「……おいまて、つまりその機能を使えばデスゲーム作れね?」

「「「…………!!」」」

さて、この技術者達、実は世界最先端の技術を開発する超優秀な連中であった。しかし彼らは好奇心に任せて暴走しがちで、しかも倫理観が欠如していると言う極めて危険な性質の持ち主達だったのである。そのくせ開発した技術の特許とかで金に困ってないどころか余っているくらいで、大抵の事を実現出来る財力もあった。

つまり何が言いたいかと言えば。

この瞬間、ログアウト不能デスゲームの開発が決定したのである。


そんなこんなで1年後。ここはVRのゲーム管理用空間。

「ついにサービス開始だ!」

「「「おー(パチパチパチ)」」」

アホどもが無駄に情熱を傾け、ついにログアウト不能デスゲームがサービス開始されてしまった。もちろん表向きは健全なVRMMOとしてリリースして獲物となるプレイヤーを呼び込んでいる。ちなみに技術力と予算は無駄にあったのでグラフィックは現実と見間違える程、食べ物は味がちゃんとするし、NPCは中に人が入っているのではと勘違いしそうな程自然に振る舞うと言うクオリティ。それを処理するためだけに量子コンピューターを実用化させると言う、何やら人類史に残る偉業がしれっと行われていたが、本人達が発表していないので世間では誰も気付いない。

βテストでの反応は上々、「現実がフィクションに追い付いた!」と評判で、初期ロットは完売。サービス開始直後に購入者の95%がログインした。まあ量子コンピューターにとってはその程度のサーバ負荷はあって無きが如しなのだが。

「さーて、ではそろそろデスゲーム機能を有効化させねばな。おっとその前にワールドアナウンスでお知らせだぁ(ニチャァ)」

「ヒュー、ゲスい顔してるー」

「表でその顔したら通報されまっせーw」

プロジェクトリーダーのVR技術者の男が事前に設定されていたシステムを起動。

これによりプレイヤーの思考は5万倍に加速され、ゲームクリアしない限り脳にかかる負荷で2時間程で死亡してしまう状態に。さらにキャラクターが死亡した場合は10万倍に加速される五感が封じられた空間へとご案内。ここに入れば現実時間で1時間程で死亡する上に、身動き一つ出来ず一切の感覚がなくなるので程なく精神が壊れると言う悪辣過ぎる仕様である。

「あ、アナウンスで動揺して死亡空間行きになったヤツおったw」

「マwジwかw」

それを笑いものにするとか流石は倫理観が死んでると評判の連中である。

しかし、彼らが笑えていたのはそこまでだった。

「……え? おいおいおいおい! 死亡空間から脱出したぞコイツ!」

「はあっ!? 外に出られるルートとか無いしそもそも動く事もスキルを使う事も出来ないんだぞ!」

「おいログどうなってる!」

ワチャワチャしながら調べる事しばし。

「あ、ウィンドウから直前にいた町に戻れる帰還(リターン)機能使ってる……」

「いやウィンドウコマンド使えるんかい! おい、死亡空間内でのウィンドウ使用不可を設定するぞ!」

「無理だ! メンテや設定変更しようとすると巻き込まれる可能性のある範囲内のプレイヤーは安全の為に全員ログアウトさせられる設定だ! そして全PCが死亡する可能性がある以上全プレイヤーがログアウト対象になる! コイツはゲーム機本体の安全装置だからこっちじゃどうにもならん!」

「ファッキン安全装置!」

どうやらログアウト不能デスゲーム対策の安全装置が良い仕事をした模様。

「うわ、ゲーム内掲示板で情報共有された……」

「スゲー草生えてるぞ……」

「そりゃ逆の立場だったら俺らも笑うわ」

プロジェクトリーダーは頭を抱えていたが、やがて顔を上げ憎々し気に吐き捨てるように言った。

「まだだ! まだ終わらんよ! ゲームクリアしない限りログアウトは出来ん! 果たしてプレイヤーどもにゲーム内時間十年少々で我々の用意したグランドストーリーをクリア出来るかな!」

そう、リーダーはモンスターの強さ、レベルアップ速度、謎解きの難易度、それらを考慮してタイムリミットまでにクリア出来るかどうかギリギリになる設定でこのゲームを作っていたのである。

だがしかし。

「……あっ」

「おいなんだその不安になる「あっ」は」

リーダーの言葉に声をあげた男が答える。

「……ステップ系の回避スキル発動中に攻撃の当たり判定が無くなって無敵状態になるバグが発見されて掲示板で共有されてます……」

「OH……私もよくよく運の無い男だな……」

「うわしかも回避中に回避しながら攻撃スキル発動出来るバグもあるみたいだぞ! これだとスタミナ続く限り無敵状態で攻撃しまくりだぞ……」

「ステップ系回避スキルにリキャスト設定していればーっ!」

「跳び退いて避けるだけの行動にリキャストなんておかしいって言ったのお前だろーが!」

「OKOK、BE COOL、クールになるんだ俺……挽回するチャンスはまだある。そんな戦闘スタイルすぐにスタミナ切れになるはず……!」

「え! もうSTリジェネポーションが作られた!?」

「アカーン!!」

「おいちょっとまて、あれって後半の秘境でしか材料を採取出来ない設定……最初の町の近くの森に生えてんじゃん!? 何で!?」

「あああ! テストプレイ時に近場で全生産素材を取れるようにしてた設定が有効化されてるーっ! 誰だ触ったの!」

「あ、やべ最終チェック時にミスクリックしてた」

「「「てめぇかよリーダー!!!」」」

「認めたくないものだな……自分自身の若さゆえの過ちと言うものを……で、修正は?」

「「「無理ッス」」」

「………………よし! 撤収!」


こうして世界初となったログアウト不能デスゲームは死亡者0でその幕を下ろした。

だがその間抜けな首謀者達はネット上のペーパーカンパニーを通して海外の複数の国を通じて手続き等を行うという、そのうっかりっぷりに反した用心深さを見せており、捜査の手がその存在の尻尾を掴む事は遂に出来なかった……

いずれ再び、奴らの起こす騒ぎに人類は巻き込まれる事になるだろう。とは言えこれだけの大失敗を仕出かしたのだ、流石にしばらくは大人しくして……


「おい! 遂にVRでS◯Xの感覚を再現出来るようになったぞ!」

「マジかよリーダー一生ついてくわ。とりあえずキツネ耳のじゃロリ巫女実装ヨロ」

「ついでに脳を刺激して自由にドーパミンやらエンドルフィンやらの快楽物質を分泌させる技術も出来た訳だが」

「え、マジ? 電子ドラッグとか出来ちゃう感じ?」

「お、じゃあちょっくらバラ撒いてみる?」

「ならせっかくだしC国とかR国とかの当局のサーバをクラックしてそっから別の国にバラ撒いてその国の陰謀って説を演出するってのはどうだ!」

「さすがリーダー! 俺達に出来ない事を平然とやってのけるぅっ!」

「そこに痺れる憧れるぅっ!」

「嘘つけ、お前ら絶対似たような事やらかすだろw」


…………駄目だこりゃ。

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