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ヘッドホンガール1
黄色い線を跨いで乗り込んだ。
ぼうっとした頭をそのままに私は吊り革にもたれる。
窓から差し込んでくる強い光に顔を顰めながら立っていた。
ヘッドホンからヒットチューンが流れている。
ヘッドホンだとかイヤホンの最適な音量がよくわからない。
他人がどれくらいの音量で聞いているのかなんて知らないし、
お医者様が推奨するデシベルを調べる気にもなれない。
ひとまず、満足感のある音量にすれば
電車の走行音がわからなくなる。
窓からの景色とひどい揺れが、
高校に向かっていることを知らせていた。
全くもって不愉快なことだと思う。
日々億劫だった。
毎日繰り返すにしてはちょっと難しい。そう思うのだ。
今日だって不幸も何も起こらないだろう。
それでも私が息苦しいのだ。
電車に乗っている時間は嫌いじゃない。
隣に立っているお婆さんが私に無関心であることを知っているから。
誰も、私を見る余裕がないことを知っているから。
私は流れに倣って爆音に委ね、陽のある方向を見ていればいい。
日陰者なのだけど。