久しぶりの我が家。
少し森に入り、人が居ないのを確認しつつ、みんなに見送られてアストロの背に乗せてもらう。
まだよじ登るのは難しいんだよぅ。
今回はネージュもアストロの背中だ。
グラシャの姿になり、大きく翼を広げたアストロは本当にカッコいい。
ドームと魔法紐は忘れずに。
「じゃーなー!」
「あいまとごじゃまちたー!」
「気を付けて帰ってねー!」
『君たちもねー』
「またにゃー」
ふわりと浮き上がる。
初動がなくても飛べるってすごいよね!
アストロの背中に張り付いて下を見下ろすと、みんな手を振ってくれてる。
わたしも、みんなが見えなくなるまで手をふりふり。
『”インビジブル” あっ、これじゃネージュが隠れない!?』
「大丈夫にゃー ”インビジブル”」
おおっ!? カモフラージュじゃないの!?
”ふふん! ラナと従魔契約したらカモフラージュが進化したにゃ!”
おおおおっ! すっごーい!
『えっ!? インビジブルって固有スキルじゃなかったっけ!?』
”知らにゃーい。 アストロのインビジブルはアストロと対象ひとりだけど、オレのはオレだけにゃ”
ふむふむ。それじゃアストロのは上位互換なのかなー?
どっちにしろこれで全員隠れられるね!
安心安心♪
『さぁ、走るよー!』
はーい!
今まで街中だったから、思いっきり空を駆ける事は出来なかったもんね。
ドームもあるし、魔法紐もある! 思う存分やっちゃって!
『わお「あっ!吠えたら消えた意味がにゃい!」』
『そうだった。へへへっ』
そんな浮かれポンチのアストロと、通常運転に見えるネージュと、お家に帰る。
久しぶりの神樹の森上空は、空気が清浄なのかさわやかだ。
これぞフィトンチッド効果。
思わず大きく深呼吸。
おお、久しぶりに見る鳥形魔物。
相変わらず大きい。
あっちでギャギャギャ! こっちでガオガオ!
街中では聞くこともなかった魔物の声。
そりゃそうか、人の暮らしに魔物肉は根付いているけれど、人の住む街では生きられない生き物だ。
街とは違った賑やかさ。
静かな湖畔の森の……って何か歌があったな。
うん、今はまったく当てはまらない。
程なく白の泉の畔に降り立つアストロ。
「ただいまー!」
『ただいまー!』
「森は落ち着くにゃー」
『ちょっと見回りしてくるねー!』
白の泉から続く小路は、以前と変わりなく。
お家の周りも、ちょっと留守にしていましたって感じもなく、以前のままだ。
……雑草とかすごいだろうなって思ってたけど、何も変わらない。
これはこれで不思議。
持ってる荷物も巾着だけなので、まずは願いの石碑(祠?)にご挨拶。
ただいま帰りました! これからもよろしくお願いします。
キラン☆
汚れているかなと思ったが、相変わらずキレイ。
まぁそれまでだって水拭きしても布巾にシミ1つも付かなかった位汚れなかったもんな。
そっと文言を確認すると、するすると文字が刻まれていく。
”おかえりなさーい! 街はどうだった? 楽しそうに見えていたけど困ったことはなかった? 次はガイズナに行くのでしょう? まだまだラナの知らない世界が広がってるわ! 楽しむのよ~♪ うむ! ガイズナは獣人が多い国で幼子には優しいからな! きっとまた楽しめるぞ!”
……うん、相変わらず全力で楽しむことを推奨している。
楽しんでますよ! いい人たちにも出会えたし。
気にかけてくれて、ありがとうございます!
そして荒れているかもしれないと、果樹園を見に行く。
……んが! こちらも変わらず。
木に生ってる実も、落ちることなく、つやつやのまま。
本当に、ここの理はどうなってるんだか……。
異を唱える気はないけどさ。
という事は、必要なものを採るだけで残りは樹上に置いておけるって事だ。
だって翌日には実が生ってる。
今まで必死に採取してたのにー!
街から帰っての新発見に、ありがたいやらがっくりするやら。
まぁ新たに採る食材は今度ロビンさんに横流ししよう。
きっとおいしく調理してくれるに違いない。
すっと風が吹き抜ける。
そろそろ晩夏。
街よりも涼しい気がするのは季節が進んだからかもしれない。
また季節渡りの精霊(秋バージョン)を見ることが出来るかなー。
前世では、残暑が厳しくて秋を感じる時間は少なかったもんね。
ちょっとおセンチなのは、周りに人が居なくなったからかもしれない。
…………むーん。
買った本でも読もうかな。
本のお供に、何かおやつでも作ろうか。
チーズと胡椒で甘くないビスケットとか、晩夏とは言えまだ暑いからヨーグルトでシャーベット?
ベリーを摘んでスコーンもいいかも。チーズケーキも出来るし。
本のお供なら、片手で食べられる方がいいか。
とてとてと家に向かう。
家に入ると、懐かしい匂い。
ほんの10日程度離れていただけなのにね。
ホコリも溜まってないし、きれいなまま。
わたしサイズの小さなソファーには、ごろりと横たわるネージュ。
正しくネコ。いや、ケットシーなんだけどさ。
こんなに家具が小さかったなんて。
静か……。
『ただいまー! ラナー! もうすぐ着くからカゴ出してー!』
おかえり! カゴ!?
『ロックバードがまた繁殖してたから狩ってきたよ! たまごーーー!』
ぶはっ!
分かったー!
アストロを迎えるために玄関から出ると、相変わらずでっかいロックバードと、ふわふわ浮いてる卵。
『ただいま! また美味しいごはん作ってね!』
うん! じゃあチーズもあるし、今日はピカタにしようか!
『ぴかた? なんだろそれ! 楽しみ!』
ふふふっ!
相変わらずのアストロに、思わず笑みがこぼれる。
卵とロックバードをインベントリにしまって、アストロの首に抱き着いて。
ふわふわの毛並みを堪能する。
『どうしたの?』
ううん。アストロ大好き!
これからもよろしくね!
『ぼくもラナが大好き! もちろんずっと一緒だよ!』
きっとこれからもアストロの純粋さに癒される。
ネージュはネコらしく。
寂しがる必要はない。
だってひとりじゃないから。
楽しむことに全力で!
「しゃて、おやちゅちゅくうよ!」
『おやつ! 何が出来るの? 楽しみー!』
お楽しみにだよー!




