ジャムとお風呂。
『それにしても、いつパンを入れたの?』
「さいしょかやはいってた」
『この家みたいに?』
「うん」
『それじゃそのパンは神様のパン……?』
ぬぉ!?
そう考えるとそうかも!
「おちおのみも、しょいのみも、おたとうのみも、かみたまのみってこと? でんでんへやないの」
『きっとそうだねー。いいモノ貰ったね』
うむ。いいモノ過ぎて有難いやら恐れ多いやら……。
解体出来るし、お肉の加工も出来るし。
他のインベントリ持ってる人も、同じように出来るのかな。
『うーん……多分、時間経過がないのは分かるけど、お肉の加工ってのはないと思うよ』
だよねー!
ありがたやー。
と、手を合わせる。
お手手のシワとシワを合わせて……
パンパン!
あ、これじゃないわな。
◇◇◇
パンを食べて、お腹がいっぱいになったら眠くなる。
幼児だから仕方ない。
うとうと……
『ラナ、眠いの?』
うにゅ……
『”ウィンド” 運んであげるから寝ちゃっていいよ』
ありが…… すぴー……
◇◇◇
はっ! ジャム!
ガバッ! と起きたらベッドの上。
横にヘソ天のアストロ。
野性味どこ行った!?
もそもそと起き出して外を見るが、まだお日様は高い位置にある。
うん、今日はちゃんと お昼寝 で済んだようだ。
キッチンに行って、いちごの入った鍋を見ると、いい感じに水が上がってる。
ぬふふふふ♪
これをコンロに掛けてっと……。
てっと……。
……お、重い。
こんな時こそ魔法よね!
”お鍋軽くなれ!”
そっと持ち上げると、まるで綿を持ち上げてるみたいに軽い!
魔法凄いな!!
壺鍋は初めて使うけど、まぁ土鍋と一緒だと思えばいいか。
木べらでざっくり混ぜたら火にかける。
ぷくぷくと煮立つと白い灰汁の泡が出るので、丁寧に掬う。
取らなくても大丈夫って聞いた気がするけど、何となく残したくないので。
部屋中に、あま〜い香り!
いちごは一旦白っぽくなるけど、ちゃんとまた赤くなる。
実を潰さないようにコトコト。
壺鍋いいな。
厚手だし、火の通りは柔らかいし、煮込みには壺鍋使おう。
コップに水を張って、ジャムをたらりと一雫。
ジャムが散らばらないで底に落ちたら出来上がり!
……鍋が茶色いから、真っ赤になってるはずのジャムの色が分からんな。
あっ! 煮沸消毒した瓶がない!
忘れてたー!
って、インベントリには時間経過ないんだよね?
なら、このまま冷ましてインベントリに放り込もう。
いちご30粒位のジャムなら、すぐに食べちゃうだろうしねー。
うん、このままごとキッチン凄いわ。
3歳児でも使える高さ。
素晴らしい!
これならお肉も焼けそうだよね!
むふふふーーん!
夜ごはんはお肉だ!
インベントリのお肉、薄切りになってるかなー?
と、確認したら、あのでっかいお肉が全部薄切りに……。
わたしの胴体位あったお肉が、輪切りの薄切りだよ?
今度入れる時は、ちゃんと切り出してからにしよう。
そうしよう。
んでも! 薄切り実験は成功だ!
あ、検証ね、検証。
薄切りお肉をインベントリのお肉の倉庫に入れ替えてっと。
いやー、スンバラシイのココロよー。
『ラナ!!』
「あーい! おあよー!」
『びっくりした、起きたら居なかったから』
くんくん
『いー匂いがするー』
「うん、じゃむちゅくってた!」
『じゃむ?』
えっ!? ジャム知らない?
『うん』
果物をお砂糖で煮詰めたヤツだよ?
『あぁ、加工品は食べたこと無かったから。果実は果実のままで食べた事はあるけどねー』
ん? パンはあるんでしょ?
『あれも木の実だし』
そうか。
料理なんてしないもんね。
と言うか、その前足じゃ出来ないよねぇ。たははー
なら夜ごはんで食べようね!
甘くて美味しいよ!
『うん! 楽しみにしてる!』
◇◇◇
わたしはお風呂に入りたい!!
『唐突だね』
ウォッシュでサッパリはするけど、お風呂を所望する!
という事で、お風呂場に来ています。
ここも子ども仕様。
バスタブが盥サイズです。
所謂ベビーバス?
お湯を張るのもすぐです。
「こえじゃーあしゅとよははいえないねぇ」
『ぼく? ぼくはいいよ。ウォッシュで綺麗だもん』
そうか。
お風呂の気持ち良さを是非に是非に! 感じて欲しかったのに。
『あったかい水に入った事あるし、知ってるから大丈夫』
あったかい水?
『うん。外の泉みたいで、湧き水があったかいの』
何ですと!?
それは温泉ではないですか!!
『おんせん? あぁそう、あったかい泉』
温泉あんのかああああああい!!
いいなぁ!! いいなぁ!!
『ここからちょっと離れてるけど神樹の森の中だから、今度連れて行ってあげるよ』
やったあああああああ!!!
温泉♪ 温泉♪
とりあえず今は盥風呂。
ぱっぱと脱いで、自分にウォッシュ。
石鹸ないから温もるだけだ。
あわあわが恋しい……。
アストロは扉の向こうで待機。
幼児だし、見られて困るこたぁないが気分的に。
ちゃぷん
「ぶへぇ……」
何だかヘンテコな事態だよなぁ。
転生? なんて、創作物語の中の話だと思ってたのに、気が付けば3歳児。
まぁ神様曰く、自力でたどり着いた世界なんだが。
しかも魔法が使えたり、翼を持ったでっかいわんこがそばに居たり。
カバンも持ってないのに、物の出し入れが出来たり。
ちゃぷちゃぷん
わたしの居た世界は、どうなってるんだろう。
両親は他界してるし、あのアパートでわたしは孤独死……?
ひょえ!!
……今更どうする事も出来ないし。
管理人さん、事故物件にしてごめんなさい。
遠くの空から謝罪します。
「よち!」
ぱしゃん!
”全身乾け”
しゅん! と髪から身体から水分が飛ぶ。
ついでにお湯を抜いて
”お風呂場も乾け”
カビ生えたら困るからね!
うふふふん♪ 魔法使えてる!
着替えて夜ごはんの支度しよっと!