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ケイティ・ポー。

 

 ギルドを出て、食事をするべくお店を探す。

 また”クマのしっぽ”に行くのかなと思っていたのだが、どうやら違うらしい。

 わたしとしては大歓迎! 他のお店にも入ってみたかったからね!


「ラナは好き嫌いなく何でも食べられるよな?」


「あい!」


『ぼくはアラクネ以外なら何でも食べるよ!』


「……アラクネって、魔物だよな? 蜘蛛型の……」


『そうそう。アラクネは美味しくなかったんだ』


「いや、普通食わねえよ? アストロすげぇな……」


『食べようと思って食べたわけじゃないんだけどねー。倒すのに噛みついたら齧り取っちゃったから食べただけ』


「お、おう……。ここいらの店じゃアラクネなんて出ないから安心していいよ」




 到着したお店の名前は”ケイティ・ポー”。

 明るい店内で雰囲気はカフェっぽくていい感じだけど、冒険者には似つかわしくないというか……。

 思わずきょろきょろと見回す。

 このお店も従魔同伴でいいらしく、あちこちに小型の魔物ちゃんはいる。

 が、本当に小型ばかりで可哀想なくらい怯えているのが伺える。


「わふっ」


 ぴゃっ! きゅいっ! ぱふん!


 ぱふん……?

 ここにも変わった鳴き声の子がいるらしい。


「あー、ちったぁ小洒落た店にと思ったんだけど、まずかった……か?」


「ラナも女の子だから、可愛らしいお店にと思ったんですけどね」


 と、苦笑するロビンさん。

 ふたりの気遣いが嬉しい。


『ぼく、怖くないんだけどな……』


 あからさまにしょぼんとするアストロ。


 アストロが、とっても優しいのは知ってるよ!

 あの子たちは初めましてだから、緊張してるだけだよ?

 大丈夫大丈夫、気にしない気にしない!



「いらっしゃいませー! あらぁ! 大きなわんちゃん!」


「あー、折角入ったんだけど、ちびっ魔物達が緊張しちゃうからまた来るわ」


「気にしなくていいですよー! うちの子もすぐに落ち着きますから」


「うちも大丈夫ですよ! ね? アスカベータ?」


「ぱふぅ」


 おお、お客さん達が優しい。


「アストロ、ここで大丈夫か?」


「わふっ」





 とりあえず席に座り……うん、子ども用の椅子はなかったので、急遽クッションを借りる。

 神樹の森に程近いこの街に子どもは少ないそうな。

 もう少し森から離れた奥に行けば、その限りではないらしい。

 まぁ、スグそこまで魔物が来るから危険と言えば危険だしね。

 そんな中でも可愛いを目指すお店って珍しいよね?


「店主が可愛いのが好きなんだってよ」


 へぇー。


「見た目は厳ついけどな」


 厳ついんだ。

 きょろりと見回すと、それでも冒険者さんは入ってる。

 意外と可愛いモノ好きな冒険者さんも多いのかな?


「お待ちどうさまー!」


 そう言えば注文、いつしたんだろう?


「あぁ、ここはワンプレート1品しかありませんから」


 って、え、このマウンテン……?

 目の前に聳える山。

 いや、量が適量なら盛り付けは可愛い。

 色彩豊かに盛り付けられてはいるが、量が可愛くないよ!?


 あぁ、だから冒険者さんの胃袋も満足させられるのか……。


「ラナの分からアストロのを分けますね」


『いい匂ーーい!! まだ!? まだなの!?』


 うぉ、しっぽ! しっぽ!


「アストロ、足りなかったら帰りに串焼きでも買って帰ろうな」


「わふっ!」



 分けてもらった料理は、ミートボールぽいのとサイコロステーキ、野菜炒めにナポリタンかな、これ。

 何かのソテーとバターコーン。

 横に添えるのはトーストしたパン。

 ……大人のお子様ランチやんけ。

 ここにエビフライとポテトフライとパンの代わりにケチャップライスがあれば完璧でしたね!

 あと旗。


 うん、味は普通に美味しい。


 他の席を見ても小型の魔獣しか居ないので、飼い主さんのお皿から分けてもらってる。

 うちとは逆だねー。


 しかし、はむはむと食べてる姿はなかなかの可愛らしさ。

 うむ、眼福眼福。


『ごちそうさまでしたー!』


 えっ!? あ、見るのに忙しくて食べるの遅くなった!


 それからは、自分がはむはむしてる所をジャスパーさんとロビンさんにニヤニヤ見られてるとは思わずに一生懸命食べましたとさ。


「ごちとーたまでちた!」




 お店を出ようとしたら、扉の前に猫。

 まるで通せんぼのように座ったまま動かない。


「あら! ケイティ来たのね!」


「にゃー」


「ごはんあげるから、こっちおいで〜。そこに居たらお客さん帰れなくなっちゃうわよ」


 クスクスと笑いながらお店のお母さんが呼ぶけれど、しっぽをてしてし床に叩きながら動く気配がない。


 ジャスパーさんに抱っこされてたのを下ろしてもらって猫の前にしゃがむ。


「このお店はね、その子の名前からつけたのよ。ケイティ・ポーって、猫の手って意味なの。猫の手も借りたい位繁盛するようにってね! ふふっ」


 ほぉー!

「ていてぃ?」


「にゃー」


「いーこねー」


 と、撫でようとすると躱す。

 むむっ!


『ラナ、その子ケットシーだよ』


「「「えっ!?」」」


 つーん! と顔を逸らすケイティ。


「どうかした?」


「あっ! いや! かっ可愛いなーと思って!」


 ジャスパーさん声ひっくり返ってるよ!


「でしょー? いつも知らない間に店の中にいるのよ。不思議な猫ちゃんよねー」


 と、お母さんは厨房に行ってしまった。

 さて。


『ぼく達に何か用事? 外に出たいんだけどな』


「……あなた達から、あの子の匂いがする。あなたグラシャでしょ? あの子はどうしたの?」


 と、小声でヒソヒソ。


『あの子?』


「真っ白なケットシー」


『ネージュ?』


「違う。真っ白なケットシー!」


 あ、個体名知らないもんね。

 でも真っ白なケットシーなんて、ネージュしか居ないはず。


「なぁラナ、ここだと邪魔になるから外に出よう」


 ごもっとも。


「あしゅとよ、おしょとでおはなちちよ」


『うん。君も出よう』


「逃げないで教えてよ?」


『逃げないよー』


 と言ってお店を出た。






 ◇◇◇


「それで? どうしたいんだ?」


「あの子に会いたいの。って、ちゃっかり会話に交じってるけど、この人間、大丈夫なんでしょうね!?」


 大丈夫とは?

 こてん、と首を傾げる。


「あの店の人間にばらさないかって事! 大事な餌場なの!」


「だいじぶ! ねーじゅのこともひみちゅまもってくえてう」


「そ、そう……。あの子、ひとりじゃないのね」


 そう言うケットシーは切なげに空を見上げた。



 

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