ドワーフのおいちゃん。
背後がザワザワとしているが、それ所ではない。
わたしはコンピールを愛でるのに忙しいのだ。
アストロやネージュの様に、ふかふかはしていないけれど、これはこれで良き。
固めの触感に滑らかな手触り。
そして少しひんやりしている。
固いせいで抱き心地はイマイチだが、触り心地はなかなかだ。
突然 べちっ! と音がしたと思ったら、アストロが唸ってた。
「いっ、いやまて! その子が心配だっただけでっ!」
「がるるるるる……」
「ギャギャギャ!!」
『こいつラナに触ろうとした!!』
「ん?」
「おおおお嬢ちゃん! コンピールの腹は触っちゃダメなんだよっ!? 危ないからこっち来な!」
「だいじぶよ?」
「そのコンピールは、お嬢ちゃんトコのか?」
「ううん。ちなう」
「ぇぇええ!? なら尚更ダメだろ!」
「ギャギャ!」
「ひぃ!」
コンピールの短い手がわたしを庇う。
アストロもコンピールも威嚇してるし。
何だこれ?
「こんぴーうたん、だいじぶよ? よちよち。あしゅとよも」
『絶対ラナには触らせない!』
「ギャ!」
ザワザワと人が集まって、ギルド前が騒がしくなってる。
あれ、これ原因はわたし?
「何事だ! って、はぁ!?」
あ、この人は……確かギルマスさん?
「えっ!? あっ! ラナっ!!」
「ギャギャ!」
「うわ! ちょっ! ラナこっち来い!」
「こんぴーうたん、あのちとはだいじぶ。こあくないお?」
「ギャ」
「ぴーすけ! お前なにしとる! その子を離せ!」
「ギャ!」
「ぴーしゅて?」
「ギャ!」
「おいたん、ぴーしゅてとあしょんでた! あいまとー!」
「はぁ!? あ、あぁ、いや、お嬢ちゃんぴーすけが怖くないのか?」
「こわくないでち。たわいい♡」
「そ、そうか……。でもな、腹はコンピールの弱点だから、触ると危ないぞ」
「しょなの? なのにたわやててくえたのね? あいまと、ぴーしゅて!」
「ギャ!」
「「…………」あー、うん。お嬢ちゃんすげぇな」
「ラナっ!!」
「あっ! よびんたん!」
「ジャスパー! これどうなってるんですか!?」
「あー、ラナとコンピールが遊んでたんだと」
「はぁ!?」
「ぴーしゅてっていうんだて! たわいいねぇ♡」
「……あー、はい。うん、可愛いですね」
ほら、ロビンさんは分かってくれた!
『ラナは何でも可愛いって言うよねー』
むっ? ジャイアントは可愛くないですよ?
フォレストバグも可愛いには入りません!
『蟲以外、か。ふふっ! でもそれがラナだよね!』
何だろう、何気に呆れられてる感。
まぁいい。元々爬虫類は嫌いではないのだ。
「それにしても、ジャスパーんとこの子か? 肝が据わってんなー」
「いやぁ……。ご迷惑お掛けしました」
「がはは! ちっとも迷惑なんかじゃねぇよ。お嬢ちゃん、ぴーすけを可愛がってくれてあんがとなー!」
「どういたちまちて?」
どっ! と笑いが起きたが、何が楽しかったのだろうか。
◇◇◇
【ジャスパーとロビン】
突然ギルドから呼び出しされて、行ってみたら、さっきすれ違ったガラガンドの工房長が居た。
「突然呼び出してすまん。こちらガラガンド工房の工房長、ガルドラさんだ」
「お初にお目に掛る。ガラガンド工房長のガルドラと申す」
「チーム白銀の翼リーダーのジャスパー、こっちはロビンです」
「初めまして」
「よろしく頼む。実は……」
と、話し始めて漸く呼び出しの意味が分かった。
この間俺が売った魔石は誰が売ったのかを確かめたら白銀の翼だったので、出来れば他にもないものか、との事だった。
「あのサイズ、あの魔力量、どれをとっても最良品! いや、もちろんあれ程ではなくても構わんので、魔石を持っていたら売って欲しい! もちろん高値で買い取る!」
「あー、っと、あれは森の恵みだったので……」
「! そ、そうか……」
と、ガックリと肩を落とした。
いやぁ……ラナが持ってるのは知ってる。
そりゃーもうゴロゴロと。
だけど、ここでそれを言う訳にはいかないので、手に入ったら声を掛けると言っておいた。
一応ラナに相談はするが、余りに出し過ぎるのも良くない気がする。
過剰に要求されるのは困るし、何より出処を突き止められたら、ラナが危ない。
まぁ、大きな工房の工房長だから、取引としては悪くない。
長自ら出向くのも好感が持てる。
よし、ラナに聞いてみよう。
「何だか騒がしいな」
「あっ、まさかラナじゃないですよね?」
「えっ!? まさかー! ……違うよな?」
「わしのトコのコンピールか? こりゃ不味い」
と、慌てて見に行ったら、あの騒動!
もーーー!!!
◇◇◇
「……ごめしゃい……」
「いや、仲良くしてたならいいんだ。……でもな、近付くなと言ってあったよな?」
「……あい、ごめしゃい……」
いやー、まさかあんなにギャラリーが居るとは思ってなかったんだってば。
ちょーっとザワザワしてるなーとは思ったけど。
そもそも弱点のお腹を見せて座るのは、敵意はないですよと周囲に知らせる為なんだって。
コンピールは小型と言えど竜種なので、ガブッと噛まれたら腕の1本も直ぐになくなるし、しっぽでなぎ払われたら骨折も有り得る。
なので飼われてる子はそう(人形座り)教育されるらしい。
「お嬢ちゃん、ぴーすけと仲良くしてくれてあんがとうなー! あのぴーすけを慣らすなんて、お嬢ちゃんすげぇな! わしにしか世話をさせないくらい気難しい奴なんだけどなー」
「しょなの? とってもいいこよ?」
『うんうん、いい子!』
「ねー」
「アストロが大丈夫ならいい子なんだろ。でもまぁ気を付けるに越したことはないからな?」
「あい。ごめしゃい」
「そーだ! お嬢ちゃん今度コンピールの厩に来てみないか? まだ数は少ねぇが、ちっこいのもいてなかなか可愛いぞ?」
ぱぁぁ!
「いくっ! ……あ……」
ジャスパーさんが気づいて頭を撫でてくれる。
「実は、俺達のクエストが決まり次第ラナはもr ええと、実家に帰るんだよ。……でも冬前にまた来るよな? ラナ」
「うんっ!」
「その時で良ければ行ってもいいすか?」
「おうおう、いつでもいいぞ! コンピールは冬でも元気だからな! しかし繁殖期じゃないから子どもには会えなくなるけど、またいつでもいいから遊びにおいで」
大きなゴツゴツした手が、ぐりぐりと頭を撫でる。
髭モジャな顔の中の瞳はとても優しい。
「あい!」
「ぴーしゅてまたね! おいたんもまたね!」
『ぴーすけまたねー!』
「ギャ!」
ドワーフのおいちゃんは、またなー! と颯爽と……もとい、カタカタドタドタとチャリオットに乗って帰っていった。
そいやー呼び出されたのはドワーフのおいちゃんの用事だったのか。って事に今更ながら気がついた。
「さて、飯食いに行くか!」
『ごはんっ! ごはんっ!』
もしかすると、街での外食もこれが最後かな? なんて思いつつ、歩き出す。




