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街の散策とコンピール。


 大体の欲しいものは買った。

 この街は冒険者の街(田舎)なので、もっといいモノが欲しかったら王都に行くしかないらしい。


 まぁいずれはお上りさんになってみるのもいいけれど、今のこの幼児サイズでは森よりも街の方が危険だと思う。

 街に出ると白銀のみんなが、口を酸っぱくして危険だから手を繋いでね、だの、スリがいるから、だの、人攫いが、だの言うんだもん。


 魔石が高額取引されて、お金持ちになっちゃったから余計に怖い。

 ま、インベントリに入れておいたら盗まれる事もないんだけどね。

 小心者なんです。はい。




「ラナ、ちょっといいか?」


「あい?」

 

「そろそろ俺達の休暇も終わるけど、次の仕事が遠征なのか近辺なのかはギルドに行かないと分からない。ラナはどうする?」


 どうする、とは?


「森に帰るのか?」


「あい。あしゅとよもねーじゅもいゆち、もいのおうちもちになゆち」


「……そっか。仕事の場所によっては、家に送り届ける事も難しいかもしれないんだよ? 大丈夫?」


『ぼくが居るから大丈夫! 何ならこのまま飛んで帰れるよ?』


「えっ!? あっ、翼あったな……。そうか、アストロは飛べるのか。流石は神獣だな」


『えへへん! 神樹の森でならたぶん10番目くらいには強いよ!』


「は? アストロで10番目!? 他はどんなバケモンなんだよ!」


『やだな、謙遜って知ってる?』


「……って事は10番目より上じゃねーか」


『でも1番じゃないからねー』


「はぁ……。そんなアストロに守られてんなら、ラナも安心安全だな」


 わしゃわしゃと頭を撫でられた。


 そうか、きっと1番はニーズおいちゃんなんだろう。

 何せ神樹の森の守神みたいなもんだし。

 それなら2番目に強い……?

 こんなに可愛くて素直で優しいアストロなので、ギャップがあり過ぎる。


『なぁに?』


「ううん。あしゅとよ、だいしゅち」


『ぼくも! ぼくもラナが大好きー!』


 べろんべろんと舐められて擽ったい!

 きゃはは! と笑いながら転げてるふたりを、優しく見守る白銀のみんな。


 お別れの日まで、あと少し。







 ◇◇◇


 「この街のめぼしい店は大体回ったし、もう一度行きたい店とか行きたい場所なんかはあるか?」


 うーん……?

 食料品は買ったし、鍋釜はお家に揃ってるし、お洋服も買って貰ったし、ポシェットやバスグッズも買ったし文房具に本もある。


 おしゃれなカフェとかないかなーと思ってたけど、そもそも無骨な冒険者の街には、あってもケーキ屋さんくらいなものだった。


 観光地でもないし、基本徒歩でしか移動してないから、行動範囲も狭いしねー。


「ははっ! 思い浮かばないみたいだし、ぷらぷら散歩してみるか?」


「あい!」




 お昼を外食にする予定で街をぷらぷら。

 今日はミーシュくんとダラスさんは用事で居ない。

 ネージュはお家でゴロゴロ。

 流石ネコである。

 

 ジャスパーさんに抱っこされてるので、存分にキョロキョロ。


 カタカタドスドスと音のする方を見ると、体高150cm程の恐竜がチャリオットを引いている。

 乗ってる人は、髭モジャの小柄なおいちゃん。


 は?


「お! コンピール! 珍しいな」


「あえなに!?」


「1人用の馬車と言ったらいいんですかね。馬車より手軽に使える移動手段で、チャリオットと言います。チャリオットを引く魔物は様々です。あの魔物はコンピールと言って竜種なんですが、飼い主には大人しくて従順。飼い主以外にはなかなか懐きません。それでいて力も強く足も早いので人気なんですけど、懐かせるために卵から孵すので数が少ないし珍しいんですよ」


 と、ロビンさんが教えてくれた。


 やっぱりチャリオット! 戦馬車じゃん!

 そして恐竜! ちっちゃいTレックスみたいなのに大人しいのかー。

 そして刷り込み(インプリンティング)。なるほど。

 

 いやまだ謎はある。

 あの小柄なおいちゃんは、もしかして……?


「工房から魔石や魔物素材の買い付けかな?」


「そうかもしれませんね」


「……どわーふ?」


「そうですよ。ドワーフの工房は職人街に多いんですけど、買い付けにサランに来ます。すぐに素材が手に入るので、隣町は大職人街なんですよ」


 ふぉぉ! ドワーフ初遭遇!

 髭モジャで小柄で、ずんぐりむっくり!

 思い描いていたドワーフそのものじゃないか!


 ガン見しているのがバレたのか、ドワーフのおいちゃんがこっちを見て、ニカッ! と笑う。

 そしてそのまま通り過ぎた。


「あれ? あの人……」


「ええ、多分ガラガンドの親方ですね」


「親方自ら買い付けか? 珍しい事もあるんだなー」


 ガラガンド?


「ガラガンドはこの国1番の工房ですね。魔道具は他の工房の追従を蹴散らす程の腕前です。王都の城の魔道具は、ほぼガラガンド製と言われてますね」


 ほへー!

 そんな大工房の親方さんが買い付けに来るなんて、フットワークが軽いんだなー。




 夏の街散歩は暑いので、日陰でジュースを飲んで休憩していると、パタタタっと目の前に(見た目)オウムが降りてきた。


「げっ!!」


「ん?」


「ジャスパー至急ギルドに来られたし!」


 と、3回繰り返して飛び立った。

 伝書鳩ならぬ伝言オウム!?


「何でしょうね……。まだ休暇中なのに」


「まさか氾濫じゃねーよな?」


「そんな兆候はなかったので違うと思うんですけど……」


「しゃーねぇ、とりあえず行くか。ラナ、アストロ、ちっとギルド寄るな? その後メシな」


「あーい」『いいよー』






 ◇◇◇


 ギルドに行くと、さっきのコンピールが、おしりをぺたんと付けてお人形さん座りをしてた。

 可愛いっ!


 アストロを見て、一瞬だけ手をばたつかせたけど、鳴きもせず、すんっと落ち着いた。

 ……触ってみたい。


『ジャスパー、ラナとここで待ってていい?』


「ん? あぁ。コンピールには近付くなよ? 大人しいっつっても竜種だからな」


「あいっ!」


 そう言うと、ギルドの中に入っていくジャスパーさんとロビンさん。

 ロビンさんは、不安気にしているが大丈夫です。

 アストロがいるからね!

 

 わたしはアストロとコンピールの前に陣取ってガン見する。


「こんぴーうたん、こんいちは」


「ギャ!」


 おお! お返事きたー!

 ……触りたい。


『ねぇ、ラナが触っても怒らない?』


「ギャ? ギャ!」


『触ってもいいよーだって』


「いいの!? じゃあしゅこちだけ……」


 そ、っと背中に触れると、ビロードのような手触り。

 もっとツルツルの鱗かと思ってたら、鱗の形ではあるが、毛が生えてるらしい。

 滑らかで手触り良し。


「ちもちーね! あちゅくない?」


 恐竜って暑さには強いんだっけ?


「ギャ!」


『鱗があるから大丈夫だって』


 おお! 人の言葉を理解するのか!

 ……しかも幼児語だけど。


「ギャギャ!」


『お腹もどうぞだって』


「いいの? おじゃまちまつ……」


 と、お腹に回って、そっと触、るだけじゃ物足りん!

 そっと抱きつく!


「ちもちーーい!」


 少し冷たくて、滑らかな手触り、頬触り。

 こりゃたまらん!

 思う存分スリスリ……スリスリ……。


「はぁ♡」


 

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