ギルドのおいちゃん。
「ホワイトラカントと聖水の報告は受けた。ご苦労だったな。ホワイトラカントは森の辺では上手く育たないから採りに行くしかないんだろうが、ジャイアントなー」
「だから結界石で囲うか、絶えず蟲避け撒くしかないかも」
「でも結界は下まで囲わないとだろ? 結界石では難しいと思う」
と、真剣な話し合い。
ふむふむ。
あの白スグリね。
うちに鈴生りですけど。
ハイポーションにどれだけ使うのか分からないから、安易にお裾分けしますとも言えないし、ここは静観しておきましょう。
ジャスパーさんの足元に座るアストロの頭を撫でつつ、ネージュを撫でつつ黙って座ってると、不意にギルマスさんと目が合った。
「ラナ、つったか? 随分大人しいな」
おっと。
ここは笑っておこう。
にっこり。
「この子何歳だ? こんくらいの子どもなら、むずかってもおかしくないだろ。具合でも悪いのか?」
「ラナは賢いんだもんなー。ちゃーんとお座りしてられるいい子だもんな!」
と、ジャスパーさんが頭ぐりぐり。
フード取れちゃう!
……案の定、ぽすっと。
「うお!? この子エルフか!?」
「ちげーよ! 俺の遠縁だっつったろ!」
「ジャスパーの遠縁にエルフが居たのか!?」
「だから、人族だってば!」
「しかしこの髪の色……、瞳もピンクだろ? これ」
「これって言うな。まったく失礼だな」
「……ラナ、もう帰りましょうか。ここに居たくないよね?」
流石はロビンさん。
うむ、わたしはお買い物がしたい。
こくりと頷くと、ダラスさんが1番に立ち上がる。
続いてロビンさんとミーシュくん。
「だーーー! 待て待て! 悪かったっての!」
「もう報告は終わったからいいでしょう?」
「そのラナの身分証明どうすんだ? 赤子じゃ持ってないんだろう? ここで白銀の翼が後見人で出しておくから」
身分証明? なるほど、確かに。
赤子じゃないですけどねっ!
「あぁ、それは助かる。ラナ、もう少し待てるか?」
「あい」
「……ホントに賢いな。ジャスパーと少しでも血が混じってるとは思えん」
ぶっ!
と、誰かが吹き出した。
「相変わらず失礼だな!」
それからギルドの職員さんを呼んで、何やらレジかパソコンかと思しき機械? 魔道具? を持ち込んで、門でも触った数珠玉よりも大きいモノを持って来た。
「この魔石玉は犯罪履歴を探る魔道具だ。門でも触ったろ? あれより詳細に分かるモノだ。まぁ赤子だし、大丈夫だろうが一応規則なんでな」
ふぅん。まぁ何も無いし、触るくらいなんて事ないですよー。
と、ぺたり。
すると、門では淡く青くなっただけなのに、ぺかーーー! と青く輝き出す。
「「「「「うおっ!!」」」」」
「わぁ! ちえーい!」
青く輝くだけじゃなく、何やらキラキラとしたモノまで飛び出して、それはそれは幻想的だった。
「「「「「…………」」」」」
……あ、もしかしてこれは……本来であれば出ない現象なのでは?
みんなわたしを凝視している……。
「えへ」
「あー、「そうなんです! ギルマスも驚いたでしょ? ラナはこーんな可愛いのに、人族の、ジャスパーの、遠縁! なのに、虐げられてるんです! でも引き取るわけにいかない事情があって時々は連れ出してあげようって事になって連れて来たんです。こーんなに可愛いのに……可哀想でしょ? でしょ? だから身分証明作ってくれてありがとうございます! ラナも嬉しいよね? ねっ!?」」
突然弾丸トークを繰り出したミーシュくんに驚きつつも、こくこくと頷く。
しかし、虐げられた事になってるのはどうなの?
「……ラナは人族にしては少々……魔力が多くて、そのせいで……くっ……!」
ロビンさんっ!?
よよよと泣き崩れ、てはいないが、顔を伏せる。
「……ラナ……」
ダラスさんまで痛ましそうな顔で見る演技が入りました!
「……と、まぁそんな感じなんで、心の傷を癒すために構わないでやって欲しいんだ」
ジャスパーさんが纏めに入りました!
え、わたしはどうしたらいいの!?
笑っとく!? 悲しんでおく!? どっち!?
きょときょとしてたらギルマスが、
「……何も気づいてないか……。まぁ赤子だしな」
む。
「たんたい!」
ばっ! っと指を3本立てる。
「えっ?」
赤子じゃありません!
「あ、あぁ、魔力のせいで成長が遅いのか? にしても、3歳? 精々2歳なりたて位だろ?」
がーーん!
え、そんなに? そんなにちっちゃい?
恐る恐るジャスパーさんを見上げると……。
「あー、まぁ何だ。うん、すぐ大きくなるさ」
と、頭ぐしぐし。
……神様。
どうやら3歳じゃなかったようです……。
がっくし。
身分証明ができるまでの時間、しんみりした空気が居た堪れない。
アストロは船漕いでるし、ネージュはゴロゴロと喉を鳴らし、なでなでにご満悦。
……わたしも寝たフリしよっかな……。
ピッピッピッピッ!
「お、できたぞー。これがラナの身分証明な。魔力で登録してあるから、これを使ってラナのフリする事もできないやつだ。無くすなよ? 5歳になったら冒険者登録できる。冒険者にならないなら、これは毎年更新しないとだからな?」
「あい」
「ジャスパーが管理しとけよ?」
「分かった。ラナ、これ預かるな?」
「あい」
まぁ白銀の翼の面々にならお願いしておいてもいいだろう。
「二重発行はできないからな。世界に1枚だけしかない。再発行には10万G掛かるから、そのつもりでなー」
じー?
「貨幣の単価ですよ。後で教えてあげますね」
ふむふむ。
「あい」
「おいおい、赤子にはまだ早いだろう」
「ラナは賢いから分かるもんなー」
うむうむ。
お買い物には必須ですからね!
「……赤子には金持たせるなよ?」
「私達がキチンと見てるので大丈夫ですよ。ご心配なさらず」
有無を言わせぬ笑顔でロビンさんがピシャリ。
「うっ……。まぁ報告は以上だな? 次のクエストまでゆっくり休んどけ」
「はーい! ギルマスまたねー!」
「じゃあなー」
「では」
「……」
『んん……。終わったー? さっきの買いに行こー!』
と、執務室を出て階下へ。
「クエストの物品と魔石の換金するから、ちっと待っててな。あ、それとも先に行ってるか?」
「先に行きましょうか。ラナも退屈ですよね?」
いいの?
「おたいももちたい!」
「じゃあ先に行ってるねー!」
と、ジャスパーさんだけ残して、お買い物ツアー開始だ!
ひゃっほう!
◇◇◇
【ジャスパー】
「お疲れ様でしたー! ではお預かりしますね!」
「あとこの魔石を買い取ってくれ」
「はー、いっ!? こ、これっ!!」
「森の恵みだから、素材はなかったよ」
「わ、分かりました! ラッキーでしたねー!」
「まぁなー」
「では、いつも通り振込にしますか?」
「いや、現金で頼む」
「……多いですよ?」
「うん。ちょっとすぐ入り用なんだ」
「分かりました。すぐにお持ちしますねー!」
ふぅ。
森の恵み作戦バッチリだな!
「お待たせしました! こちらがクエスト分、こちらが魔石分です! またよろしくお願いしますー!」
ドサドサッ!
「……あぁ、またなー」
魔石分の方が袋がでけぇ!
ラナに無駄遣いしないように言わないと……。
はぁ。




