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ギルドへ向かう。


 ポンチョを着せられミーシュくんと手を繋ぎ、目線はあっちこっち。

 足も興味のある方へ向かいそうになるが、手を繋いでいるので勝手に行けないもどかしさよ!


「ほら、ギルドの帰りにお買い物するからね! 今は先に用事を済ませちゃおう?」


 分かってる。

 分かってはいるが気になるんだよぅ!


 戸建ての多かったエリアから、集合住宅エリアに入ると、途端に雑多な印象になる。


 ミーシュくん曰く、戸建てエリアは少々お金に余裕のある人が住む街なので、お店もそれに合わせているらしい。

 集合住宅は駆け出し冒険者や、お店の見習い等、まだ若い衆が多いんだって。


 なので、屋台や大衆食堂、冒険者に必要な武器や防具や宿屋、鍛冶場や食料店、薬屋等々。


 サランの街は冒険者を支えるようなお店が多いけど、王都は高級志向らしい。

 森に面していないので、魔物の脅威は少ないからなんだって。


「おーとってどこにあうの?」


「森の反対側って言えば分かるかなぁ? 幾つかの街と村を超えてサランから馬車で10日、冒険者なら徒歩でひと月位掛かる場所にあって、大職人街を超えて王都。王都の向こうは小職人街でその先は砂漠。砂漠を超えたら海だよー」


 おぉ、結構遠い!

 もしかして、この大陸って大きいのかな?

 そもそも馬車移動の基準が分からないが、1頭立てなら1馬力だしなー。

 そして職人街に挟まれてるのね。


「王都にも冒険者は居るけど、スカしてて気が合わないから行くの断ったんだよねー」


 うん? 断った?


「王都住みの低ランク以外はC+ランク以上になると、王都での仕事ができるようになるんだ。少ないとは言え砂漠の魔物が総じて強いから、それまではサランの街で過ごすんだよー。でも王都より、サランに残る方が多いかなー」


『ラナっ! あれ食べてみたい!』


「ん?」


 アストロが見た先を見ると、なんと! アメリカンドッグではないか!?


「コーンドッグか。アストロ、帰りに寄るから先にギルドでもいい?」


『えー……なくなっちゃわない?』


「大丈夫だよー。何なら予約しておこうか?」


『予約?』


「そう! ――おっちゃん! 後で買いに来るから、コーンドッグ20本予約してもいい?」


「おっ! 白銀の! いいぜ! 20本な!」


「先に払っとくよー」


「いいっていいって! 後払いでも大丈夫だ! んじゃ20本なー!」


 ぬぉ! アストロのしっぽ扇風機が!


「がははは! わんこが嬉しそうだな! ほれ、先に1本やるから食ってきな!」


『ありがとう!』


 当然おっちゃんには聞こえないが、お礼を言えるいい子!

 あ、ネージュが……。


『ネージュ半分こしよ? ラナも!』

 

 ちゃんと分けられるアストロいい子。

 でもさっき朝ごはん食べたばかりだし、入らないよ……。


「そこの嬢ちゃんも持ってきな! 熱いから気をつけんだぞー!」


 と、わたしにも1本くれた。


「あいまとー!」


「すみません、じゃあ代金は予約のに付けておいて下さい」


「いーってことよ! こりゃオマケだからな!」


 と、豪快に笑う。

 優しくて気前のいいおっちゃんだ。

 しかし、1本は食べられないのでネージュと半分こ。


 串に刺さってるのに、器用に外して食べるアストロ。

 流石食いしん坊。

 わたしは歩きながら齧ってみた。


 ……うわ、これ揚げ油がラード?

 コロッケやトンカツなら分かるけど、おやつでは結構重い……。


 ”ラナっ! ラナっ! 早くくれにゃ!”


 1口齧ってネージュに渡すと、アストロの背中で食べ始めた。


『ネージュ! ぼくの背中汚さないでよ!?』


 ”後でウォッシュするにゃ!”


 と、普通に食べている。

 そうか、これがこの世界の普通なんだな。

 サラダ油は願いの祠で出てきたから、今までなかったんだろう。

 ……広めてもいいのでは? ふむ。


「はははっ! これなら予約しなくても良かったかもな!」


「ええ! そう言わんでくださいよー!」


「うそうそ! ちゃんと後で来るから、頼むねー」


「はいよー! 毎度ー!」



「さぁ、今度は寄り道しないで行きますよ」


「あーい!」


『はーい!』


「にゃー」




 と、手を引かれて歩き出す。

 昨日の夕方程では無いが、そこそこ賑わう屋台街。

 アチコチからいい匂いが漂ってくるが、満腹なのでさほど気にならない。

 アストロとネージュを除く。


 フラフラと屋台に近寄りそうになるのをロビンさんが軌道修正。

 アストロは大きいから目立つし、ロビンさんも目立つので注目の的だ。


 どうにかこうにか森への門の近くまで来たら、すぐそこが冒険者ギルドだと教えられた。


「冒険者ギルドは森に近い方が便利だから、どの国でも門に近い場所にあるんだよ」


 と。なるほど、理にかなってる。


 ドアは大きくて観音開きで開け放たれている。

 門が閉まった後、少し経ったらドアも閉まるんだって。

 掲げられている旗はギルドの紋章かな?


「ラナ、ここからは抱っこね? 冒険者が少ない時間とは言え埋もれてしまいますからね」


「あい。あしゅとよとねーじゅもはいえう?」


「もちろん、一緒に入りますよ」


 ほっ、良かった。



 そのまま受付に行くと、獣人のお姉さんが居た。

 ふぉぉ! ふわふわ三角お耳! モフりたい!

 そして居るわいるわ、筋肉ダルマ、もとい、冒険者さん達。

 そうか、ジャスパーさん達は細マッチョなのか。


「こんにちは! ジャスパーさんとダラスさんは、既にギルマスの部屋ですよ! ……で、その子は?」


「ふふっ、ギルマスに説明してからねー!」


「……まぁっ! では執務室へ直接行って下さいね! お嬢ちゃん、またね♪」


「あい!」


「あらま! 可愛いわねぇ!」


 ふりふりと手を振ってくれるので、お返しふりふり。

 

 いつかそのお耳をモフらせて下さい!


『ぼくの耳じゃダメなの?』

 しょぼん


 アストロのお耳は最高ですよ? そして毎日いつでもAlwaysモフモフし放題だからね!

 たまの味変……って言い方は変か。


『最高ならいいや!』


 うん。素直で可愛らしい。



 そんな念話をしつつ階段を上がって、気がついたらドアの前。

 ノックと共に返事を待たずに入室。


「こんちはー!」


「おまえはまた! 返事を待ってから入れと何度言わせた、ら?」


「こんにちは」


「おー、お帰り! って、その子か?」


「そうそう。次のクエストまでこっちに居るからな。ラナ、ギルマスのおっちゃんだよ」


「……こんいちは」


 厳ついおいちゃんが値踏みするように見てくる。

 嫌な感じはしないけど、ちょっと……。


『何なの? ジロジロ見ないでよ』


 と、アストロが前に出る。


「アストロ、大丈夫だ。この人は元から不躾だからな」


「ちょ! その言い方酷くね? ってかでっけぇ犬だな! ネコも居んのか。まぁ座れよ」


「……にゃー」


 ソファーに座るのかと思ったらジャスパーさんの膝の上だった。

 そして、わたしの膝にネージュが乗ると、ほぼギルマスさんから隠れるようになる。


 ”ラナを隠すにゃ。あいつの目付きが気に入らにゃい”


 ふふっ、ネージュありがと!


 と、ぎゅっとする。

 さて、何か言われなければいいけど。

 


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