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服を買う。


「ギルドに報告と納品があるから全員で向かう。……えーと、その間ラナはどうするかな……」


「まってうよ?」


「いや、ここにひとりで留守番させるわけにも行かないし連れて行く、んだけど」


「どーせ親戚の子って紹介しなくちゃなんだから、ギルドにも連れて行こうよ!」


「……目立つぞ?」


「なので、その前に服屋です」


「なるほど、じゃあ服屋はロビンに任せて先にギルド行って報告だけ先にやっとくか」


「はいはーい! 俺も服屋行きたい!」


「……んじゃミーシュとロビンは後からって事でいいか?」


 こくり、と頷くだけのダラスさん。

 目が合うと、頭なでなでしてくれる。

 えへへ。と笑うとお耳ピコピコ。

 モフりたい。






 ◇◇◇


 準備完了で街に出る。

 昨日はちゃんと見られなかったから楽しみ!


「ラナはこれ被って下さいね」


 と、でっかいフードを被せられた。


「みえないー」


「ラナのポンチョ買うまでなので、ちょっと我慢してねー」


 むーーー……。

 ただの幼児がここまでしなくちゃなんて……。

 あ、違うか、白銀の翼が連れてる幼児だからってのもあるか。

 あいやー、申し訳ない……。


 アストロは、従魔登録の印を付けていない。

 あくまでも犬! ペット! と押し切るつもりだからだ。

 でもペットでも印は必要なので、首に自動サイズ調整されてるリボンを着けた。

 勿論ネージュも。


 リボンの持ち主はロビンさん。

 長い髪を纏めるのに持ってたんだって。

 女装趣味かと疑ったら、怒られた。

 でも美人さんだから、どっちも似合うと思う。

 言わないけど。


 それにしても夏だと言うのにフードを被っていても暑くない。

 寧ろ適温なのは何故だろう?


『温度調節付いてるんじゃない?』


「うん? あぁ暑くないから不思議だったの?」


「うん、あちゅくない」


「アストロの言う通り自動で温度調節してくれる機能が付いてるよ。一年中適温にしてくれるんです」


 ほぇー! 凄いな!


 ロビンさんに抱っこされて歩いていると、フードで見えないのに視線を感じる。

 なので、わたしは荷物ですよーな感じを醸し出すようにしておこう。






「さ、着いたよ。ポンチョ買ったら外も歩けるからね」


「あーい!」


 と、お店の外観を見ると、大きなガラス窓。

 ドアを開けると色とりどりな布地が見えた。

 ……高そうなお店だなぁ。


「いらっしゃいませ」


「この子のフード付きポンチョを見繕って欲しいんだ。自動サイズ調整と、自動温度調整、防汚防水も付けて」


「この子……?」


 チラリと見るとバッチリ目が合った。

 口髭を携えた白髪の優しそうなオジサマ。

 

「! こんにちは」


「……こんいちは」


「おや、ご挨拶ありがとうございます。サイズを測らせて頂いてもよろしいですか?」


「あい」


 ロビンさんの腕から降りてフードを取る。


「可愛らしいお嬢様ですな。では失礼して……」


 頭から背丈からアチコチ測ってるけど、幼児の服にそこまでする?


「はい、終わりましたよ。お作りするなら1日、既製品でよろしければお持ちします」


「急ぎだから既製品でいいよー」


「畏まりました。では暫しお待ちを」


「あぁ、今日は既製品で買っていくけど、着替えも何着か欲しいんだ。明後日取りに来るから、動きやすい服を何着か頼みます」


「畏まりました」


 えっ!?


「洋服も買うって言ったでしょう? このお店は街服を作る時に腕がいいから懇意にしてるんだよ」


 ほぇー。

 聞けば、貴族でもない限り頻繁には買わないらしい。

 まぁ魔法でクリーニングしたみたいに綺麗になるし、多少の綻びはリペアで直せるしって事みたい。

 でも、成長期の子供服は量産品でいいと思うんだけどなー。

 とは言え、工場みたいな所がなければそれも無理だもんな。

 あ、古着はどうなんだろ?


「おふゆのようぷくはないの?」


「おふゆ? あぁお古かな?」


 ぶんぶんと首を縦に振る。

 幼児語ですまんなー。


「ラナにお古は着せたくないので」


 にっこりと笑うロビンさん。

 えー……わたし成長期だよ?

 すぐ大きくなるよ?……多分。


「ラナは魔力が多いですね? それなら大きくなるのはゆっくりなはず。なので新しい服を作っても長く着られますよ」


 え……その情報はかなりショックなんですけどっ!?


「5歳になればギルドで冒険者登録できるので、成長は問題ないはずです、が、それ以前の問題かな……?」


 ……そうよ。

 何をするにも、このっ! 身長がっ! ネックなのよっ!

 嗚呼……。


「……ま、まぁ可愛いし! 大丈夫だよ!」


 まったくもって意味が分からない。

 とりあえず、あれだ。

 幼児語を直そう……。もしかしたら誤報かもしれないし。

 ぺしょん。





「お待たせ致しました。此方など如何でしょうか?」


「おっ! ラナ、ほら可愛いよ!」


 ちらりと見ると、淡いブルーのポンチョと淡いピンクのポンチョ。

 ……スモックの擬態色丸無視だけど、街中だけだしいいか。


「こえ」


 と、淡いブルーのポンチョを選んだ。

 中身アラサーにピンクはキッツイ。


「両方ください」


 えっ!?


「着替え用だから」


 ロビンさん……。


「ピンク絶対似合うもんね! ほっぺがピンクだし!」


「そうですね、お嬢様でしたらピンクの方が映えそうですね」


 周りから囲い込まれてる!!

 わたしに選択肢を与えてくれたんじゃ!?


「あっ! そーだっ!……ゴニョニョ……」


 お店のオジサマを捕まえてミーシュくんが耳元でボソボソ……。

 聞いたオジサマは


「……なるほど。承りました」


 と、こちらもいい笑顔。

 はて?


「ラナ、とりあえずこれ着てギルドに向かうよ。歩いて行く?」


 と、わたしの合意もなくピンクのポンチョを着せられた。

 しかし、歩いて行けるという甘美な言葉には逆らえない。


 ぱぁっ!

「あいっ!」


 はっ! 右手を上げて返事とか、幼児じゃん!

 え、何? 精神的にも幼児になってるとかじゃないよね!?


「「「可愛い……」」」


 まぁウケは良いみたいだ。

 それならばピンクのポンチョの洗礼も甘んじて受けよう。






「じゃあよろしくねー!」


「明後日また来ます」


「ありがとうございました。お待ちしております」







 ◇◇◇


 宣言通り、歩いてギルドに向かう。


「ほら、おてて繋がないと迷子になるよー」


 と、ミーシュくんに手を引かれて歩き出す、が、流石白銀の翼の2人。

 今日もアチコチから声を掛けられる。

 まぁ、その大半は


「子どもっ!? えっ! うそっ!!」


 なので、一々説明する気はなさそうだ。

「まぁねー」と笑いながら歩いて行く。


 わたし? それどころじゃないよ! 見るもの全てが新鮮過ぎる!

 あっちキョロキョロ、こっちキョロキョロ!

 アストロもキョロキョロと忙しない。

 唯一アストロの背中に乗ってるネージュだけはおすまし顔だ。

 流石街でごはんのオネダリした事がある子はひと味違う。

 

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