換金予定の魔石と身嗜み。
お買い物の前にやらねばならぬ事。
それは換金。
「お! おはよう! よく眠れたか?」
わしわしと頭を撫でるジャスパーさん。
「おたえりなたい」
「ただいま! ほらピーポも挨拶しろよー」
「ピロロー、いつまで寝てるのゴクツブシ! ピ!」
えぇぇぇぇ! 辛辣ぅ!
べしっ!
「ピーポ! 外にほっぽり出すぞ!」
「……おはよう。ピ!」
『ピーポはぼく達が嫌いなの?』
「不審者キライ! ピーポー!」
「あのなぁ、不審者じゃねぇだろ! 客人なの! 友達なの! そんな態度とると二度とクエスト連れて行かねぇぞ!」
「ピッピッピッピッ!」
大分嫌われちゃったねー。
と言うかペット、と言っては何だけど、言葉で拒絶されるのは結構クルね。
「まぁ多分オレのせいにゃー。森では天敵だもんにゃ! にゃははは!」
ネージュ曰く、ケットシーの成人の儀式ではスカイカメレオンバード狩りがあるそうな。
空飛んでるのに狩れるの?
「羽を休める瞬間を狙うにゃ。オレはやらなかったけど、コロニーではやってたにゃー」
「へぇ! 流石ケットシー。人には難しいなー。いてっ! 痛いって! 突っつくな!」
ジャスパーさんの頭に嘴を突き立てて怒ってる。
ネージュを褒めたからか。
「ケットシーと仲良くしない! ピーポロロロロロ!」
「にゃははは! 器のちっさいやーつー!」
「ねーじゅもあおやない」
ピーポはピー! と鳴き、ネージュはにゃぁん! と鳴いて離れた。
こりゃ仲良くなるには暫く掛かりそう……ふぅ。
◇◇◇
「で、ラナは買い物したいんだよな? その前に換金する魔石見せてくれるか?」
「あい」
と、巾着を逆さまにして魔石だけ出るようにする。
ゴロゴロドサドサモリモリこんもり。
「ちょ……」
「こえでおたいももでちう?」
「……これ」
『ぼくが狩った魔物の魔石! 使わないからラナにあげたのー。えーと、どや顔!』
ふんすっ!
……自分でどや顔とは言わないのよ?
ジャスパーさんは、はぁ、と深いため息。
もしかして足りないのかな?
「知り合ったのが俺達で良かったよ……。ラナ、魔石は確かに換金できる。どんなクズ魔石でもだ。魔石は人の生活にとって必要不可欠だから、例えゴブリンの魔石でも買ってもらえる。でもな? ……ここにあるのは上位種サイズばかり! それをこんなに大量に持ち込めないぞ?」
がーーーーん!
「……うえないの?」
「いや、売れる。但し、そうだな……これと、これ。後はこれ位かな? この3つがあれば半年は贅沢に遊んで暮らせる」
は?
『あー、その魔石はねー、これはサラァサ、こっちがマーナガルム、これは何だっけ』
「…………それでな? 普通はチームで狩るから分配になるだろ? だから例えばうちのチームだと、この3つを売ったとしても精々ひと月かふた月なんだけど、ラナは丸々ぽっけにないないできる。分かるな?」
魔物はスルーした!
ぽっけないないとか、おつむてんてんとか、時々でてくる幼児語。
よし、ココロのメモに記しておく。
いつか使う。
で、結論は?
「とりあえず、この3つだけ換金するな。万が一欲しい物が高価で足りなければ俺が負担する。他のは絶対人に見せたらダメ。それと、その巾着がマジックバッグなのも内緒だ。まぁアストロとネージュが居ればスられる事もないと思うし、俺達も居るから大丈夫だとは思うが念の為な」
「あい」
神妙に頷く。
スリとか怖い。
◇◇◇
【ジャスパー】
ラナの買い物の為に魔石を金にする必要がある。
換金する為に見せてもらったら、上位種ばかりじゃねぇか!
アストロが居るから上位種なのも、分からなくもない。
でもなー、サラァサとかマーナガルム?
そんなの遭遇した事もないんですけどっ!?
俺達、白銀の翼はA+だ。
なので、倒したと言えば、まぁ信じて貰えるだろう。
……多分。
それより、何処で遭遇したかだよなぁ。
今回のクエストは森の中腹。
聖水の泉は、中腹の奥だから……そこの近くなら言い訳も通るか。
ラナ達の住んでる所も恐らくその辺だから、人が行かないようにするにも最適かもしれない。
あ、何なら森の恵みとかでもいんじゃね?
あぁそれがいいかも!
素材は損傷が激しくて取れなかったって事にしよう。
よし、みんなにもそう話して齟齬がないようにしなくちゃな!
◇◇◇
「ラナ、ちょっとおいで」
ん?
「なぁに?」
「街に行くから身嗜みを整えようね」
身嗜み? どこか変?
と、自分を見下ろす。……ちっちゃい。
いやそうじやなく!
「髪が伸びて毛先がバラバラだから、少し整えよう」
おぉ! そこまで気が回らなかったわー!
流石びゅーてぃほーなロビンさん!
「それと……頭の後ろ、毛が絡まって鳥の巣になってるよ」
と笑う。
……手が届かないんですー!
丁寧にブラシで髪を解く。
時々引っかかるので、鳥の巣は本当なんだろう。
「ラナの髪は柔らかいですね。それに色も綺麗です。なのに隠してしまうのは勿体ないですけど、目立っちゃいますからね」
いくら整えても隠してしまうのだからいいじゃない。
と思うのは、女子力無さすぎですね、はい。
毛先を整えて鏡を見せてもらう。
えーと、こっ、これが、わたしっ??
ってセリフは使い回されすぎだけど、多分それ以外わたしの語彙力では見当たらない。
アストロに見せてもらった水鏡は、鏡ではあるけど水なのだ。
縦になった水面とでも言うのだろうか。
所謂所詮水面。
駄菓子菓子! 違う。だがしかし! この鏡は落とせば割れる、わたしが知ってる本物の鏡。
前置きが長くなったが、最終的には、これがわたし!? に集約される。
うん、相当頭こんがらがってる。
頭後ろの鳥の巣じゃなく、ね。
「ほーら! もっと可愛くなったでしょう? 将来楽しみだね」
ザンバラだった毛先を揃えて、前髪を整えただけでマジカルチェンジ!
いっそこれの方が魔法だと言われた方が納得する。
「あいまとー!」
にっこり微笑み見上げれば、くりん! と目を見開いたロビンさん。
美人は何しても美人だ。
「……これは、街に出していいものか迷うな……」
「どちて!? おたいももちたい!」
「……うん、そうだよね。でも先に洋服だよ? サイズぴったりのフード付きポンチョが最優先で必要なんだ」
「え、おたね……」
「それは任せてな。なんなら後からでもいい。まずは服!」
えー……。
わたしのヨーグルトやチーズ……。
まぁ行かないと言われた訳じゃなし。
さっさと服買って、さっさと換金して、お買い物楽しむぞー!




