カモフラージュで追跡。
「なぁ、神獣様が行ってらっしゃいって」
「それ! めっちゃいい人! 人じゃないけど、もう人でいいよね?」
「流石我らの神! 素晴らしいお人である!」
「ふふっ! 普段は無口なのに、神獣様の事となると途端に饒舌ですね」
「獣人であれば、こうなる事は必須! 出会えただけでも末代まで語り継ぐ出来事よ!」
「まぁ獣人族じゃなくても、畏れ多い気はしたよ。オーラ半端ねぇもんな!」
「何より綺麗だったもんなー! 漆黒から白銀になった姿は怖いより美しいって気持ちが上回った」
「俺は怖かった」
「私も怖かったですね」
「荘厳で美しかった!」
「「はいはい」」
ふぅん? どうやら昨日の事を言ってるらしい。
漆黒から白銀に? それ、めっちゃ怒り狂ってたんじゃ?
ラナもよく止められたな。
ふるり……怖っ怖っ。
「それより、ラナちゃん……」
「あぁ。どうやら親は天に召されたらしいな……。見た所、まだ1~2歳位だろ? 親の庇護下に居るはずなのに、こんな危ない森の中で暮らしてるとは……」
「街で保護するにしても、あの見目なら養子の引く手数多だろうが」
「神獣様が居るんだから、滅多な所には行かせないよ。特にモルフェには行かない方がいいよね!」
「俺の故郷を悪く言いたくは無いが、モルフェはダメだ。やっぱりレイズサイズの俺達の拠点が無難だろうな」
「私もそう思います。ガイズナも、ねぇ……」
「ガイズナは悪い意味で過保護だからね! レイズサイズがいいと思うよ」
「……それには俺も同意だ」
「ダラスが言うなら間違いねぇな。っと、来るぜ! ミーシュ仕事しろよ!」
「あっ! ごめーん! 右、距離30! 1体のみ!」
「散開!」
ほー! ちゃんと冒険者してるにゃー。
しかし、ラナの事もちゃんと考えてるみたいにゃ。
飛び出てきた魔物はマーフか。
こいつの毛皮は気持ちいいにゃー。
しかも背中で寝てても、マーフが気が付かない限りモミモミし放題にゃ。
と言ってる間に倒した。早い。
「マーフは夏に見ても暑苦しいだけだな」
「こいつが本領発揮するのは冬だしねー」
「秋になればクエストも出るでしょうし、それまでインベントリで預かりますよ」
「おう、頼むわ。解体して肉は食っちまおうぜ。ダラス頼むな」
「任された」
「水辺を探さないとだな。流石に聖水の泉で解体ははばかられる。ミーシュ」
「はいよっ! ちょっと待ってねー」
シュルシュルと木を登って行く。
ふぅん? 斥候役なのかにゃ?
「正面! 距離700!」
「了解ー! 走るぞ!」
おっと! 離されないようにしにゃいと!
「うん、いい場所だな」
「じゃあサクッとやっちまうぞ」
「頼んだ。俺らは見張りなー」
……1番でっかい奴が解体するのか。
マーフの毛皮、あれくれにゃいかにゃー。
って、解体早い!
伊達にA+じゃにゃいって事にゃ。
ふぅん?
「ロビン」
「あぁ。”我が内包する炎よ燃え盛れファイヤーボール”」
ちゃんと後処理もするにゃ。
悪いヤツだと、内臓をそのまま放置したり川に流したりするからにゃ!
まぁ合格。
「ありがとな! よし、結界石も置いたし、メシにしようぜー」
………………
…………
……
◇◇◇
うん、まぁいいんじゃにゃいか?
冒険者としては合格。
変な悪巧みもしてないようにゃ。
アストロが居れば、もし何かがあってもトンズラする事はできるし、オレだって役に立つ。
……って、従魔になればもっと何かができるようになるのかにゃ……。
保留期間はこの夏いっぱい。
今更ひとりになるのは……。
◇◇◇
『ネージュおかえり! どうだった?』
「大丈夫そうにゃ。ラナの事も気遣ってたし、冒険者としても合格にゃ。ラナは?」
『お昼寝してるよ』
「なぁ、ラナが街で暮らしたいって言ったらどうするにゃ?」
『その時はぼくも街で暮らすよ』
「……窮屈じゃにゃい?」
『うーん、ぼくは街を知らないからなぁ。ネージュは窮屈だった?』
「オレも暮らしたと言うよりは、エサ探しだったからにゃー。モルフェじゃなければいいと思うにゃ」
『モルフェって人族が多いんだよね? そんなにダメ?』
「どこの国も人次第ではあるけど、モルフェは他種族には厳しいにゃ。特に獣人にゃー。それと同時に街にいる動物も見下してるからにゃ。モルフェなら絶対行かにゃい。冒険者も同じように思ってるらしく、レイズサイズ国に行くみたいだから、ちょっとは安心にゃ」
『なるほど。少しは知ってたけど、行ったことある人から聞くと分かりやすいね。ラナにもちゃんと伝えよう』
「それがいいにゃー」
少しでもラナに不利益なら行くのは反対。
冒険者達もちゃんと考えてくれているなら、ついて行くのもアリだよにゃ。
……うん、よし。
◇◇◇
「おあよー……」
『おはよう』
「ラナおはようにゃー」
「ねーじゅおあよー」
『ネージュが冒険者達を見てきたよ』
ぱっ!
どうだった!?
「うん、冒険者としてちゃんとしてたし、悪巧みもしてなかったにゃ。それと、モルフェには行かにゃいって言ってたから大丈夫だと思う」
モルフェって、人が多いんだっけ?
「うん。他種族を見下すヤツがいるから、モルフェに行くなら絶対反対したけど、冒険者達もモルフェに行かないみたいだからにゃ。レイズサイズ国なら大丈夫にゃ」
ふむふむ。
じゃあ、お買い物作戦決行だね!
楽しみになって来たー!
『ふふっ、その前に魔石を貨幣にしてもらわないと』
そうだった。
……後さ、わたしがインベントリ使ってるのは変だよね?
何かバッグ持たないとダメだよねー。
「人族でインベントリ使ってるにゃんてオカシイにゃ。確か、マジックバッグってのがあるはず」
マジックバッグ! って、それも魔石交換してからの話よねぇ……。
「作れば?」
は?
「ラナはバッグ持ってにゃい?」
ないなー。
「ちょっと待つにゃ」
と、部屋から出て戻って来たネージュの手には、ちょっと草臥れた巾着。
「これに空間魔法付与すればできるはずにゃ」
付与? 誰が?
「ラナが」
できないよ!? やった事ないもん!
『ラナならできるよ! 魔法は?』
……イメージ。
『そう! チャレンジ!』
ぇぇえええ! ……ちょっと待って、イメージ固める。
空間魔法ったって、どんなよ。
えーとえーと……甦れ漫画の記憶っ!!
……容量無限で時間停止。
いや、容量あってもいんじゃね?
時間停止ついてればいんじゃね?
容量容量……ここは欲張って、何とかドーム1個分位?
よし、やってみようー!
『「おー!」』
巾着を前にして手を翳す。
”何とかドーム1個分位の容量で時間停止がついた巾着になれ!”
どぅわぁっ! と魔力が流れ、眩く光が渦巻く。
『「うわっ!」』
……光が集束して巾着に注がれた後、残ったのは草臥れてたはずの巾着が新品のようになってた。
『ラナ!? クラクラしてない!?』
え? うん、大丈夫。
「あの魔力で!? どんだけ底力があるにゃ!!」
そうなの?
「自覚がにゃいって恐ろしいにゃ……」
『これは絶対バレたらダメな事だね。ラナも気をつけるようにね』
え、分かった。
こくん




