遭遇。
地中まで、丸く結界を張るのに地中に魔蟲が居ないかアストロが確認してくれたので、アストロが飛び立ってすぐに結界を張った。
結界の中には、いちごとラズベリー、それからこれは白スグリ。
半透明で乳白色。とても綺麗だけど、そのまま食べても薄く甘いだけだ。
そして、このベリー群生地を見ても株の数が少ない。
神樹の森でも育ちにくいのかな?
スグリって、確か赤いのもあったよね?
それは別の場所にあるのかな。
カシスはどうだっけ。
黒スグリ、だったと思うんだけど違うんだっけ。
草木は詳しくないからなー。
そう言えば、この間じーっと見た時に出て来なかった続き、アナライズなら見られるかな?
”アナライズ”
”ホワイトラカント:白スグリ ハイポーションの材料 生育は特殊な環境下のみ 肌荒れ病気予防には生食が効果的 ジャイアントが好んで食べる”
ハイポーション! って、ポーションよりも効能が高いモノだっけ?
特殊な環境下でしか生育できないんだ。
という事は希少、って事だよね。
……うちの白スグリ、わっさわっさ生ってるけど、特殊な環境下に当たるのかしら……?
そしてジャイアントかー。
確かに来てた。
あれは白スグリを狙って来てたのね。
……って事は、ここにも来る!?
アストロが地中まで探ってくれた場所だから動きたくないし……。
ちょっと結界強化しよ……。
わたしに害意を持ってたら弾く!
よし!
「けったい!」
ふぉん! と魔力が流れ光を生み出す。
自分を中心に半径2m程度の小さな球体結界だけど、これでいいだろう。
「よち、あじゅべいーたーべよ」
ラズベリーは甘酸っぱくて種がジャリジャリ。
まぁ種ごと食べられるのだが、ちょっと硬いんだよねー。
わたしはスイカの種もほじくってからかぶりつきたい派なので、ラズベリーの種は
「たねあうと!」
ぴゅん! と一方向に飛んでいく種達。
これが種なのか、いちごの粒々みたいに種のフリしてるのかよく分からないが、カラアウトの応用版で種とイメージすれば何とかなる!
ふははは! これで硬い種は飛ばして食べるのだ!
「おいちぃ!」
シャシャシャ!
あ、やっぱり。
ジャイアントが……いっぴーきぴょーん、にひーきぴょーん、さんびーきぴょーん……。
全部飛んでいく。
え、集り過ぎじゃ?
そのうち学習したのか、結界を囲んで威嚇するだけになった。
キモい。
キシャキシャ シャーシャーと黒集り。
うーん、呑気に食べてる場合じゃないわね、これ。
わたしは君達の天敵だよ? ジェノサイドだよ?
って、魔蟲は分からんよね。
さて、アストロが来るまで……。
「何だこれ! ジャイアント多すぎだろ!」
え!? 人の声!!
「何か囲んでるぞ! 取り敢えず殲滅する!」
「「「応!」」」
響く剣撃、魔力の渦、唸る声。
「大変!! 子どもが居る!! 子どもを囲んでる!!」
「「なんだと!!」急げ!」
頭の上から声がしたと思ったら、木に登ってる人が居た。
目が合うと
「大丈夫、すぐ助けるからじっとしててね!」
お気になさらず逃げて下さい! 剣の音の方が怖いよ!
とは言えず……。
ザシュッ! バシュッ! ドゴッ!
キシャーーー! シャシャシャ!
「――〜――!」
いやーーー! 音が怖い!!
って、何か呪文みたいの聞こえた!
と戦ってる音が鳴り止むまで、どれ位だっただろうか。
瞑っていた目を開けると、肩で息をしているジャイアントの体液で汚れた人達。
その足元には、ジャイアントの死骸の山。
「……っだー……疲れた。って、……本当に子どもがいる……」
「何でこんな森の中に……?」
「結界の中に居るのか」
「もう大丈夫だよ! 蟲避けも撒いたから! 出ておいでー」
ビクッ
いやいや、知らない人についてったらダメっておかーさんゆってた!
「怖がってるな……」
「そりゃそうだよ! あんな目にあったんだもん……。親はなにしてんだ?」
「まさか誘拐か? この子、身なりは粗末だけど、見た目が可愛らしい」
「真っ白な肌。少しも汚れてないね……」
何だか好き勝手言ってるけど。粗末って失礼な。
「大丈夫、もう怖くないよ。お腹空いてない? ほらおいで」
と、結界に手を伸ばしてきた。
害意がないから弾かれず、腕を掴まれそうになった時。
『ラナっ!!!!』
グラシャの姿のアストロが戻ってきた。
「あしゅとよ!」
『ラナ! ラナ! 大丈夫!? 何があったの! ……アイツら……ラナに剣を向けたのか……?』
まだ手に剣を持ってる冒険者さん。
「ひっ! グラシャ=ラボラス!? 全員下がれ!!」
ザッ! と下がる冒険者さん達。
おや、片膝突いて頭下げてる人がいる。
ぉ、お、おおおお! モフ耳っ!!
『許さない……』
「グラシャ様! お気をお鎮め下さい!」
アストロ! 待って話を聞いて! アストロ!
『許さない……』
アストロの魔力が膨れ上がる。
漆黒の被毛が、段々と白っぽくなり、ダークグレー、ライトグレー、白から、白銀になった。
わぁ! かっちょいい! って違うっ!
『許さない……っ!!』
不味い!!
「あしゅとよ!!」
『……大丈夫、魔法は使わない。……喉笛噛み切ってやる……っ!!』
ガァッ!!
「けったいっ!!!」
ぶわっ! と魔力が流れ、わたしの結界と、ほぼ同時にアストロが飛び出す。
バチンッ! キャンッ! ドサッ。
「ぐえっ」
『え? あっ!! ラナっ!』
落ちたアストロの下敷きになっちゃったよ!
苦しいぃぃ! んぎぎぎ……。
「ちびっこお『ラナ! ごめん!』おおおおおお!!!」
素早くアストロが退いてくれたので被害はなし。
いや、オカシイけどな!
軽トラよりもでっかいモノの下敷きで無事とかオカシイけどな!
……丈夫にも程がある。
結界の向こうには尻もち状態の冒険者さん達。
若干1名は土下座状態。
とりあえず、ほっ。
ぐるんとアストロに向かって
「はなちをちいてっていったえしょ! わたちはなにもたえてない! むちよたちゅけようとちてくえてたの! みなたい! あのちとたちのあちもと! あいんこたおちてくえたのよ! そえを、ちゅみのないちとをこよちてちまうとこやった!」
『えっ? えっ?』
「あやまいなたい!」
『ご、ごめんなさい……』
「わたちじゃなく! あのちとたちに!」
ビシッ! と指差す。
のそのそと冒険者に近付くアストロ。
ビクッ! と慄く冒険者さん達。
『……あの、ごめんなさい』
「「「「は?」」」念話……?」
いやー、一時はどうなるかと思ったけど、アストロが素直な子で良かった良かった!
はっはっは!
え? 笑ってる場合じゃない?
……さて、この後どうしよう!?
ラナの長文幼児語、わかったかな:( ;´꒳`;)




