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お魚食べたい。


 しかし、スライムが合体するとは知らなんだ。


『スライムも必死だからね』


「水性スライムは特ににゃー。魚に食われないように合体するみたいにゃ」


「おたかながすないむたべゆの!?」


『スライムは水を綺麗にする為に常に浄化を放ってるから、水属性の魔物の薬みたいなモノだね』


 へー! 凄いね!


「それだけじゃなくゴミも食べるから、人の街の井戸には絶対欠かせない魔物にゃー」


 ほへー……

 人はスライムは食べないの?


『「……」』


 え? なにその沈黙。


『いや……ラナは食べたいのかなって……』


「食べるとは聞いた事にゃい、けど……食べたい?」


 いやいや! 気になっただけだって!

 お薬みたいなら、お腹痛くなったりした時に人が食べても治るのかなって思っただけだよ!?


『なるほど。でも陸上の魔物が水性スライム食べるって聞いた事ないからなー』


 そうなのね。

 まぁ長い年月の中で、水性スライムを食べてないって事は陸上の生き物には効かないのかもねー。


『「多分」』


 ぐぅ〜……


『「「あ」」』


 お腹空いたね!


「スライム食べるにゃ?」


 食べませんっ! そんな意地悪言うならネージュのお昼は抜きですよ!


「えっ!? 嫌にゃー! ごめんにゃー!」


『ラ、ラナ!? ネージュも悪気があった訳じゃなく!』


 ……分かってますよ。

 お昼ごはんにしよっか!


『「やったー!」』





 ◇◇◇


 水から上がってウィンドで全身乾かして、木陰でお弁当を広げる。



 今日はたまご焼きとブルの時雨煮とおにぎり!

 水遊びした後のおにぎりって最高じゃない?

 ちょっと塩キツめの塩むすび。

 あぁ……


「おたかなたべたい……」


 

 塩鮭とか欲しいよねー。

 おにぎりには梅干しと塩鮭と昆布の佃煮とたらこが四天王だと思うの。

 ツナマヨは、わたし的には邪道。

 好きな人多いけどね。



『お魚食べたいの?』


 うん。

 でも居ないもんねー。

 イワナとかの塩焼きでもいいんだけどなー。


『捕りに行く?』


 えっ!? お魚いるの!?


「にゃんの為に釣竿持ってると思ったにゃ!」


 え、精神統一の為でしょ?


「あっ、あれは! ――くっ!」


 あらあら? ふふふっ

 って! お魚食べたい!


 『じゃあ、この後はお魚捕りに行こう!』


 やったーー!

 お魚♪ お魚♪


「お魚♪ お魚♪」


 ネージュも楽しみなようだ。

 まぁ鰹節の木に唯ならぬ愛情を注ぐくらいだもんね!





 ◇◇◇


『この時期は小さい魚ばかりだから、そんなに大変じゃないよ』


 そう言ってアストロの背中に乗って川の本流に向かう。


 小魚か。

 それなら丸ごと唐揚げでも良さげ!

 水が綺麗だし、泥臭い事もないだろう。

 楽しみ楽しみ!


 「アレを丸ごと!?」


 そう言ったネージュの言葉は走る速度につられて後ろに飛んで聞こえなかった。





 ◇◇◇


 本流……? これ川なの!?


『そうだよ。海はこの先だね』


 対岸が見えませんけど……。


「あっちにも国があるみたいにゃー」


『うんうん、ニーズが言ってたね。魔障壁があるんだって』


「へぇー。まぁあっちに渡る事もにゃいし、どーでもいいにゃ。それより! お魚にゃー!」


『流石にネージュの釣竿じゃあ難しいだろうから、飛んで上から攻撃しよう』


 え? 小魚だよね? ネージュの釣竿じゃ難しいの?


「小さいと言っても、本流のお魚はオレの釣竿じゃ無理にゃ」


 何ですと!?


『ネージュも乗っていいよ! そこに居たら魔物の餌食になっちゃう』


 グラシャのサイズになったアストロが言う。

 

 は?


「そうにゃー! 食われるのは勘弁にゃ! では失礼して……」

 ぴょん!


「ひとりじゃ絶対本流にゃんか来にゃいからにゃ!」


 え?


『じゃあ行くよー!』


「お魚にゃーーーー!!」


 ……一抹の不安が過ぎる。





 ◇◇◇


 『ラナ、攻撃するから、浮いて来たのをインベントリに入れてね』


 あ、はい。


「居たのにゃ!」


 お! どれ!?


『やっぱり小さいねー』


 は? どれを見て小さいと仰る!?

 あれって……。


『”ライトニング”』


 ピシャーーーン!


 うわっ!!


「ラナ! 浮いて来たにゃ! 早くしまうにゃー!」


 はいっ!


 手を翳して動物マークのインベントリへ入れる。

 が! どう見てもサイズが想像してたんと違う!

 小魚って言ったよね!?


『え? 小魚だよ? 本来なら、これの10倍は大きいよ』


 はぁ!?


「また居たにゃ!」


『”ライトニング”』


 ピシャーーーン!


 ひょえ!


「ほらほら! 早くしまうにゃ!」


 はははいっ!




 そんなこんなで30尾程狩りまくった。





 ◇◇◇


 そのままアストロの背中に乗って、帰宅。

 わたしは水遊びの疲れからか、すよすよと眠ってしまったらしい。


 まぁ、アストロはドームを張ってくれるし、魔法(おんぶ)紐もあるので安心だ。


 まだお日様は沈みきっていない時間。

 ベッドに寝かせてもらう時に目が覚めた。


『あれ? おはよう。疲れてるなら寝てていいよ』


「ううん、だいじぶ。はこんでくえてあいまと!」


『ふふっ、お易い御用だよー』



 インベントリを確認すると、動物マークに赤ポチ。

 どうやら三枚おろしになってる模様。

 おぉ! お魚も捌いてくれるのか!

 流石神様仕様!



 お魚で夜ごはんにしよう!


『大丈夫? 明日でもいいんだよ?』


 大丈夫! 簡単なのにするから!


『分かった。ありがとう、楽しみー♪』





 ◇◇◇

 

 さて、とりあえず目覚ましに冷たいミルク!

 ごっきゅごっきゅぷっはー!


 キッチンで取り出した半身のお魚。

 ……え、これ、わたしの身長と変わらないんじゃ?


 流石にままごとキッチンから、べろんとはみ出るサイズ。

 身の色はオレンジなので、鮭、だと思われる。

 このサイズで小魚扱い……。


 まぁ、水の中は重力が低いので大きくなりがちだが、それにしても、だ!

 これで小魚! 本来は、これの10倍!?

 どんだけー!


 しかし、念願の鮭!

 ……だよね?


 いや、考えまい。

 鮭として料理する事が大事。

 とりあえず塩焼きが食べたいので、塩を振って暫し。

 浮いた水分は拭き取って、食べやすい大きさに切って、更に塩!


 焼いたら塩が浮く辛口の塩鮭が食べたいのだ!


 グリルがないので、オーブンで焼く。

 初めてオーブン使うが、仕上がりはどんなだろうか。

 御覧じろとは、よく言ったもんだ。


 焼いてる間に、たまご焼き。

 豚汁もどきはインベントリにあるので、それを温めてっと。

 白菜の塩もみでお香子の代わりを、ちょちょいっと。

 浸水したお米はインベントリにあるので、土鍋ご飯もちょちょいっとねー。

 土鍋ご飯って、すぐ炊けるのよね。

 便利便利♪


 ピッ! と鳴ったオーブンを開けると、皮目にこんがり焼き目が付いて、美味しそう!

 いいね! いいね!


 おや? いつもは、しっぽ扇風機ぶんぶんのアストロはどこだ?


 と、思ったら、外でネージュとテーブルセッティング。


 さて、持って行きますかね!

 



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