焼肉と水遊び。
仲直りした後は、仲良く夜ごはん。
今夜のごはんは焼肉であーる!
赤い魔石を使ってなので、火も使わない。
テーブルに直接魔石を置くと危ないので、鍋敷きの上にフライパン、その中に魔石を入れて、その上にフライパン。
フライパン2個使いだ。ふはははは!
とは言え焼くのはわたししか居ない。
ちょっとお行儀は悪いが、椅子の上に立ってお肉を焼いて、アストロとネージュのお皿にどんどん乗せる。
既にタレを揉み込んであるので焼くだけ簡単!
取り皿の横には、チョレギ風サラダも置いてあるのだが、サラダには目もくれず焼肉を頬張るふたり。
「おやたいもたべうのよ!」
『「はーい!」』
と言いつつ肉肉肉肉。
焼けた端からどんどんお皿に乗せるので、おかわりを言う隙を与えない。
まぁ、その間わたしは食べられない訳だが。
「あれ? ラナ食べないのにゃ?」
「うん、ふたいがたべたやたべうかや、だいじぶ!」
『えっ! ラナも食べようよ! ごめんね、どんどん食べちゃった。そのお肉はラナが食べて?』
あら、そぉ?
「うんうん、このサラダ? っての食べるから、お肉はラナが食べるにゃ」
では、お言葉に甘えて……
ぱくっと口に入れた瞬間から旨みが広がる。
今回のお肉はブルのロースとハラミ、カルビにタンと王道ばかり。
網じゃないから油は下に落ちないので、カルビは少なめに。
フライパンが汚れたらウォッシュで綺麗にしてタン塩焼いたり。
魔法って便利だなぁと、改めて思った。
「おいちぃねぇ!」
椅子に立ったまま食べてるので、これは改良しないとダメだなとは思ったが、とりあえず今はこれでいい。
野菜多めの食卓が多かったけど、たまには肉肉肉肉の食事もアリだな。
『このタレ? 凄く美味しい! 塩っぱ甘くて香りが深くて、いくらでも食べられちゃう』
塩っぱ甘いって表現するのか。
甘辛いって言い方もあるのよー。
『甘辛い! 美味しい!』
「甘辛いって言うのにゃー! 美味しいにゃ! このサラダも美味しいにゃ!」
うんうん、肉肉肉肉だけど、お口のリセットにサラダも必要だよね!
ハーブをブレンドしたお茶を飲んで
『「ごちそうさまでした!」』
「あい、ごちとーたまでちた!」
はー、満足満足!
ネージュにおやすみをして、アストロと家に入る。
相変わらずネージュは家の中には入って来ない。
まぁ、夏とはいえ夜は気持ちいい位の気温だ。
心配しなくても大丈夫だろう。
◇◇◇
翌朝、簡単に朝ごはんを食べたら、お弁当持って水遊びに出掛ける。
「ねーじゅもいこ?」
「……水には入らにゃい」
『入らなくてもいいよ。あ、ほら、釣りしてみたら?』
「うんうん! いこ?」
「……分かったにゃー。ちょっと待って、おやつ……」
と、鰹節の木を持って来た。
気に入ってるようで何より。くふふっ!
◇◇◇
わたしはアストロの背中に、ネージュはネコみたいに四足走行だ。
って、ネコだった。いや、ケットシーか。
『ネージュ凄いね! ぼくの速度でも大丈夫なんだね!』
「逃げ足にゃら負けにゃい!」
そう言えば、サイクロプスからも逃げたって言ってたな。
なるほど、スキルのカモフラージュだけじゃなく足も速かったのか。
「あしゅとよ! わたちもはちる!」
『……ラナは急ぐと転ぶからダメ』
「にゃはははは!」
むーーーん……
反論できないのが悔しい。
◇◇◇
大きな本流は危ないので、支流の川で遊ぶ。
川幅は、凡そ3m位か?
流れは穏やかで、水深は浅い。
水面はキラキラと乱反射して綺麗だ。
うん、パシャパシャするにはうってつけね!
水着なんてないから、服のまま。
岩場で足を切るのも怖いから、靴も履いたまま。
「よーち!」
と、意気込んだものの、そろりと足を浸……したつもりでじゃぼん。
すぐに靴の中に水が入る。
「わっ!」
靴の中に水が入ると、じゅっぽじゅっぽと音がする。
あれ? この感覚……。
あぁぁぁ! 子どもの頃の記憶、長靴に水が入ったアレだ!
「きゃははは!」
楽しくなってきたーーー!!
アストロは水飛沫をあげて走り回ってるし、ネージュは少し離れた所で釣り糸を垂れる。
こっちで騒いでるから、お魚は寄り付かないと思うけど……。
アストロに近付こうと走ったが、案の定転ぶ。
「ぶえっほ!」
『ラナ! 大丈夫!?』
「だいじぶ! たのちぃ!」
着ている服が水を吸って重くなってるが、確か水泳教室で、水に落ちた時の為の訓練だかなんだかでもやったなーと思い出す。
まぁ、身体強化していれば気にはならないが、咄嗟の時の為に練習だな。
「ヒット! 何か掛かったにゃー!」
えっ!? この騒ぎの中で!?
『何が釣れたの!?』
「ちょっと! 待つにゃ!」
アストロと一緒に、ネージュのそばに行く。
わくわくっ!
「大物にゃ!」
わくわくっ!
釣竿が大きくしなる。
って……
この浅瀬でそんな大物居るの!?
ネージュの釣竿は糸巻き等付いていない、所謂釣り堀仕様の竿なので、引っ張り上げるのに苦労している。
ならば! お手伝いしようではないか!
横から竿を持って、ネージュと一緒に引っ張る。
でも魚影、見えないよね……?
『ネージュ、お魚見えなくない?』
「……ちょっと、手を緩めてみる」
と、一旦竿を引くのを止めてみた。
が、今度は竿が引っ張られる!
「やっぱりにゃんか居るにゃ!!」
再度竿を引くと、ざば! っと見えたソレは……。
『「「やったーー!!」」』
『「スライム!?」』
ほぅ! これがスライムなのか!
「にゃんだよもーーー!!」
『あらー、残念だったねぇ』
でっかい丸いツルツルの半透明ボディ。
……水まんじゅうみたい……。
「抵抗してたから大物と勘違いしたにゃー」
ちぇーっと、スライムを掴むと針を外し、ポイッと川に投げ入れる。
投げ入れたら水面に着いた瞬間わらわらとバラけた!
うわっ!? あぁ! もっと眺めてみたかった!
「スライムを? 物好きにゃ」
だって初めて見たんだもん!
『そっか、ラナは初遭遇だったねー。森の中にも居るよ? 今度探しに行く? でも水性スライムは無害だけど、森の中のスライムには気をつけないと溶ける攻撃されるからね』
そうなの!?
「そうにゃー。森の中のスライムは魔物の死骸とか溶かして食べるから溶かす攻撃が強いにゃ」
うへ! それなら放置で……。
『うんうん、それがいいね』
スライムって、もっと可愛いイメージだったけど、顔はないんだね。
「スライムが可愛い!? 丸いだけで可愛さなんてZEROにゃ! 今みたいに団子ににゃるし」
やっぱり現実と想像では違うんだね。
仲間になりたそうに見るかと思ったのに。
「はぁ? スライムに感情はないにゃ。本能のままに食べるだけにゃー」
『森には欠かせないけどねー。死骸とかお掃除してくれるから』
なるほど。
スライムさん、お掃除ありがとう!




