アストロのヤキモチとネージュの反省。
アストロ?
『うん。分かってる。嫌な事したよね……』
どしたの?
『……その、ちょっと、やだなって、思っちゃって』
森の中を早足でとったとったと走りながらアストロが言う。
『さっき、ラナ言ったでしょ? ネージュが従魔保留中って』
あぁ、うん、アナライズしたらそう見えたの。
『……いつ契約したの?』
えっ? いやいや! 契約してないよ!?
何もしてなかったのアストロも見てたでしょ!?
『うん、だから、ぼくが知らないうちにしたのかなって……』
してないしてない!
わたしもびっくりしたんだってば!
『そうなの?』
うんうん。
『そっかー……。あのね、ラナがネージュを従魔にしたのが、ちょっと気になっちゃって。もしラナが従魔契約したなら、ネージュの保留中って言うのも嫌だったし、それにネージュを思って不幸の種を内緒にしたのに、蔑ろにされた気がして嫌だったの……。ごめんね』
アストロは優しいねぇ……。
ネージュを従魔にしようなんて思ってなかったし、保留中って何だろうね?
『あ、もしかして名付け?』
は?
『ラナなら有り得る』
うぇっ!?
いやいや! 従魔契約は何か道具が必要なんでしょ!?
名前だけで契約出来たら……って、アストロもだったね……。
『保留中なのは、ネージュの気持ちがまだ決まってないから、じゃないかなぁ』
うーん……わたしは従魔契約しなくてもいいとは思ってるんだけどねぇ。
アストロも一緒に居てくれるし。
ぱぁぁぁ!
『そうなの!?』
うん? うん、それこそネージュの自由を縛る気はないし、意に添わない契約なんてダメよねー。
『……ぼく、ラナが居ればいい』
おや? アストロ、ヤキモチ? くふふ!
『この気持ちがヤキモチって言うの?』
え? えーと、この人を独り占めしたいなーとか、他の人と仲良くしないでーとか、そんな気持ちをヤキモチって言うんだと思うんだけど……多分。
『あー、うん、そんな感じ』
ふふっ
でもねアストロ、そんな狭い視野じゃ損するよ?
『そうなの?』
うん、わたしもそんなに人付き合いは得意じゃないけど、他の人との関わりは自分も成長させてくれるんだ。
もちろん、合う人も合わない人もいるから、無理して付き合う必要はないんだけどね。
最初から合わないって決めつけちゃうのは勿体ないなーって思うよ?
『そっか……』
ネージュはその点、従魔契約保留中なのは、わたし達を見極めてるのかもしれないよ?
今までが辛かったから、また辛い思いをしたくないだろうしね。
『うん……』
わたしもネージュに辛い思いをして欲しくないし、ネージュの思うままに過ごして欲しいからね。
でも、もしネージュが従魔契約したいと思うなら受け入れてあげたいなとも思う。
わたしが望んだんじゃないし、成り行きだったとしても、契約に足を突っ込んじゃったんだしね……。
その時は、アストロにもネージュと仲良くして欲しいなとは思うよ?
もちろん無理強いはしない。
できる限りでいいからさ。
『うん』
それと、ネージュにも従魔契約保留中なのも、知らないフリしてあげよ?
わたし達が知ってると知ったら、気にするかもしれない。
無理に選ばせる事はしたくないからね。
『うん、分かった。それと、ネージュにイヤな態度したの、ごめんねする』
アストロ!
大好きだよ!
アストロの背中にぎゅっと抱きつく。
『ぼくもラナが大好き!』
◇◇◇
【ネージュ】
えっ? えっ? オレ……にゃんかした?
そんな言い方って……いきなり痛い思いをしたんだから当然の反応じゃにゃーの!?
不幸の種があったよって言ってくれたら、取ってとお願いしたかもしれにゃいのに、突然ブチッ! て取られたら痛いのは当然だしっ!
……って、どうやって知ったんだろう?
不幸の種は、寄生されたら凶暴化して意識を乗っ取られてしまう厄介なヤツだ。
仲間が居たら、すぐに気が付く……あ、そっか。
仲間が居なかったから、か……。
そもそもケットシーは群れはしないけど、仲間達がどこに居るかは把握している。
定期的に仲間の元に、チビがいる場所に戻る事がある。
仲間の元に行けば、お互い毛繕いもしたし、そうしたら不幸の種にも気が付く……。
オレには戻る場所はなかった……。
だから、オレの生い立ちを話したから、黙って取った……?
仲間が居ないから、それを思い出させない為に?
なのに、酷いって責めるばかりで、オレ、ありがとうも言わにゃかった。
……嫌われても当然、にゃ。
アストロに、ひねくれてるって言われたけど、ラナだって可哀想な赤子なのに、生まれてまだ3年しか経ってないのに、気遣いしてくれるいい子にゃ。
オレ、ラナより大きいのに……情けにゃい……。
やっぱり、ここを離れた方がいいのかにゃ……。
でも、その前に、ごめんねと、ありがとうを言わにゃいと、ラナよりお兄ちゃんなのに、恥ずかしいよにゃ。
そんで、全部ちゃんとしたら保留中の従魔契約は……。
◇◇◇
『ネージュ!』
「あ……」
『その……ごめんね』
「え?」
『イヤな態度した。ごめんなさい』
「にゃんで! オレが悪いにゃ!! ラナごめんにゃぁ。アストロにも、ごめんにゃぁ。そんでもって、ありがとうにゃ」
『「え?」』
「反省したにゃ……。気を使ったってアストロが言った事に気が付いた。ごめんにゃ、ありがとうにゃ」
『ううん! ぼくも悪い。ちゃんとあの時に説明したらよかった』
「いや、気遣いしてくれたのに、気が付かなかったオレが悪いし、お礼も言わにゃいでラナに酷いって言っちゃったし、オレが悪いにゃ! 不幸の種にゃんて発芽したらどんにゃ事が起こってたか……ありがとう」
あらまー。
なんて素直な子達なんでしょ。
こんな子ばかりなら世の中平和よねぇ。
うんうん。
と、交差しない腕組みをしてふたりを眺める。
パンパン! と手を叩き
「あいあい、しょこまでー! ふたいともいいこ!」
……。
『「まだ3歳児にいい子って言われた』にゃ」
3人で顔を見合わせて笑った。




