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ネージュなでなで。

 名付けてからのネージュは懐っこい。

 が、やっぱり一線引いてる感じがする。


「かつおぶいの木が心配にゃ!」


 と言ってお家には入ってこない。

 ご丁寧にかつおぶしの木だけに結界まで張ってるのに。

 寝床に結界はいいのか。

 そして、かつおぶ”し”ですよ。


「ここは襲われる心配がにゃいから大丈夫」


 だそうだ。

 まぁ確かに。


 なので、気候もいいし、食事は主に外だ。

 雨が降ったらどうしようかな、とは思うけど、その時考えたらいいもんね。





「『いただきます!』」


「いたーちまちゅ!」


 本日のメニューは薄切りベーコンをくるりと巻いたハンバーグである。

 ひき肉はよく使うので、形を整えた塊肉の端っこなどをインベントリひき肉ブースに突っ込んでおく。


 もちろんブルとオークは別々にね!

 あ、ロックバードのひき肉も作っておこう。

 そぼろ丼とか食べたい。


 時間のある時に、あと一手間で完成するような調理済みの食材は作っておくと、とても便利なのでせっせと作ってインベントリに入れておく。

 今回のハンバーグも、もちろん大量作成してある。


『おかわりくださいな!』


「おかわりくださいにゃ!」


「あーい!」


 エンゲル係数は高めだが、何せ食材費はタダ。

 光熱費もタダ。

 家賃もタダ。

 ブーラボー!


 って、払えるお金ないしね。

 まぁ、そこは暫く先なので考えない。






 何度目かのおかわり攻撃を無事に済ませ食事を終え、果樹園を見に行った。


 相変わらず、たわわに実る不思議。

 これ収穫しないで木においてたらどうなるんだろ?

 落ちて芽吹いて増えるのかなぁ。


 とりあえず今は収穫するけど、インベントリが飽和状態になりそうだ。

 ……なるかな?

 まぁ、それも何れ分かるだろう。うん。





 あれ?


『ん?』


 ネージュ、どこか行くのかな?


『あぁ、ホントだね。って、ほら、ラナ見えない?』


 え?


『ネージュの背中にぽわぽわした黒っぽいの』


 んー?

 じーーーーー……


 ”ケットシー ネージュ 『ラナ、ちゃんと”アナライズ”を使ったら詳しく分かるよ』


 なるほど、じーっと見るより精度が上がる?

 アナライズ? って、解析とか検分とか?

 漠然と見るより精度が上がるのは当然か。


「あなやいじゅ」

 じー……


”ケットシー ネージュ ラナとの従魔契約保留中。不幸の種 発芽まであと3日”


 はっ!?

 従魔契約!? って、違う! そっちじゃない!

 アストロ、不幸の種ってなに!?


『えっ? その子の精神を乗っ取る植物なのか魔蟲なのか魔物なのか、よく分からないけど、くっついてるとマズイヤツ、なんだけど、ネージュに付いてるの?』


 発芽まであと3日だって!


『あー、それがもやもやして見えてたのかな? 取ってあげないと凶暴化する可能性もあるなー』


 どどどどどうしよう! どうやって取るの!?


『多分毛の中に埋もれてるから、ブチッと取れば問題ないよ。背中にぽわぽわが見えたから、ネージュも気付かなかったんだね、仲間が居たらお互い見えるから誰かが気付くハズなんだけど、ネージュは独りぼっちだったからなー。』


 え、取れるの?


『皮膚にくい込んでたら、ちょっと痛いかも。発芽まであと3日だっけ? ギリギリだなー』


 こりゃイカン!

 追いかけるよ!!


『匂いを追いかけるから背中に乗って』


 がってんだ!

 あ……お願いします。


『がってんだ! ひゃはは!』






 ◇◇◇


 追いかけたら、何のことは無い、白の泉で釣り糸を垂れて座っていた。


「ねーじゅ!」


「にゃっ!? びっくりしたにゃ! どした?」


『この泉に魚は居ないよ?』


「! し、知ってるにゃー!」


 あ、これは知らなかったな?


「知ってる! 釣り糸を垂れるのは精神統一にゃ!」


 はいはい。



 と、テキトーに返事をして、ネージュの背中をなでなで。

 柔らか〜い♡

 猫っ毛! 正真正銘の猫っ毛!



「……なんにゃ」


『背中にふこ「ああーあーあー」』


『?』


「?」


「なでなでちたかったの!」


「はぁ? ……まぁいいけど」



 態々独りぼっちだったから不幸の種に気付かなかったんだと知らせる必要はない。

 これからは、わたしかアストロが気付いて取ってあげればいいんだから。

 

 なーでなーで、もーふもーふ。


「あ、もちょっと上、あーそこそこカイカイしてにゃ」


 ネージュがふにゃふにゃになってきた。


「はぁぁ〜♡こっちもお願いにゃぁぁん」


 と腹見せ。


 ダメ、背中!


「にゃんでにゃー!」


『いいなぁ。ぼくもラナに捏ねくりされたい……』


 ……アストロは次ね。

 ネージュほら、背中!


『やったー!』


「背中ばっかりにゃー!」



 と、こねこねもふもふなでなでしてたら、見つけた!

 大きさは、わたしの手でガッチリ掴める位。

 割と小さめ……だけど。

 むんずと掴んで、身体強化して


「どやぁぁー!」


「ぎに゛ゃああああああああああああ!!!!!」

 あぁぁぁ……ぁぁぁ……


 ネージュの声に反応したのか、ギャーギャーバサバサ森が騒がしい。


「何するにゃ!!!」

 ふしゃーーー!!


「ごめん! いたいのとんでて!」


 手の中の不幸の種には、ネージュの毛がもさもさ。

 ちょっと血もついてる。

 地球式のおまじないだけど、ぽわっと光ると、背中の毟られた毛も元通り。

 あんないい加減なのでも回復魔法になるって笑える。


「痛かったにゃーー!! ……それ、なんにゃ?」


『不幸の種だよ。ネージュの背中で発芽しそうだったんだ』


「にゃんと! でも言ってくれたら気構えもできたのに! 酷いにゃ!」


 あ、そーゆーもんか。

 余計な気を回したなー。

 へへへっ


『……ラナはネージュに気を使ったんだよ。そんな言い方はないと思う』


「え?」


『ラナ行こう』


「え? あ」


 問答無用で背中に乗せられ、家と反対に走って行くアストロ。

 わたしは気にしてないんだけどな。




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