夏が来た!
夏の精霊が来てから、徐々に気温が高くなってきた。
深い森だから、アマゾンみたいに湿気が多いと嫌だなぁなんて思っていたけど、蓋を開けたら意外と爽やか。
それこそ木陰だらけなので過ごしやすい。
まぁ、わたしが生前過ごしていたのはコンクリートジャングルだったもんなー。
エアコンの室外機が唸ってたっけ。
蚊とか、有害な虫にも遭遇しないのは願ったり叶ったり。
まさか魔蟲としてモスキートがいる訳ではあるまいな……。
血を吸われたら一瞬で貧血になってまうがな。
『居るよ? ムスティックって言う血を吸う魔蟲。主に魔物に集るけど、たまーに人をカラカラに干からびさせちゃうんだ。ラナが吸われたら一瞬で干からびちゃうから、結界の外に出る時は身体に結界纏わせるの忘れないでね』
居るのかー!
貧血所じゃなく干からびるとは恐ろしい……。
身体に結界ね、絶対忘れない!
ふんすっ!
『練習して上手になったら、水遊びしに行こうね』
水遊び! 行きたい! 遊びたい!
「けっとちーもいこうよ!」
「オレは行かにゃいにゃ。誰が好き好んで水に入るんだってーの」
おぉ、さすがネコ。
水遊び楽しいのになー。
◇◇◇
季節が夏になったら、クローゼットの服が変わってた。
かぼちゃパンツは変わらずだが、スモックが半袖になっていた。
どうなってんの!?
それに、以前お願いしたパジャマだが、こちらも勝手に夏ver.がインベントリに。
だから、どうなってんの!?
……神様、目をかけて頂いて、ありがとうございます!
キラキラキラキラ〜☆
『あっ! ぼくもお祈りしようっと! 神様毎日楽しいです! ありがとうございます!』
キラキラキラキラ〜☆
「…………オレはいいにゃ」
『何で!? ぼくらに会わせて貰ったんだから神様に感謝しないと!』
「えー……」
『安心な寝床も! 美味しいごはんも!』
「……寝床はアストロに、ごはんはラナに感謝するにゃ」
キラッ☆
『えっ!? ラナ! ケットシーに感謝されちゃったよ! 凄いね!』
ふふっ
「しょちたらまたおいちぃごあんちゅくやないとね!」
ケットシーは照れ笑い、アストロはケタケタ笑い。
何だかんだ言いつつも、ケットシーも馴染んできて、わたしも嬉しい。
くふふふふ♡
◇◇◇
夏が来てから数日。
うん、やっぱり過ごしやすい。
もふもふペアも平気そうだ。
換毛期はないの?
『ぼくの毛は抜けないからなー。ケットシーは換毛期ってあるの?』
「にゃいぞ? 街にいるネコは毛を撒き散らすにゃ」
「まちにいったことあゆの!?」
「あるぞ。当然街では普通のネコを装うけどにゃー」
『「へぇぇ!」』
「な、なんにゃ?」
『ぼくとラナは行った事ないんだよ。だから、いつか街に行ってみたいんだ』
「そうなのか……。オレは行くならガイズナに行くにゃ。あの街は動物に優しいからにゃ。1度モルフェに行ったら酷い目にあったにゃ」
『ガイズナは獣人が多いから動物好きが多いのかな』
「多分にゃー。よくご飯くれたにゃ。ただ、気配に敏感にゃヤツだとケットシーってバレそうになるから気をつけないとダメにゃ」
「ばえたややめなの?」
「……揉みくちゃにされるにゃ」
そっちかーい!
『あぁ……、ぼくも拝まれるからグラシャの姿は見せないようにしてるよ』
「グラシャは特にだよにゃ。旗ににゃってる位だし!」
曰く、ケットシーも魔物の類ではあるが、どっちかと言うと妖精の扱いになるそうな。
幸運を招く、とか、商売繁盛、とか。
うん、まんま招き猫。
グラシャは言うに及ばず。
とりあえず、このもふもふペアに抜け毛問題はなさそうだ。
しかし、暑さ問題は……?
『ぼくらの被毛は温度調節してくれるから、暑さ寒さにはある程度耐えられるよ』
「余りにも暑かったり寒かったりすると、自分に結界張ってどうにかするにゃ」
何ですと!?
『ラナにもできるよ』
ななな何ですと!?
「こんにゃ赤子には無理じゃにゃいの?」
「あかごちなう! ようじ!」
ふんすっ!
『ラナは魔法使えるよー。お家の結界、ラナも張ってるんだよ』
「えっ!?」
どーよ。ふふふん!
「そんなのできるわけにゃい!」
あ、カッチーーーン!
「できうもん!」
お見せしましょう!
「けったい!」
ぽわっと小さく自分を包む。
自分の身体に纏わせる事はまだ難しいけど、半円にならできるもんねーだ!
「うわっ! 本当にゃ……。魔力制御ができないと魔法にゃんて使えにゃいのに。ダダ漏れしてるだけかと思ってたにゃ」
……ダダ漏れ……。
まぁお家のそばではダダ漏れですけど。
『たくさん練習したもんね。身体強化もできるし、ラナは頑張ったんだよー』
「へぇぇぇ! 凄いにゃ!」
むふふふん♪
どーよ!
『ラナ、鼻穴まん丸! ひゃはは!』
「ホントだ! にゃははは!」
あっ!?
渾身のドヤ顔だったのに!
『どやがお?』
あっっ! しまった!!
『どやがおってなぁに?』
……どう? 凄いでしょ! って顔の事。
『あぁ! なるほど! って、どう顔じゃなく、どや顔?』
細かい事は省きます!
どや! って言っても分からんやろがい!
『……何となくニュアンスで分かるよ? どや顔ね、どや顔』
ぶつぶつ……
いや、覚えなくていいから!
「……もしかして、もしかしなくても、念話で喋ってるにゃ?」
あ。
『うん。ラナはまだ上手にお話しできないから念話の方が、よく伝わるんだ』
「……そっか」
仲間はずれにされたと思っちゃったかな!?
ケットシーと繋ぐのはいいけど、会話が見た目年齢と剥離してると変に思われないかな……。
うーん……でもいいか!
アストロ、ケットシーと繋いで!
『いいの?』
「うん」
『ケットシー、念話繋ぐよー』
「えっ!? ……無理しにゃくていいにゃ」
無理矢理やっちゃって!
『えい!』
ケットシー! ラナだよ! テステス!
「にゃ!?」
『ふふっ! あ、でもラナ、声に出してお喋りしないと、いつまで経っても幼児語のままだよ?』
分かってますー! そこは頑張るもん!
「ラナ?」
うん! あ、ラナは言えるんだ。らにゃになるかと思ってた。
「普通に話そうと思えば話せるよ。単なるクセだからなー」
『おぉ! 新鮮!』
「でもこっちのが楽ちんにゃー」
何処と無く嬉しそうなケットシー。
仲間はずれにされた過去があるから、寂しかったのかも。
色々バレそうではあるが……、まぁいいか!




