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大きな木の洞。

 夜間飛行の翌朝は盛大に寝坊した。

 と、思う。

 だって、お日様がほぼてっぺんにいる。


 アストロは既に起きているようだ。

 寝ていたと思われる場所が冷たい。


「あしゅとよ?」


 リビングにも居ない。

 外かな?


 玄関を出て、防音結界も出ると


『ーー! ーーー!』


「ーーーー! ー!」


 おやぁ?


 声のする方に向かうと

 

「誰の場所でもにゃい!」


『だからって、わざわざココじゃなくてもいいでしょ!』


「あしゅとよ?」


『ラナ! おはよう! ちょっと見てこれ!』


「おそようにゃ〜♪」



 アストロが寝床に使ってた大きな木のウロ。

 その前に植わってるのは、鰹節の木!?


「えっ!?」


 ケットシーが植えたの? ココに!?


「この木のウロが寝床に丁度良かったにゃ〜♪ オレ様の家にしたにゃ!」


 あー、アストロが使ってたから中は広いし、ふかふかの枯葉も敷いてあるし、何よりアストロが張った結界の中だもんねぇ……。


『ぼくが使ってたから、誰も入らないようにぼくの匂い付けしてあったのに!』


「神樹の森は誰の場所でもにゃいはず! にゃまえも書いてにゃいにゃ〜♪」

 にゃ〜んにゃ〜ん♪


 なるほど。

 でもさ


「ひょうしゃちゅあっても、よめゆの?」


「ひょうしゃちゅ?」


 表札だよ!


『ひょうさつってなぁに?』


「ぼくのおうちでしゅって、なまえたいとくの」


『文字で?』


「うん」


「も、文字は読めにゃいけど! 誰も使ってにゃかった!」


『だから! ナワバリ用に匂い付けしてあったでしょ!』


 書いてなかったって言うから、読めるのかと思った。

 匂い付けが表札の変わりか。

 それならアストロの主張が通るよねー。


『でしょ!? なのに!』


「にゃにが でしょ にゃ!」


 念話を開通してないと大変だな!

 早く幼児語直さなくちゃー!


「あしゅとよのなわばいなや、あしゅとよのしゅちょうがとおゆってこと。うーちーもなわばいあゆよ?」


「にゃーー! もうかつおぶいの木、植えちゃったにゃ! 動けにゃいもーん! 絶対どかにゃいもん!」

 フシャー!


 おぉ、全身の毛を逆立てて怒っておる。

 怒ってても害意もなければ敵意もないと、結界に弾かれて飛んで行かないのか。

 新発見!


 そして、かつおぶ”し”だよケットシーくん。

 これはテコでも動かないと思うので、諦めるか力ずくか。


 はぁ……

『ぼくの結界とは言え、ぼくが手を出したら、ぼくが結界に弾かれちゃう。もういいよ。結界張り直して諦める。ラナのお家あるし』


 うんうん、よしよし。

 わたし達も、もしかしたらここから動くかもしれないしね。


『うん。そうだよね。よし、じゃあ結界張りなお「えぇぇぇぇ!!」』


 え?


「にゃんで!? そのままでいいにゃん!! 結界そのままでいいにゃん!!」


『なんで?』


「オレ様がここに居るからそのままでいいにゃん!!」


 はて?

 アストロとふたりで首こてん


 もしかして、アストロの寝床を奪っただけじゃなく、結界も使おうと思ってる?


『……君、図々しいよ?』


 そーよねー。

 ギブアンドテイクにならない押し掛け居候はちょっと……。

 しかも、こちらは鰹節の枝まで提供してるしなー。

 合計で4本も。

 まぁオマケで付けたのもあるけどさ。


「酷いにゃー!! こんな幼気(いたいけ)にゃケットシーを虐げるにゃんて!」

 にゃぁぁぁん! にゃぁぁぁん!


 いやそれ自分で言う?

 つーかチラチラこっち見て、泣き真似だってのが丸わかり!

 笑うわ!

 あれ?


『ラ、ラナ! どうしよう! 泣いちゃった!』


 ……流石純粋培養。

 まぁそこがアストロのいい所。


 アストロはどうしたい?

 元々はアストロのナワバリだったし、アストロが決めていいんだよ?


『ぼく!? ぼく、ぼくは……その、何でケットシーがこんなに森の奥に居るのか知りたいし、どうやって今まで過ごしてたのかも、知りたい、かな』


 それなら、ここに住み着く条件として、ケットシーに聞いてみたら?

 ちゃんと話してくれたら、ここに住む事を許してあげたらいいんじゃない?


『そっか。うん、そうする!』


 チラリ……


「みえてうよ」


「にゃぁぁぁん!」


「あいあい、そえはもーいいたや。あしゅとよ」


『ケットシーに告ぐ! ここに住みたければ森の奥に居る理由と、今までどう過ごして来たのか答えよ! 答えなくば結界を解除する!』


 おわ!?

 急にどうした!?


『え? えっと、理不尽には理不尽で対応しようかと』


 ふはは!

 いいね!


「にゃ!? 泣いてるケットシーにその態度!?」


『あれ? 泣き止んだ?』


 はっ!

「にゃぁぁぁん! にゃぁぁぁん!」


「もーおしょい! あちあめてはなちてみ?」


『話さずば即刻鰹節の木を抜くぞ!』


「しどいにゃぁぁぁ!! ……じゃあ話したらここに居てもいいんだにゃ。実は……」


「ちょっとまった! しょのはなちなだくなう?」


「何にゃ!」


「ごはんたべう!」


「はぁ!?」


『ごはんごはん! 朝ごは、ん? お昼ごはん?』


 ……ブランチだな。

 とりあえず作って来るー!







 ◇◇◇


 以前作っておいたゆで卵。

 大きすぎて、どうやって食べるか悩んでそのままにしていた。

 マヨネーズができたので、たまごサンドだ!


 ゆで卵は大きめにクラッシュ!

 マヨネーズと塩で味を整えて、粗挽き胡椒を多めに入れるのがラナ流だ。


 ベーコンをカリカリに焼いて、レタスとトマトでBLTサンドもね!

 こうなるとハードパンも欲しくなるわねー。


 ロースハムの作り方は分からないので、鶏ハムで代用のハムサンド。

 パストラミ風の鶏ハムとレタスたっぷり!


 やっぱり胡椒最高!


 後は作り置きのシチューがあれば、バッチリブランチ!

 インベントリに入れて、外で食べるようにね!




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