魔物と対峙。
ぱっちりお目覚め、おはようございます。
清々しい朝です。
アストロは相変わらずヘソ天です。
何度も思う、野生どこ行った。
白の泉で洗顔からのラジオ体操。
もうこれはルーティンと言っても過言ではないだろう。
……まだ数日しか経ってないけど。
食材の木の収穫をして、魔力で水を与える。
いつもありがとねー!
チョコの葉っぱは採ってしまうと、ほぼ丸坊主になって少し哀れ。
なのに翌日には、わっさわっさと生えてるから、遠慮なくぶちぶちと採る。
朝ごはんに、お味噌汁を作ってみる事にした。
鰹節は、枝の1本を壺に入れて魔法でシャカシャカ。
いい感じに削り節。
簡単に出汁を取って、目に付いた野菜をテキトーにぶち込んで、赤白味噌を合わせてほっこりお味噌汁。
ごはんはおにぎりにして、目玉や……きは無理なので卵焼き。
でも1回は試してみたい。くふふっ
青菜のお浸しと、香の物の代わりにキャベツの塩もみ。
ブルの時雨煮は甘辛く。
うん、こんなもんでいいんじゃない?
『おはようラナ! いい匂い!』
……君は息子か? はたまた旦那か?
いいタイミングで起きてきたけど。
サクッと食べて、今日のタスクを考える。
おっと、タスクなんて仕事チックなのは止めよう。
今のわたしは幼児である。
土鍋を足してもらって、大豆とごま油をお願いして……。
大豆は枝豆でも食べたいので、ちゃんとそれを想像しないとね!
と言うか……どうやって生ってるんだっけ……?
確か枝にくっついて売ってたはず。
まぁそれを想像して後はお任せだな!
そして願いの石碑の前でお祈りする。
土鍋が凄く使いやすかったので、もうちょっと在庫が欲しいです。
できればサイズが大中小位あると嬉しいです。
後は、ごま油と大豆が欲しいです。
よろしくお願いします。
キラキラキラキラ〜☆
ポコッ にょきっ わさっ!
へ?
相変わらず、ずんずんと育つジョン・ドゥ。
その横に、わっさわっさと育つ草。
あー、なるほど……。
こっちが大豆か。
ってか、草……?
これ移動させるのには、どうしたもんか……。
確認すると、木の方は(ゴマアブラ)
多分、瓢箪型の実が生って、中に入ってるんだろうな。
そして草のジョン・ドゥは、(ダイズ)
これは、想像してた通りと言えばその通りなんだけど、草。
……育てばアレになるかしらね。
チロリン♪
あっ! 土鍋入ったかな?
と、インベントリを確認すると、うんうん! 入ってる!
大中小の3種類!
あれ? 数が書いてない……?
まさか、こやつも延々となくならない、のか?
はは……ははは……はぁ……。
もうちょっと、で良かったんだけど、今度から物品をお願いする時は数を明確に伝える様にしよう。そうしよう。
ジョン・ドゥのごま油、ジョン・ドゥの大豆、それぞれに名前を付けて移動させる。
草は土ごとガサッとね。
アストロは、『見回りしてくるねー』と出かけて行った。
見回りとは、魔物の動向だと言う。
戦闘になったら、わたしが背中にくっついてると邪魔しちゃうからね、お誘いはお断りしたのだ。
しかし、自分の身を守るために何かしなくていいのかと思う。
ここは神樹の森。魔物が普通にウロウロしている場所だ。
だけど虫1匹退治するのにひゃーひゃー言ってた自分が、魔物とはいえ動物を狩れるものなのか?
うーーん……。
ガサッ
「おかえ、い゛っ!?」
のっそのっそと歩いてくるソイツは、わたしを一瞥した後、せっかく移し替えた大豆(草)に近寄る。
前世の牛程もあるが、見た目はもっこもこの羊? だ。
ジリジリと後退して距離をとる。
大豆(草)をふんふんと嗅いだ後、ぱくっ。
「あっ!!」
むっしゃむっしゃと食べてしまう。
「たっ! たべちゃやめっ!!!」
2m四方しかなかった大豆(草)が食べ尽くされてしまう!
「やめーー!! たべちゃやめーーー!!」
顔の辺りに抱きつき、食べるのを阻止したいのに止まらないぃぃぃぃ!!
そのうち、わたしがうっとおしくなったのか、顔をぶんっ! と振って吹っ飛ばされてしまった。
おしりから落ちて尻もちをついたが、痛みより悔しいが勝つ。
何度でも突進するが、食べる事を止めない羊。
「あ、あ、あ! もうやめておーーー!!」
とうとう最後の大豆(草)まで食べて他の木を嗅ぐが、興味がなかったのか、そのまま行ってしまった。
無惨に食い荒らされた大豆(草)……。
ぐすっ……
「ぶえええええええ!! わああああああん!!」
悔しい! 悔しい! 阻止できなかった!!
「ぶえええええええああああああああん!!」
『ラナっ!!! どうしたの!? 何があったの!!』
「あじゅとよおおおおお!! ぶわああああああん!!」
『何があったの?? どこか痛いの!?』
「や、やいじゅがくあえたあああああああん!! ぶええええええええ!」
『え? どこか痛い所は?』
「ないーー えっぐえっぐ」
『あぁ、おしりが汚れてる。転んだの?』
”ウォッシュ”
違うの! でっかい魔物が入ってきて、せっかく移し替えた大豆(草)を食べちゃったの!!
『えっ!? 魔物が!?』
もこもこの魔物が食べちゃったーーー!!
「ぶわああああああん!!」
アストロがわたしを背中に乗せて家に運ぶ。
わたしはアストロの背中で号泣だ。
……アラサーだったのに。
そしてそのまま寝てしまった。
◇◇◇
【アストロ】
魔物が入ってきて、ラナの木? 植物? を食べてしまったと。
害意がなければ素通りできる結界がマズかった。
まさか、ラナの木に興味を示すと思わなかった。
……ラナに怪我がなくて良かったけど、これはぼくの失敗だ。
ラナごめんね。
結界を二重に大きく張り直す。
ラナの木の所まで、外から他者は誰も、何者も入れない結界を。
白の泉の所はそのままに。
それよりも、ラナに教えなきゃ。
身を守る術を。
守りたいものを守る術を。
魔物を退ける力を。
泣き疲れて眠ってしまったラナ。
ほんとにごめんね。
心の痛みは取れないけど、万が一身体に怪我があったら大変だ。
”ヒール”
おやすみ、ラナ。




