願いの祠リベンジ。〜寄り道その4〜
さて、うどんだ。
延し棒なかったけど、魔法で延したし、切るのも魔法頼みだ。
うむ。見た目は完璧。むふん♪
本当は鰹出汁で作りたかったが、無いものは無いので仕方ない。
あるのは豚骨スープとお塩とお醤油とお砂糖のみ。
まぁ鶏がらスープもあるっちゃあるが、今回は豚骨スープ!
アストロの分もあるからと中鍋に、濾した豚骨スープを入れて温める。
味をみながらお醤油を入れて……っと。
ほぅ……お醤油だけなのに、中々にして美味いではないか。
うむうむ。最高すぎる。
これに刻んだ青ネギを入れたら良いと思うの。
シンプルにね。
よし、次はうどんだ。
たっぷりのお湯を沸かして、うどんを投入。
グラグラと煮立つお湯の中で、踊るうどん。
うん、良い風が吹いている。
え? 当然屋内ですよ? キッチンですもの。
おわかりだろうか……。
はい、そうです。アストロのしっぽです。
犬が西向きゃ尾は東と言うけれど、そんな事は丸無視してぶんぶんと回転するしっぽで風が正面にまで影響を及ぼしています。
え、意味が違う? そうだっけ? まぁ気にしない気にしない!
そして、どんだけ〜。
ごきゅっ。
アストロさんや、唾液が抑えられないほど空腹ですか?
さっき結構りんごを食べてましたよね?
そんな事を思いながら、うどんが茹で上がる。
『できたっ!?』
「まらよー」
一旦、水で締めてぬめりを落とし、再度お湯で温める。
スープを張った器に、お湯を切ったうどんを投入!
刻みネギを、どーん!
「でちまちた!」
ちょ! しっぽ抑えて! ネギが飛ぶ!
アストロが魔法でテーブルに運んで
「いたーちまちゅ!」
『いただきますっ!』
わたしサイズのテーブルは、アストロが床に直座りすると高さが丁度なので、一緒の食卓だ。
ちょ! スープが飛んでくるっ!
『美味しい! 面白い! ちょっと食べづらいけど面白い!』
まぁ、わんこにうどんは食べづらいだろうねー。
おや? わんこじゃないって反論がないぞ?
あぁ、うどんに夢中なんですね。ふふっ!
わたしも食べよう!
何故かあるお箸。
うどんを摘んでちゅるりん!
「!!! おいちぃ!!」
うどんは柔らかすぎず、固すぎず、もちもち!
スープは豚骨だけど、不思議とうどんにピッタリだ。
最初から、この組み合わせでしたよ? って勘違いしそうな程、よく合ってる。
お醤油味だからかなー?
麺類は途中で切りたくない派なので、1本うどんを頬張ると口いっぱいになってしまう。
『おかわり、してもいい?』
もちろん! 待ってねー。
うどんもスープもネギもインベントリだ。
その場でおかわりできるので、便利〜♪
……アストロのお皿は、もう少し大きめでもいいかもしれない。
スープまで全部飲み干して
「ごちとーたまでちた!」
『ごちそうさまでした! 美味しかった!』
おぅ……うどんの在庫が綺麗さっぱりなくなった。
また作ろう。そうしよう。
◇◇◇
翌日。
朝ごパンを食べて、願いの祠探し開始!
玄関ドアを開くと、おや? これは……。
『……えっと、昨日はここに何も無かった、よね?』
うん。これなぁに?
『多分、探してた願いの祠、だと思う』
は?
『神気を感じるし』
慌ててニーズおいちゃんのペンダントを握り込む。
……確かに”何か”を感じる。
これが神気?
えーっとー、願いの祠って移動するの?
『えっ? そうなの?』
いや、知らんがな。
『ぼくも実物を見るのは初めてだから、何とも言えないんだけど……』
祠、って言うか、石碑?
何か書いてある。
なになに?
”味や食感など具体的に! 好みの形があればそれも! それが無ければ味だけ再現する事になるよ! とにかく分かりやすくね! あぁ想像するだけでも大丈夫! 任せなさい!”
は?
『汝の願いを叶えたくば真摯に祈れ。だって』
は?
『ん? そうやって書いてあるんじゃないの?』
アストロには、そう感じたの?
『うん』
はぁ!?
え、これって文字が読める人が見たら、仰天するよね?
コレ見て真摯に祈る人が居たら凄いと思うわ。
つーか、全部の願いの祠にコレが書いてあるの?
……いやちょっと待て。
この軽い感じ。ノリの良さ。
最初に会った神様だという事は確かだ。
昨日、願いの祠が見つかるように祈ったから?
いやまさかそんなはず。
大体、どれだけの人が居るか分からないけど、個々人の祈りを全部聞いてたら、神様だって過労死するわ。
それこそ社畜だよね?
という事は……?
願いの祠は移動式で、たまたま移動先がここになって、全ての石碑にこの文言が書いてある、と言う事か!?
マジか!
『マジだーーー!! ひゃはは!』
あっ……。
『ラナ! ほらお願い事しないと!』
はっ! 移動式なら、いつまでここにあるのか分からないもんね!
では早速!
って、何個もいっぺんにお願い出来るのかな……?
えっと、いいや! 全部叶う訳じゃないし!
シチューとパンケーキをお供えして、摘んであったお花もね。
膝をついて、手を合わせ
生前食べていた、お米と胡椒と植物性油脂をお願いしたいです。
どれかひとつでも構いません。
どうか願いを叶えて下さい。
お願いします。
キラキラキラキラ〜☆
『ぼくも! どうかラナのお願いを叶えて下さい!』
キラキラキラキラ〜☆
……。
さて、いつ願いが叶ったのか分かるのかなー?
そのうち何処かで見つかるようになるのかな?
後は待つだけ!
あんまり期待すると叶わなかった時に悲しいから、神社にお参りに行った時位で考えておこうっと。
さて、目的は果たしたし、白の泉に帰る?
もう少し放浪する?
『そうだねー。それなら……ラナっ!!』
え?
石碑の前に、ポコっと3つ、何か出てきた。
ポコッ にょきっ
は? 新芽?
ソレはずんずんと大きくなり、ほんの一時で、わたしの背丈と変わらない高さになった。
はぁ!? 何コレ!!




