願いの祠リベンジ。〜寄り道その2〜
『ラナは何してたの?』
ブルの骨を使ってスープの素を作ろうと思ってたんだよ。
あ、そうだ。
アストロ、この骨4つくらいに折ってくれる?
ぶっとい、恐らく足の骨を指さす。
『スープの素!? へぇ! この骨を折ればいいのね』
うんうん。
『そうだな……”コントラクション”』
まず骨の半分の所がぎゅっ! となり、ポキン。
へ?
同じように他2箇所もポキンポキン。
『お鍋の中だったから』
あぁ物理的にバキバキ折るんじゃなく、気を使ってくれたのね?
ただ、折れた後の反動でパキャッと開いて、結局はボロボロになった。
まぁ後で濾したらいいし問題なし!
ありがとう!
『スープの素になるんだもんね! いつでも言ってね!』
しっぽが高速回転してる。
楽しみなのがわかり易すぎる。
とりあえず、牛骨スープは時間が掛かるので、午後はどうするかアストロと相談だ。
『時間が掛かるのかぁ……それなら今日は祠探しをして、明日はスープにする?』
そうね、2日探して、1日お休みにしてを繰り返そうか。
お休みの日はスープを作ったり、近くで採取出来そうなものを探したりにする?
『うん、それにしよう! じゃあ明日も祠探して、次の日お休みね?』
うんうん! じゃあ今日はもう少し頑張るか!
って、わたしはアストロに乗ってるだけだけど。
『ふふっ! 気にしなくていいよ。ラナと一緒なら毎日楽しい!』
くぅ! アストロったら!
思わず、首元にぎゅー。
お家をしまって、ユグドラシルに向かって飛ぶ。
森の中心はユグドラシルだからね。
アストロは探知を使っている。
わたしもニーズおいちゃんから貰ったペンダントを握って、何か感じないかとキョロキョロ。
あちこち見てると、見えるんだな。
でっかい魔物達。
木々を掠める高度で飛んでいながらしっかり見えるんだから、かなりの大きさなのが伺える。
時々争ってるのを見ると、どこの怪獣大戦争なんだよと。
『森の中心近くは大型魔物も多いんだ。気性も荒いし、当然言葉も通じない。魔力を放出して、こちらが強者だと警告しててもお構い無しだから、ラナも気をつけてね』
気をつけるって、どうやって!?
『不測の事態でぼくと離れ離れになった時には、自分の周りには、必ず結界を張るんだよ? もちろん、そうならないように気をつけるけど』
うんうんうん!
『ぼくにはラナの居場所が分かるから、すぐに駆けつけるからね』
うんうんうん!
おー怖おー怖。
絶対にアストロと離れないぞ。
何がなんでも背中に張り付いててやる。
おんぶ紐魔法ってないのかな……。
森の中心、深部には冒険者も入って来ない。
来ない、と言うより、来られない、が正解だろう。
あんなでっかくて強い魔物がうじゃうじゃいたら、すぐ全滅してしまうかもしれない。
プテラノドンか!? と思うような大きさの鳥? も多い。
隠す気のない派手な煌びやかさは、俺は強いんだぞ! と体現しているようだ。
綺麗だけどね。
毒持ちの爬虫類と似てる感じ。
まぁ、魔力ダダ漏れなわたしと、魔力を隠さず放出してるアストロの近くには来ないけど。
『下を走った方が見つけやすいかなぁ?』
祠は多分下だから、その方が良いかもだけど……。
魔物、襲って来ないかな。
『あー、来るね』
断言されたっ!
『ぼくの背中にいれば大丈夫だよ』
振り落とされるでしょ!?
『落ちないよ? ドームだけじゃなく、魔力紐で繋げてるよ?』
え?
よーく観察すると、腰周りに緩やかな光の帯。
前はこんなのなかったよね?
『うん。ドームだけだと、背中でコロコロした事あったじゃない? だから苦しくない程度に、ぼくとくっ付けておいた』
あったね! 油断してたらコロコロと転がってドームの端まで行っちゃって焦った事!
お手数お掛けします。
魔法紐、大変助かります。
『じゃあ降りて走るね!』
螺旋を描く様に降りると、嗅ぎなれた森の匂い。
これが森林浴なら素敵なんだろうけど……。
疾走するアストロ。
背中に大の字になってへばりついてる幼児。
想像するとシュールだ。
『何か匂う』
え?
『こっちだ!』
キュッ! と方向転換したと思ったら、全速力で走り出した。
例えドームがあったとしても、目を開けて景色を見れば横線になってるので、物凄いスピードを出してると思われる。
まぁ少し慣れてきたので、割と平気なんだけどね。
徐々に速度を落とし、たどり着いた先には
おぉっ! 樹上果実!!
所謂、木になってるフルーツ!
りんご多種、梨多種、ミカン多種、桃多種、さくらんぼ多種、え? ぶどうもある!
「ちゅごーーーい!!」
今までフルーツと言えば、草本性のいちごとかメロン、低木のブルーベリーとかだったので、これは嬉しい!
ふと考えたら、この深部の辺りには大型魔物が多いと言ってた。
大型なら高い所の果物も自分で採れるから?
小型中型魔物が多い場所だったから樹上果実がなかったの?
『え? 多分拠点の近くにも、ここと同じような場所はあるよ』
どーん! 違った!
ただ単に木本性のフルーツに出会わなかっただけか。
優しい世界! と思ったのにー!
それより!
「あしゅとよ! じぇんちゅゆいほちい!」
『任せて!』
採り尽くしても翌日には元通りって言うなら、採り尽くす勢いで!
多すぎ? 構うもんか! インベントリの底が見えないから、パンパンになるまででも!
時間経過ないって素敵♪
アストロの風魔法で集めて、食料倉庫にぽい、ぽい、ぽい!
食卓に潤いが増えるぅ♡
そう言えば、まだパンの木や調味料の木はお目にかかった事がないな?
フルーツや野菜は群生してるから、どこかに纏まってるのかな?
スパイス、あるといいなー!




