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ククルカン。

 シューシューと吸気音を響かせ、鎌首を擡げている大蛇。

 その色は真っ白で、真珠のような輝きを放っている。

 鱗じゃなく、毛皮のような……。


「きえい……」


 はっ! 聞こえなかったよね!?


『いや、もう気づかれてる』


 えっ!?


『おや、グラシャ。ここに何用か?』


 喋った!!


『ククルカン、こんにちは。願いの祠に用事があるんだ』


『ほぅ? ……背中のは貢物かぇ?』


『違うよ。この子はぼくの契約者、ラナって言うんだ』


「こ、こんいちは……」


『おやおや、挨拶出来る子は嫌いじゃないよ。しかし、願い事をするのに貢物もないとはねぇ……』


 確かに! お供え物は必要だったかも!

 アストロ出直そう!


『分かった。ならば出直すよ。じゃあね』


『お待ち。せっかく来たんだ。その子を置いて行けば願い事をしてもいいんだよ?』


『願い事があるのは、ぼくじゃなくてラナだ。ラナを置いて行くことはできない』


『じゃあ願い事は諦めるんだね。ふふふっ』


 アストロ! 帰ろう! 別の場所の祠を探そう!


『ククルカンは意地悪だね。もうここの祠には来ないよ』


『意地悪とはご挨拶だねぇ。貢物も用意できない小僧が何を言っても、ここの祠で願い事なんてさせないよ』


『いいよ。祠は他にもあるし。邪魔したね』


 わたしを乗せたまま、本来の大きさになって空に駆け上がる。

 いつも穏やかなアストロの背中に居ても、ピリピリと憤りが伝わってくる。

 怒っているはずなのに、空に駆け上がる時の約束は忘れていない、アストロ優しい。


 びっくりした。


『願いの祠を独り占めしてるなんて意地悪だ!』


 うーん……。

 意地悪と言うより、祠を護ってたんじゃないかなぁ?

 今回、お供え物を持って来なかった、わたしも悪い。

 とはいえ、わたしを供物にされても困るけど!


『ラナを供物になんてさせないよ! 分かってて言うのは意地悪だ!』


 でもでもほら! 次の所ではお供え物を忘れないようにって勉強になったじゃない!

 だからいい経験になったと思えばいいんだよ。

 ね?


『……ラナはいい子過ぎ。話せる魔物でも狡猾なヤツは沢山いるんだからね? 信じて頭からパクン! なんてありそうで怖いよ』


 ……怖いからやめてよ。


『だからラナは絶対にぼくが守る!』

 がるぉーーーーーーーん!!!


 おぉ、怒りの遠吠え。

 喜びの遠吠えとはひと味違う。







 ◇◇◇


 今日は一旦、祠探しは中止。

 出鼻をくじかれたからね。


『せっかく見つけたのに!』


 アストロはまだぷんすこしてる。

 最初に家を出した泉のそばに戻ってきたので、何となく安心だ。


『ちょっと狩りしてくるね!』


 えっ!?


 元々食べるための狩りをしてなかったのに、鬱憤を晴らす為に狩りをするの?

 それはダメな気がする!


 待っ!!


 待てという間にもう居ない。

 んもぅ。


 しかし供物かー。

 何がいいんだろう?

 米に合う料理を作って、これには米が必須です!

 だから米ください! とか?

 胡椒が合う料理を作って、これは胡椒があればもっと美味しいんです! とか?


 安易だな。


 大体、米が欲しいと言っても、米ってなんぞやだよね?

 胡椒もだし。

 イメージが必要か。


 供物供物お供え物ー!


 魔石でもいいのかなー?

 自分の実績じゃないけど。


 うーん……。







 ◇◇◇


『ラナー! カゴ出してー!』


 おや? 姿は見えず、声だけが聞こえる。

 カゴ?


 出したよ?


『3つか4つ!』


 えっ? あぁ、了解。


『ただいま! カゴカゴ!』


 玄関前で待っていたら、アストロが咥えて来た物を見て驚く。


 は?


『先にこれを!』


 ふわふわとウィンドで浮かせて持って来たのは卵!?


『それからこっちをしまって!』


 卵をカゴに、でーーーーっかい! 鳥を肉マークのインベントリに。


『も1回行ってくるね!』


「えっ!」


『すぐ戻るよー!』


 と、物凄いスピードで飛んでった。

 はっ! と我に返って、卵をインベントリに入れる。


 卵?え、卵!?

 たまごー!!


 ひとつ取り出してみると、でかい。重い。

 わたしが知ってる鶏卵じゃない。

 どう見てもバレーボール位の大きさはありそうだ。

 ダチョウの卵でさえ霞む大きさだよね。

 オムレツ何人分出来るんだろ。




『ただいま! これもしまって!』


 うわ!


『これ、ミルクあるブル!』


 ミルク!!

 え、子ども居たんじゃないの!?


『え? メスは子ども居なくてもミルク持ってるよ?』


 なんですと!?

 子育てするからミルクが出る訳じゃないの?


『そもそも魔物はミルク飲まないよ。生まれた時から親と同じモノ食べるし』


 ……じゃあなんの為のミルクなんだろう。

 あぁいや、考えたら負けだ!


 とりあえず肉マークのインベントリに収納!


 ……これ、おやつの三種の神器揃ったんじゃない?

 小麦粉、卵、ミルク!

 ふぉぉぉ!!!

 パンもバターもお砂糖もあるし、フレンチトーストできるじゃん!

 ケーキもできる!

 シチューもできる!

 やったーー!!!


『美味しいのできそう?』


 うん!


『良かった! ラナに喜んで欲しかったんだ!』


 え?


『ほら、お願い事ができなかったでしょ? とりあえず揃えられそうなのがあれば喜んでくれるかなって』


 アストロ……。


 鬱憤晴らしの為じゃなかったんだね。

 わたしの為に動いてくれたんだ。


「あしゅとよ、だいちゅち」


 ふわふわの首元に、ぎゅっと抱きついて、ぐりぐりと顔を押し付ける。


『ふふふっ。ぼくもラナが大好きだよ。美味しいもの作ってね?』


 そっちが目的なんですね?

 ……まぁいい。


 時間的に夜ごはんの支度をするか。

 って、まだ解体終わってないぽいので、ミルクが使えない。

 鳥も終わってたらシチューも出来たのになー。

 それは明日だな。


 今日はすき焼き風の煮込みにするか。

 ……お豆腐とごはんが欲しくなるな。


 仕方ない、野菜たっぷりトマト煮込みにするか。

 あぁベーコンが欲しい。



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