願いの祠。
身体を充分温めて、今夜の寝床の場所を探した。
あの泉のように開けている場所はなかったが、そこはアストロが頑張った。
風魔法で木を切り倒し、どすん! と足を踏み締めたら、木の根っこごと地面にめり込み平になった。
唖然呆然とは、この事だろう。
『さぁ、これで大丈夫!』
「……あいまと」
いそいそとインベントリから家を取り出し設置する。
「けったい!」
ぶぉんっ! と魔力が流れて光の奔流の後、収束して消える。
アストロの結界を上側に掛けたら完了だ。
さて、この小麦ちゃんの籾殻を取っておかないと。
そんで魔法で挽いて、ん? あれ? どうすればいいんだ?
とりあえず、全部は無理だからボール1杯分位を取って……。
アストロがやってた、アレを試してみよう。
「かやあうと!」
ばふっ!!
「ぶぇっ!」
『うわ! ラナ!?』
籾殻が爆散したよ!
小麦はちゃんと剥けたけど!
『取り除いた先もイメージしないと……』
なるほどね! 確かにね!
籾殻被害のキッチンと自分をアストロが綺麗にしてくれた。
こんもり山になった籾殻は、ゴミ箱マークのインベントリへ。
「ちっぱいはちぇいこうのはは! ちゅぎはだいじぶ!」
『おー! その調子ー!』
よし、気を取り直して小麦を粉にするぞ!
って、ちょっと待って!
このまま粉砕したら、今度は粉が飛ぶんじゃない!?
ふふふふ、学習したラナさんは同じ間違いをしない!
ツボか瓶か、取り出しやすいからツボだな。
ツボに小麦を入れて蓋をする。
えーとー、中の小麦だけを
「こなにちて!」
……しーん。
「あぇ?」
失敗か?
そーっと蓋を開けてみる。
「おぉぉぉぉ! でちてぅ!!」
見事に小麦粉になって底の方にちんまりと入ってた。
「ちゅくない……」
『足りないの?』
「ううん、きょうのはだいじぶ。おもったよいちゅくなくてびっくいちた」
まぁ、考えればそうか。
粒だった物を粉にしたら、減って見えるのは道理だ。
「よち! ちたごちらえだ!」
使うのはブルの薄切り肉。
揚げ物をしたかったけど、あるのは牛脂。
なので、揚げ焼きっぽくする。
まずは付け合せのサラダ。
根菜以外の、クセのないモノをチョイスしてちぎっておく。
一旦インベントリへ。
お肉は食べやすいサイズに切って、ソイの粉と、ちょっぴりのお砂糖。
あぁ胡椒があればなぁ。
明日、願いの祠を探さないとね。
小麦粉を薄くはたいて、牛脂を溶かしたフライパンで焼く。
ままごとキッチン優秀。むふん。
カリッと焼けたら、野菜のお皿に乗せる。
ドレッシングはレモンを絞るだけ。
とてつもなくヘルシーな気がする。
パンとバター、ジャムも出して
「あしゅとよー、ごパンでちたよー」
『はーい! ありがとう!』
飲み物は水だ。
早くこれも改善したい……。
「いたーちまちゅ!」
『いただきまーす!』
うん、カリサクのお肉とシャキシャキお野菜の組み合わせは中々いい感じ。
ひと味もふた味も足りないけど、ある物だけでなら及第点だろう。
『お肉香ばしいね! サクサクしてて面白い!』
面白いか、そうか。
まぁ肉汁もないし、微かな香りと食感だけだもんね。
次はひき肉作ってハンバーグにしよう。
片栗粉ってじゃがいもの澱粉だったよね?
うん、何とかなりそう。
料理酒とか酢、植物油も欲しいなー。
大量のゴマがあれば、ごま油も出来そう。
オリーブとかも。
と言うか、お酒や酢何かは加工物だから、願いの祠では無理そうかなぁ……。
ドレッシングなら酢はなくともレモンとかで代用できるか。
『どしたの?』
圧倒的に調味料が足りないので、どうにかならないかなって考えてた。
『願いの祠でお願いしてみようね。もしかしたら、この森にあるかもだし』
そうだね。
まずはお願いしてみよう!
◇◇◇
翌日、家をしまって結界を解除。
どすん! とアストロが足を踏み締めたら、今度は引っ込んでた根っこが出てきた。
『切った木は元に戻らないけど、根っこがあれば、またすぐに大きな木になるよ』
「は?」
『果実の場所と同じ』
ひょぇー! 凄いね!
『ぼくは、そういうもんだと思ってたんだけど、ラナは違うんだねー』
わたしの住んでた場所では、あの太さの木だと根っこから育つのに何十年も掛かってたんだよ。
踏み潰されたベリーは元に戻らなかったし。
『神樹の森以外ではどうだか知らないんだけど、ここではすぐだね』
神樹の側だからってのもあるのなー?
『かもしれないね。さぁ、願いの祠を探しに行こう!』
「あーい!」
◇◇◇
アストロの背中に跨って森の中を疾走する。
振り落とされる事は無いけど、駆け足じゃ済まないスピードで走るから、怖い。
そんなに早く走ったら見逃しちゃうかもおぉぉぉぉ!!
『気配探知しながらだから大丈夫!』
気配!? 祠に気配なんてあるの!?
『恐らく神気が強いはず。そもそもこの森自体は魔素が多いんだけど、神気は別物だからね。それに広大な森の中をちんたら走ってたら魔物が寄ってくるよ』
それも困るぅぅぅぅ!
と、必死にしがみついて早数時間。
途中休憩を挟みながら、さらに数時間。
流石に初日からは見つからないよね、と諦めかけた時、胸のペンダントから、流れ込む何か。
あれ?
『あれ?』
アストロも?
『ラナも?』
近くに何かある。
確かに、気配という感じだ。
その気配を探してウロウロしてみるが、大きさも形も分からないので、見つけづらい。
祠と言うくらいだから、小さな社っぽい何かなのかな?
わたしも降りて探すよ。
『待って、神気以外魔物の気配もする』
降りる気満々だったが、慌てて跨り直す。
こんなに小さな身体では、ぺろりと喰われかねない。
大きな木を回り込むと、そこには大蛇がとぐろを巻いていた。




