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『アトルティア』バーチャルアイドルユニット  作者: まだ決まってませんの
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バーチャルの世界で活動していく、彼女達の  。

「はいこんにちはー!バーチャル世界を明るく照らす4人組バーチャルアイドルユニット『アトルティア』所属、バーチャルシンガー椎名アスカですー!』


「やあ。『アトルティア』所属、銀河を貫いてやってきた宇宙系アイドル、ユナ・ギャラクティカだ。今日もいい星夜だな。」


「こんめると~!『アトルティア』所属、アイドルめざしてお花の国からやって来ました~!みんなのげんき担当!めると・のるとだよ~!」


「はーいというわけでですね、今日はリノちゃんはちょっとお休みですのでー、3人で一週間前の活動2周年記念Virtualライブの振り返りをね、していきたいと思いますー!」

「あ”あ”ーーーは”あああぁぁぁ~~~~ん!!!!!!」

「え!めるとどうしたの何いきなり叫んで」

「え~~だって~~!!もうほんと楽しかったから~~~思い出しただけで、もう、めるとは…わ~~~ってなる~~~!!」」

「あー!ねー!たくさんの方にも見ていただけましたし!アスカもねー、すっごく楽しかったー!」

「活動2周年の区切りに素晴らしいライブができて、感無量だったな。叫びたくなる気持ちは私も分かるよ。」

「えっほんと~?ユナもちょっとさけんでみてよ~~」

「叫ばないよ。気持ちは分かるけど。私は別に叫びはしない。」

「あ~んいつもどおりの塩対応~~~!!!さ~け~ん~で~よ~!」

「あっははっはwいつもの“ユナめるてぇてぇ”が聞けたところでー、それではね、ライブのダイジェスト映像を流しながらー振り返りをしていきましょー……早速1曲目の『Founder』がね、流れましたね」

「これ、曲の入りが恰好良かったよな。これ、ここの…暗転からの…」

「わかる~~!この…どぅ~~~ん!!」「どぅーーーん!!」「ドゥーン!」

「そんでアスカとリノのかっこよポーズからの歌い出し『あぁ…僕らはいつも探してるんだ…』きちゃ~~~!!!」

「ここすっごく緊張してたのー!うまく歌えてよかったよー!」

「アスカとリノのハモりが耳に気持ちいいな。」

「わかる~~!!」


「衣装もですねー、今回のために新衣装!用意していただきましてー、アスカは赤を基調にしてますー!」

「1人1人のイメージカラーで作ってもらったんだよな。私は紺色。リノは緑だな。」

「めるとはね~~シャイニーな黄色~~!」

「シャイニー?」

「おひさまパワ~~!みたいな~~~!!」

「つまり、宇宙の力だな。」

「え~~ちがくて~~、もっとこう…ぽかぽかの~~」

「分かるよ。恒星の発するエネルギーは膨大だからな。」

「ちがう~~!…あれちがわない?ちがう?」

「あっははっはw」


………………………………………………………………


…………………………………………………


……………………………………


………………………


……………


……



大きな盛り上がりを見せた1時間30分の配信が終了した。配信メンバー同士就寝の挨拶をして、会話アプリのルームを退席した。

配信用チェアに深く腰掛けて小さく息を吐くと、頭から指先までを満たしていた配信の高揚感が薄れ、意識が急速に現実に向くのを感じた。

ストリーム配信用の防音室の中では室外の音は遮断され、ただ換気用のファンの音とパソコンの駆動音だけが空間を満たしている。

時間は23時。

ユナ・ギャラクティカこと高野由那は、配信を終了したパソコンのディスプレイを何をするでもなく見つめていた。左手を椅子のひじ掛け、右手をマウスに乗せ、配信用チェアにだらしなくもたれかかっている。

先ほどまで配信していた動画サイトのチャット欄では、配信を視聴していたファン達が興奮覚めやらず、思い思いの感想を語っている様子が流れている。

恐らく、SNS上でも多くの感想が呟かれているだろう。自分たちの活動グループ名『アトルティア』や活動名義の「ユナ・ギャラクティカ」で検索をすれば、自分達に向けた熱意に溢れた呟きを目にすることができるだろう。

大勢の人に観てもらえている。大勢の人の意識に自分達の存在が届いている。それはとても喜ばしいことで、決して苦労が少ないわけではないバーチャルアイドル活動の原動力になっているのは確かだった。

バーチャルアイドルユニット『アトルティア』。音楽活動だけでなく、様々な企画配信やゲーム配信などを精力的に行い、メンバー同士の交流を盛んに発信することで人気を獲得し、今では日本でもトッププラスのファン数を誇るまでになったインターネット上のアイドルグループ。

若年層を中心に人気を博し、少しでもインターネットに触れる人であれば名前を聞いたことがない人はいないとさえ言われるまでになった。

メンバーが揃って配信をすれば十数万人の人が配信を視聴し、チャット欄は応援の声で溢れ返る。

まさにバーチャルアイドル文化の中心となっているのが、彼女達4人であった。


しかし、この数日、ユナの気持ちは前に向けられずにいた。

「リノ、今日も来なかったな…」配信用チェアのヘッドレストに頭を預けながら、ユナはひとり呟いた。

会話アプリの「リノ」のアイコンにマウスカーソルを合わせると、“5日前”のポップアップが表示される。

リノーリア・ココシュニク。バーチャルアイドルユニット『アトルティア』の4人目のメンバー。

2周年記念ライブの翌日から、彼女はオンライン上の活動が確認されず、メンバーからのメッセージにも一切の反応を返さずにいた。

「マネちゃんは、少し時間が必要なだけだから心配するなって言ってたけどさ…」

リノは会社との連絡は取っているということだ。少なくとも健康的に危険な状況にあるわけではないのだろう。

ならばなぜ。

どうして自分達に何の返事もしてくれないのだろう。

心配をすればいいのか、憤ればいいのか、それとも気にせずにただ待てばいいのか。

ユナはそれすらも分からず、ただ不安だけが募っていた。

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