疲れの原因
「くっそーーー!」
コントローラを放り出した俺に天空は勝ち誇る。
「ウッヒャッ。美典って雑魚雑魚よねー!」
笑顔を見せる天空、実に小憎らしい。
「約束通り言う事を聞いてもらうよ?」
俺の言いたかったセリフをあっさりと奪われた。
もう二度とこのゲームでは勝負しないからな。
「で、何をすればいい?」
「へっへー。大したことじゃないんだけどね」
天空はグイとにじり寄り、
「宿題手伝ってよ」
両手を合わせて俺を拝む。
「なんだよ。そんなの自分でやれよ」
「だって忙しいんだよ。勉強や家事の他に夕飯を一軒分多く準備しなきゃいけないしさ」
天空は一軒分多くの所を強調する。
「うーん……」
俺と姉の小夜子は料理センスが皆無である。
意を決して台所に立ってもメシマズどこか「滅シマス」、食べた者にダメージを与え命をも奪いかねないシロモノが出来上がる。
なので自営業で共働きの両親に代わり、ウチの夕食の支度はすべて天空に任せている状況なのだった。
「……仕方ないなぁ」
「やった。サンキュー!」
「でも、こんな事してたら学力つかないぞ? テストで痛い目を見るのは自分だからな?」
「わかってるって。今回だけだよ。なんだか最近疲れ気味でさ。一人で勉強してるといつの間にか寝ちゃってるんだ」
「疲れか?」
それについては俺に心当たりがある。
「だったら、しばらくの間ああいう事は控えて……」
次の瞬間、俺は床に押し倒されていた。