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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹と看病と下心

 幸い今日は何もスキルを与えられていない、平和な日が久しぶりにやってきた!


 ヒャッッホウ!! 今日は一日だらだら過ごすぞ!


 最近面倒な事が起こりすぎなんだよなあ……ドラゴンだのなんだのは俺の手には余るにもほどがある。


 ベッドの中で寒さから逃げながらゆっくりしているとミントの声がした。


「お兄ちゃん? そろそろ起きてくださいよ! 私も布団に潜り込んじゃいますよ?」


 部屋の外からその声がかかったので俺も渋々起きて顔を洗う。


「ぷはっ……ああ寒い」


 この寒いのに俺だけではスキルも使えずお湯が出せないというポンコツぶりだ、世の中はままならないものだ。


 パジャマから着替えていつも通りキッチンに行く、目玉焼きとトーストができていた。


「コーヒー淹れるよ」


 そう言って俺は豆を挽く、コーヒーの香りが漂ってきた。


「お兄ちゃん、私はお湯を沸かしますね」


 そう言って炎魔法でお湯を沸かすミント、最近では日用品のような扱いで魔法を付与しっぱなしにしている。


 そうして沸いたお湯をドリッパーに注ぐ、フワッと香ばしい香りが広がった。


 いい香りだと思ったらミントが奇妙な顔をした。


「どうかしたか?」


「いえ、いつものお兄ちゃんとちょっと違うなと」


「え?」


「いつもお兄ちゃんってゆっくりドリップするじゃないですか、なんか今日は雑というか……ちょっといいですか?」


 ミントが突然俺の顔の前に顔を突き出したかと思うとおでこをコツンと当てた。


「な!?」


 俺が突然の事に驚いているとミントは真剣な顔になった。


「お兄ちゃん、気づいてないんですか? 今日は大分熱がありますよ? 多分風邪ですね。ここは私がどうにかしますからお兄ちゃんは寝ててください!」


 そう言って引っ張られながら自室に戻された。


「別に俺は体調は変わんないぞ……?」


 やれやれとミントが肩をすくめる。


「自覚が無いって困りますねえ……お兄ちゃん、今日はコーヒーさえまともに淹れられないんですよ? 数少ない得意分野なのに、だから今日は一日ゆっくり休んでください!」


「平気だって……」


 ぐわんと視界が歪む、バタンと上半身がベッドに倒れた。


「ほら、いわんこっちゃんない……お兄ちゃん最近頑張ってましたからね、疲れが出たんでしょう。いいですか? 今日は外・出・禁・止です!」


 そう言って強引に俺を寝かしつけて看病をしますと息巻いて出て行った。


 風邪かあ……気にした事もなかったな……


 今まで妹の事で全力だったのし、少し余裕が出たから油断してしまったのだろうか?


 しかし……病人というのはかくも暇なものなんだな……


 窓の外を流れる景色を見るくらいしか出来る事がない。無力感がすごい。


 普段は妹に頼られっきりの兄が妹に全部頼るとなると少し不安がある。


 何とか体を起こし部屋を出ようとしたところでミントがドアを開けた。


「お兄ちゃん! 安静にって言ったでしょう! おとなしく寝ててください!」


 そう言って俺を寝かせて、隣に薬草を煎じた風邪薬を置いていった。


 しょうがない、寝るか……


 そうして横になったのだが……どうにも寝付けない、風邪のせいではなく多分今朝までたっぷり寝ていたからだろう。


 部屋の窓から表を眺めているが、これといって面白いものではない。


 退屈に飽かせていると、ようやく眠気が身体に入り込んできた。


「ふぁ……」


 意識が徐々にブラックアウトしていった。


 しばし後


「んん……よく寝た」


 そうして目が覚めるとミントが俺の身体にもたれかかるように寝ていた、テーブルには桶に入ったタオルが目に付く。


 そうか……看病、してくれたんだな……俺はなんだかミントのことが愛しく思えた。


「ふぇ……お兄ちゃん?」


 俺がミントの頭をなでていると起きたのか、寝ぼけた声がした。


「お兄ちゃん? もう平気ですか?」


「ああ、おかげさまでな」


 ベッドから起きて伸びをする、爽やかな気分だった。


「よかったです……ふぁあ……」


 安心したのかミントは俺のベッドに身体を投げ出して寝てしまった、そこで俺は窓の外がくらくなっていることに気が付く。


 一日か……丸々一日中妹に世話になったことを理解して少し申し訳ない気もする。


 俺はミントを起こすのも申し訳なく思うのでベッドの上にちゃんと寝かせて布団をかけてやった。その日の俺が寝る場所はリビングのソファの上になった。


「ありがとな……」


 そう言って部屋を出てから用意してあった一杯のスープを飲んで横になった。


 ――翌日


「お兄ちゃん! 私、お兄ちゃんの部屋で寝てたんですけど!? もしかして何かありましたか!? 記憶がないのが悔しい!」


「なにも無いよ、ただ起こす気にならなかったからそのまま寝かせただけだ、俺はそこで寝たしなにも無かった」


 そう言ってソファを指さす、妹の「ちっ」という舌打ちが聞こえたような気もするが、この際聞かなかったことにしよう、世話になったのは違いないんだからな。


「お兄ちゃん? 一つ言っておきたいことがあります!」


 そう言って胸を張るミント。


「無理そうなら弱音は早めに吐いちゃってくださいね? 私も本当に無理なときは無理強いはしませんから。そのくらいはできる関係ですよね、私たちは」


 そう言ってドンと俺にすごむものだから俺も少しは妹に対して主張できる兄になっていこうと思った。


「まあ私とお兄ちゃんが揃えば無敵には違いないんですがね?」


 自信満々にそう言う妹に対し、突っ込む気にはなれなかった。


 ――時間は少しさかのぼる


 ふぉおおおおおお!!!!!!!! お兄ちゃんのお布団で寝てますよ! この包容力! 良い気分です!!!


 お兄ちゃんの前で寝たふりをしたかいがありました! ちょっと優しくして欲しいなー位のつもりだったんですが……思った以上の収穫です!!!!!!


 お兄ちゃんの寝ていたベッドの中で深呼吸をしながら私は眠りにつきました。


 ――


「ありがとな、眠いの我慢して看病してくれたんだろう?」


 ミントは体調が悪いのか頬に汗を伝わせながら答えた。


「ま、まあそうですね! お兄ちゃんは渡しに菓子が一つ増えたってことにしておますよ、いずれ、返してもらいますからね?」


 そう言って視線を送ってくるミントの目には、何故か少しの困惑の色が混じっていた。

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