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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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86/129

妹は未来を信じているようです

 ――

 スキル「タイムフリーズ」を付与できるようになりました

 当該スキルは暫定的なスキルとなります

 ――


 まーた来ましたねえ……世界のバランスを完全に無視した無茶なスキル。


 しかも何? 時間が止まるの? ヤバくね?


 ――

 当スキルは一定範囲の物質の動作を止めるスキルです

 対象範囲は該当惑星の直径の三倍になります

 ――


 惑星?


 ――

 平たく言えばあなたの住んでいる世界全ての数倍の距離です

 ――


 今日はサービスいいですねえ……できればもっと穏健なスキルを付与したいものだが……ヒールは実用的だし、炎魔法や冷却魔法も使い道があるのに、こんなスキル使う場面が思いつかない。


 …………

 残念ながらそれに対する天の声からの釈明は無かった、酷い投げっぱなしだ……


「お兄ちゃん! 朝ですよー!!!」


「はいはい、今行くよー」


 そう言って俺はキッチンに向かっていった、結局そのスキルの使い道は不明なままだった。


 そうしてスタスタとキッチンに向けて歩きながらスキルの使い道を考えてみる。


 盗み……覗き……傷害……うん、ロクな使い道ねーな!


 我ながら発想の貧困さに悲しくなりながらキッチンに着いた。


「お兄ちゃん? まーたなんかスキルもらったんですか?」


「ん? ああ、やっぱ分かるか?」


 もうコイツに隠すのは無理では無いかと思って正直に言う。


「いえ、ただ単に定期的に訊くようにしているだけですが?」


 マジかよ……引っかかった……


 自分の単純さに悲しくなりながら話をする。


 さすがにスキルの詳細を伝えるとロクな使い道を思いつかないのには定評のあるミントである、全く安心できない。


「ま、いいですよ! どうせおあつら向きの依頼が用意されてるでしょうし、ギルド行っときますか!」


 とまあ一杯のジュースを頼むがごとく気軽のヤバイ依頼を受ける気満々なミントだった。


 ――ギルドにて


「お二人ともいらっしゃいませ、ですがお二人に見合いそうな依頼は来てませんね……いえ、本来の推奨ランクの依頼は来ていますが」


 珍しいな、基本ランクの依頼しか無いのか、どうやら今回は厄介ごとではないらしい。


「むー……」


 ミントがむくれているが俺は構わず薬草採集の依頼を受ける。


「ああ、そうそう」


 セシリーさんが何かを言おうとする、注意かな?


「今回の依頼ですが貢献ポイント高いですよ? 何せ依頼者が薬草はいくらあっても足りないって言ってますからね」


 ん? なにかがやっぱりあるんだろうか?


「怪我人がそんなに出たんですか?」


「いえ、貴族の方が娘さんの治療に使うそうです、お金の払いもそれなりにいい方ですし信頼して良いかと」


「そんな怪我をしたんですか? 貴族なのに?」


 貴族は前線に出るような事はあまりないはずだが……


「いえ、病気ですね。こう言ってはなんですが……その……延命治療をしていまして……そのために薬草が大量に必要だそうです」


 ふむ、確かに病気にも薬草は効くが……


 残念ながら妹以外への治癒魔法が使えない以上俺たちにできるのは薬草を集めるだけだ。


「お兄ちゃん……なんか使えそうなスキルつけられないんですか?」


 こそこそと俺に訊くミントだが……


「そんな都合のいい方法があるわけないだろ……」


 身も蓋もない話だがそんなに都合がよく世の中はできていない、妹ならいくらでも治療も強化もできるが俺のスキルはほとんど全て妹全振りのスキルだ。


 ――そうして俺たちは薬草の自生地へと向かったのだった


「お兄ちゃん、あればあるほどいいそうですね? もう大分刈り込んでますよ」


 おっとそんな量だったか。


「薬草も根絶やしにするのはマズいしこの辺でやめとこうか」


「ですね、そろそろ終わりにしましょうか、ところで何のスキルを習得したんですか?」


「え? 時間停止だけど」


 おっと不意打ちで訊かれたのでつい事実を答えてしまった……まあこんな使いどころが微妙なスキルなんて……


「お兄ちゃん? ちょっとそれ付与して貰えますか?」


「えー……ロクな使い方しないだろう?」


「いえ、ちょっと試してみたい事がありまして」


「しょうがないな……」


 ――

 妹に「タイムフリーズ」を付与しました

 ――


「ふむ……ほうほう……」


 何やら足下の草にスキルを使っている、一体何の役に立つのかさっぱり分からないが、ミントなりの考えがあるのだろう……


 ミントのフリーダムな思想から何か思いついたのだろうか?


 …………


「うわっ!」


 突然目の前にミントの顔が出現してビックリした、一体何があったんだ!?


「ふむ……スキルで時間停止していると本人は気づかない……と」


「早速スキルを自由に使ってんなあオイ!? 自重って知ってる?」


 時間停止した中を動いたのだろう、ミントは平気な顔をしているが俺は突然止められたのでたまったものではない。


「ところでお兄ちゃん? 私に何かされたと気が付きましたか?」


「何かやったのかよ!?」


「いえ、してませんが……いけますね……」


「え?」


「お兄ちゃん、依頼主の家はどこか知っていますか?」


「ああ、新興貴族の一人だけど……」


「よし、そこに行きましょう! 見事に解決……とはいきませんが、気休め程度にはなるでしょう」


 そう言ってさっさと歩いて行くミント、一体何を考えているのだろう?


「気づいてないみたいですけどね? お兄ちゃんを止めているあいだまわりはちゃんと動いてたんですよ?」


「?」


 何を言っているのだろう? 俺の時間を止めた?


 ――そうして俺たちは依頼品の納品は早い方がいいという事もあって貴族の家に直接行ってきた


「ああ……冒険者かね? 薬草は持っていないようだが……」


 やつれた顔でおっさんが出てきた、いや貴族様なんですけどね。


「はい、薬草はここに」


 どっさりとストレージから出てくる薬草の山、貴族様も少し驚いたようだ。


 おっさんも少し安心した顔になった。


「助かるよ、家人を取りに行かせたかったのだが、なにぶん娘の看病につきっきりでね、人材が足りないんだ」


 そう言って薬草を運ばせるがミントはスッと目を細めて言った。


「ところで娘さんを助けたくはないですか?」


「おい、失礼だぞ!」


「それは構わん! 助ける方法があるのか?」


 迫真の問いに思わずびくついてしまう、娘を思う心は確かなようだ。


「助ける事はできません、今は、ですが」


「今は? 娘には時間が無いんだ! 金なら出すからなんとかしてくれ!」


 もはや懇願といっても良さそうな必死さでミントに頼み事をしている。


「要するに、時間を与える事が出来るという事ですよ、『今』が続くかぎり娘さんに危険はないですからね」


「今……だって?」


「まあ娘さんのところに行きましょうか、案内してください」


「ああ、分かった」


「ご主人様! このような下層民を招き入れるなど……」


 薬草を運ぼうとしていた使用人さんが地味に失礼な事を言う。


「構わん! 娘が助かるなら私は誰だって頼る!」


 装置から強く宣言して娘さんのところへ案内された。


 その部屋には余り血色のよくない、色白な、青白いと言ってもいい顔の娘さんがベッドに寝ていた。


「父様……? もう私はダメです、無理をなさらないでください」


 ゲホゲホと咳き込みながら言うが父親としての矜持なのかその言葉を無視して俺たちに頼む。


「お願いだ、娘を助けてくれ」


「あなた、負担をかけたくないのよね?」


 ミントが娘さんにきく。


「そうですね……今の私は資産と感情と時間を食い潰すだけですからね」


 辛そうに言う娘さんだがミントはその後に続けて言った。


「では『何も消費しないなら』生きてく気になりますか?」


「そんな奇跡が起こせるのなら生きるのは素晴らしいのでしょうね……」


 そう言って咳き込むがミントはそれを聞いて時間停止のスキルを発動させた。


「タイムフリーズ」


 そうつぶやくと「娘さんの」時が止まった。


「え!? 時間停止って個別にきくのか?」


「言ったでしょう? お兄ちゃん以外の時は普通に流れていたと」


 ああ、どうやら時間という有限の資産を薄く、限りなく薄くのばして広げる事ができるのか……


「何が起きたんだ? 娘は……?」


「娘さんの時は私が止めました、戻して進める事もできますが、この状態なら治療も対応もせずとも『死には』しません」


「なんと……」


 ミントはクルリと振り返って言う。


「さて、後は時間が解決するしかないですね」


「時間が……?」


「ええ、娘さんの時間は止まっているので後は王宮の医学者達がかかっている病気の治療法を見つけるのを待つだけです、まあ現在のところ治療法がないですが、あくまで『今の』ところですから」


「つまり娘の治療法が見つかるまで延命できると……?」


「そうです、ついでに言うならあなたがするべき事もほとんどありません、この家を保つくらいでしょう。時間が止まっているので生理現象も一切起きませんし、食事も不要です」


 感心したように貴族様も頷く。


「ありがとう……私が見る事ができるかは分からないが、いつか娘が笑顔で起きてくれると思うと救われたよ」


「そうですか……」


「ああ、報奨金を用意しよう! 多めに出すから是非もらっていただきたい!」


 ミントは指を突き出してちっちと振る。


「その報奨金は『王立医学研究所』にでも寄付しておいてください。娘さんが助かるところ、見たいでしょう?」


 そうして俺たちは感謝のみを受け取り帰途についた。後日、ギルドの依頼は依頼者負担で取り消すので違約金のみ俺たちがもらう事になった。


 帰宅しながらミントにきく。


「よかったのか? 結構な量の礼金だったと思うぞ?」


 ミントは分かってないなあと首を振る。


「いいですかお兄ちゃん? 私はお兄ちゃんの価値観をそれなりに大事にしているだけです。あの貴族さんにもそれが感じられたのですよ?」


「価値観?」


「そうです、お兄ちゃんが私にたっぷり注いでくれるものです」


「なんかあったっけ?」


 ミントは得意げにそれを告げるのだった。


「そう! 『家族愛』があそこには確かにあったのですよ!」


 そう言って気持ちのいい鼻歌を歌いながら俺の少し前を軽い足取りで進んでいくのだった。

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