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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹と労働環境

 ピコーン

 ――

 スキル「精神干渉」を付与できるようになりました

 ――


 うへぇ……余りもヤバすぎるスキルだな。常識というものは無いのだろうか?


 まあそんな天の意思に訊いたところでどうしようもなさそうなので、諦めて朝食に向かう。夢心地半分で起きがけにとんでもないスキルをぶっ込んできたので余りにも現実感がない。


「おはよ」


「おはようございます! お兄ちゃん? どうかしましたか?」


 おっと、気取られないように気をつけないとな……


「いや、ちょっと眠くてな……ふぁ……」


 俺は大げさにあくびをしてごまかす。


「まったくもう、お兄ちゃん、顔でも洗ってきてください、スッキリしますよ?」


「わるいな……」


 俺は席を立って洗面所に向かう。さっきのアレが夢だったのか実際に付与可能だったのか、よく分からないところだ。


 ――

 「精神干渉」を付与可能です

 ――


 ご丁寧に余計なことをしっかりと通知してくれるのを恨めしく思いながら顔に水をバシャリと叩きつけて眠気を吹き飛ばす。


「ふぅ……」


 眠気も覚めたし今日も薬草採集で日銭を稼ぐとするかな。


 キッチンに向かうとミントが頬を膨らませながら文句を言ってきた。


「お兄ちゃん! もうちょっとしっかりしてくださいよ! 今日は大物を討伐する予定なんですよ?」


「えー……普通に薬草取っていこうぜ、というかFランクに大物を狩れるような依頼は回してくれないだろう」


 今更の話だが基本的にランクの上下二段階までしか依頼難易度の違う依頼は受けられない、ギルド的にも無駄死にや高ランク者の低ランク総取りを防ぐためのシステムだ。


「でも私たち結構強い敵と戦ってきたじゃないですか? 信頼ってものがそこらのFランクとは違うと思うんですけどねえ……」


 その通りなので全く困った物だ、とはいえ俺は平和に生きたいので面倒な戦闘は避けることにしたい。


「まあギルドに行ってみようか? どうせそんなに大仰な依頼がそうそう張り出されているわけ無いし」


「お兄ちゃん……それは振りですか?」


「違うよ!」


 とまあそんなことを言い合いながらギルドへ向かうと……


「お待ちしておりました! お二人に指名依頼が入っています!」


 と頭の痛くなるような都合のいい依頼が入ってきていた。


 俺は頭が痛くなりつつも質問する。


「俺たちに指名ですか? Fランクなのは知ってるんですか?」


「もちろんです……その事は何度も説明したんですがねえ……どうにも領主様お付きの依頼となるので断りづらく……」


 ああもう……そんなこと言われたら断りづらいじゃないか……


「お兄ちゃん、私の知ってるお兄ちゃんは困ってる人を見捨てませんよね?」


 はぁ……


「分かったよ! 分かりました! 受けます! その依頼受けます!」


 もうヤケクソになってそう宣言した、受付のセシリーさんも笑顔になり俺たちにお礼を言ってくれた。


「で、その依頼ってなんなんですか?」


 とりあえず受けてしまったがとんでもない依頼の可能性もある。


「実は……領主様の部下の騎士達の士気が下がって目をつけられているそうなのです。そういうことなのでFランクでも頑張っているところを見せて部下を鼓舞させていと……」


 なるほど、「お前らFランクに負けて悔しくないのか」と煽りたいわけだな、しかし……俺は現在もっと手っ取り早い方法を持っている、それを使うべき場面だろう。


「分かりました、手っ取り早く士気を上げる方法があるのでそれでいいですか?」


「え? ええ……多分問題無いと思いますが……」


「お兄ちゃん、その様子だと……?」


「ああお手軽な方法があるぞ」


 余り気の進むやり方ではないのだが、この際しょうがないだろう。


 おそらくセシリーさんだけではなくギルマスまで圧力がかかっているだろう。ここで断ると余りにも影響が多い。


 ――

 妹に対し「精神干渉」を付与しました

 ――


「えぇ……お兄ちゃんえげつないですね……」


「ギルドの信用問題だからな、薬草採集の依頼主がいなくなるとそれはそれで困る」


 ミントは少し考えてから頷いて引き受ける意思を示した。


「ありがとうございます! では当ギルドから領主様のお住まいへ馬車を用意しますね!」


 ニッコニコでそんな対応をされるのだった、ドラゴン倒した時でも「マジかコイツ……」みたいな対応だったことを考えると破格の処遇だった。


 ――そうして俺たちは即手配された馬車に乗ってそれなりの距離のある領主様のお屋敷までの道のりを移動している。


「お兄ちゃん……珍しくやばめのスキルなのにあっさり付けてくれましたね? 私に惚れましたか?」


「ちがう、俺もお前も人心を操るなんてがらじゃないだろう? だったら一番効率の良いやり方なんだよ。それとも何か? 私兵団の前でダンスでも披露して慰労するか? どうせロクに現場なんてみてないんだし問題ないだろ」


「お兄ちゃんにしては辛辣ですね……?」


「どうせここの領地はほぼ不可侵状態だろう? 必要の無い私兵団にそんな面倒なことはしたくないんだよ」


「いいんですかねえ……」


「何か自信がおありのようですね?」


 馬車の御者に聞かれていたことに気づいて口をつぐむ俺たち。


「まあ、ギルドの面々の詮索はするなと言われておりますしどんな策があるのかは存じませんがよろしくお願いしますよ」


 そう言って馬車は少し速度を上げて走っていくのだった。


 ――ここが領主様のお屋敷ですか……税金をピンハネして建てた家に住んでると思うとムカつきますね……


「ミント、口を慎め、今は俺くらいしか聞いてないから問題無いけど……」


「私は何も言ってませんよ? 何か聞こえましたか、そうですか」


「まさかお前……今のはスキル……」


「さあ? どうなんでしょうね?」


 そう言ってクスリと笑って正面を向いた。


 ギィと高級そうなオーク材のドアが開かれる。


 いかにも偉いですといった風貌の人物が現れた。


「ほう……君たちが噂の冒険者兄妹か? 期待はしているぞ」


「はい、精一杯やらせていただきます」


「分かりました! 兵士達の士気をガンガン上げますよ!」


「うむ、頼んだぞ」


 そう言って奥に引っ込んでいく領主様、ほとんど丸投げという雑さである。


 ――そして俺たちは兵士達の宿舎に行った


 そこで聞いた領主の評価は散々なものだった。やれ人使いが荒いだの、給金も安いのに命なんてはれないだの、実は裏で侵略の計画を立てているだの酷い噂をたくさん聞くハメになった。


 そしてミントは全員の意識改革を行うといって全員を引っ張り出した。


 そして演説台に立って何を言うかと思ったら……


「私は皆さんの労働環境改善をして見せましょう! お約束をします!」


「おぉ……」


 兵士達も困惑している、そりゃあそうだろう慰労会かと思ったら突然労働環境を変えると宣言されたのだ。


「ご安心を! 私は必ずやって見せましょうとも!」


 兵士達も領主様直々の使いが宣言しているということで多少信じる人……いや、信じたいと思う人たちも増えてきた。


「休暇を! 給与を! 怪我人には保障を! 退役したらポストもつけましょう!」


「おおー!!!!!!!」


 皆さん大変やる気を出してくれたようだが、この独断は不味いんじゃないかと思って止めようとすると……


『今はこのままにしておいてください』と精神干渉が飛んできたので何か考えくらいはあるのだろう。


 そうして少しの演説をした後、精神干渉スキルを大幅な魔力で発動した。


 それに対して兵士達は……余り変わった気がしなかった。いいのだろうか?


 無論労働環境の改善には感激をしているようだが、それ以上にやる気が湧いているようには見えなかった。


「さてお兄ちゃん、私たちのお仕事はここまでですね。帰りましょう!」


 そう言って屋敷を後にしたのだが……何故コイツはこんな自信に満ちあふれているのだろうか? 端的に言って口約束をかわして一時的に士気は高まったが……


「お帰りですか? お早いですな! 兵士達の声が聞こえた時は珍しくやる気を出していると思ったものですが……さすがドラゴンさえ狩る兄妹ですな」


 そう言う御者に馬車を出してもらい俺たちは町へ帰還した。


 ――翌日ギルドにて


「お二人ともすごいですね! まさかあれほど強権的だった領主様が満足できるとは思いませんでした! ありがとうございます!」


 そう言って報酬を頂いてミントが訊く。


「で、貢献ポイントはどのくらいですか?」


「え? 領主様が軍備の大幅縮小をするのであなたたちに用はなかったと聞いていますが?」


「え?」


 俺も思わず声を上げる。


 ミントの脇をつつきながら耳にささやく。


「お前……領主にスキル使ったな……?」


 ミントの返事はサムズアップだった。


 そうして俺たちはそれなりの違約金をもらって帰宅するのだった。


 ――

 スキル「精神干渉」を無効化しました

 ――


「えー……お兄ちゃん、このスキル便利なので恒常枠にして欲しいんですけど?」


「こんなヤバイスキルを欲しいだけ与えたらヤバいだろうが!」


「はあ……」


 やれやれと肩をすくめるミントだったが、俺も今回の依頼で特に損をした人がいないので、珍しくまともなスキルの使い方だと思うのだった。

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